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その4 苔でポックリ、光り輝け光り苔


 草原を進むと程なくして洞窟の入り口に到着。


 ここまでの行程は、タンポポが草を毟って食べたくらいで特に騒動はなかった。


 食べていい草かどうかはわからない、その辺はタンポポの方がエキスパートなのだ。

 タンポポは何回も〝のっぱらモーモー〟の中に入っているので、草くらい食べられるのかも知れないしね。


 さてここからは洞窟である。

 入り口こそ真っ暗だが十メートル先にはもう『ボウっ』と緑色の光が見えている。


 洞窟に入り進んでいると、すぐに洞窟内全体が緑色に発光している幻想的な世界になった。

 相変わらずここの光る苔のシーンは綺麗だ。


 タンポポはさておき、前を歩くカレンの姿が緑の光を浴びてとても美しい。


 まあ、タンポポだってもしかしたらこの光で綺麗に……と振り向くと、苔を毟って食べようとしているので慌ててその手を押さえた。


 草原の草ならともかく、こんな光る怪しげな苔はさすがに不安になるわ。


「この苔……食べて……いいもの?」


 タンポポの手を押さえながら、とりあえずカレンに聞いてみる。


「食べちゃダメだよー、全身が光って即ポックリだから」


 パン!


 タンポポの手から苔を叩き落すと、タンポポは新しい苔を毟ってボクの顔に近づけてきた。


「ボクを暗殺しようったってそうはいきませんよ!」


 タンポポの手を押さえようとするがそれよりも早くボクの頭に苔をさし。


「みのりんが光ってるー」


 と言ってキャッキャと笑い出す始末。

 誰かなんとかしてくださいよ、この酔っ払いのオバケ。


「それ私もやりたい!」


 カレンも参戦して苔を毟ると、ボクの反対側の頭を飾る。ボクの頭は両サイドが緑色に輝いている。


 いや自分にやってください。

 タンポポが新たに苔を毟ると今度はカレンの方に行く。


「私にも飾ってくれるの? タンポポちゃんありがとう」


 タンポポのやつ今度こそカレンを暗殺する気ですね! そうはいきませんよ!


 慌てて取り押さえようとすると意外にもカレンの髪に苔をさした、そして。


「お友らちになってくらさい」


 とペコリお辞儀をする。


 おおー! かなり感動してしまった、やっぱりタンポポはカレンと友達になりたかったんだね。


 タンポポがちゃんとカレンを友達として認識してくれれば、ボクも安心できるし、この二人は案外気が合いそうなのだ。

 まるで成長した娘を見るような気持ちで目頭を熱くするボク。


「私たちとっくに友達だよ?」

「じゃあこれを食べれ~」


 タンポポは苔をカレンに食べさせようとしてそれがボクに阻止されると、今度は口をチューの形にしてカレンに迫りだした。


 こいつはただの酔っ払いだった!


 この酔っ払い、いるよオジサンでこういう人! キス魔になったり、行動がわけなかんなかったり。


「ちょっタンポポちゃん、どうしたの!?」


 カレンがちょっと慌てて離れると、小さい突起に躓いて頭から岩と岩の間にスッポリと挟まってしまった。


「あー! 抜けない! 抜けないよ!」


 じたばた暴れるカレンのお尻、そうである、下半身だけが岩の隙間から出ている状態なのだ。

 お辞儀をしている状態のカレンは一生懸命抜けようと頑張っているが、ミニスカートなので目のやり場に困る。


 何とか助けたいけど、どこを触っていいのものやら、とんとボクには見当もつかないのだ。というかカレンに触ってボクがダメージを受けない所がどこにもない。

 タンポポがカレンの真後ろに行くのを見て、カレンを引っ張るタンポポを、ボクが引っ張る作戦にした。


 頼みましたよタンポポ、と彼女を見ると、両手を合わせて人差し指を突き出して力を込め始めているではないか!


 まてまてー。


「それは女の子が女の子にしていい行為ではありませんから!」


「私オッサンらよ?」

「オッサンなら尚更アカンわ!」


 こんな所で二人で漫才やってる場合じゃないと、タンポポの手を掴んでうーうーやっていると。


『ベロオオオオオ!』


 と、カレンのお尻を舐めた。


「あひゃっ! ダメ! お尻舐めるのダメ!」


『ベロオオオオオ!』

「あきゃああああ」


 もう一発だ。


『ペロペロペロペロペロペロペロペロ』


 だが待って欲しい、タンポポは現在ボクと両腕の掴み合いで互いに『うーうー』唸っている状態だ。

 という事は……隣でペロペロしている犯人を見る。


 この洞窟のモンスター〝とんねるケロケロ〟がいた。


『ケロケロ』


「だからその大きな図体で鳴き声が可愛く『ケロケロ』はおかしい、と言っているんですよ。可愛く思われたいのならもう少し大きさに気を使ってですね」


 パニックになって説教を始めたボクをよそに、でっかい熊くらいあるモンスターガエルはカレンの足からお尻に向けて『ベロオオオオオ!』とやりだした。


「ひいぃん。み、みのりんたちはもう逃げて!」


 カレンのその声で我に返ったボクがカエルに体当たりをしようとすると、今度はボクに『ベロオオオオオ!』である。

 もはやお手上げなのである。


 戦力になる、というか唯一の戦力であるカレンを助けるしかないと、覚悟を決めて彼女の腰に腕を回し必死に引っ張った。

 その間、ボクは後ろから『ベロオオオオオ!』を三回やられて腰が砕けそうになる。


 正面のカレンと後ろのカエルの挟撃で、ボクのヒットポイントはみるみる削られていくのがわかる、大ピンチじゃないか。


 するとタンポポがカエルの前に立った。


「お友らちになってくらさい」


 カエルにペコリと頭をさげている。


 そして今度は。


「これを食べれ~」


 と言いながらカエルの口に苔を突っ込んだ。


 突っ込まれたカエルが光ってそのまま即ポックリするのを、何とか岩から引っ張り出したカレンと二人で眺めていた。


 な、なんて恐ろしい……


 酔っ払いの謎行動はモンスターをも倒すのだ。


 次回 「カレンがまた歌ってくれた」


 みのりん、またもや膝枕の刑に処せられる

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