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その7 丘の上に現れた勇者


 丘になった草原の上に現れた一人の勇者。


 ボクの目の前には颯爽と出現した伝説が存在している。


 逆光を浴びてそびえ立つその人影は、セーラー服を着ていた。


「タンポポ……」


 そう、そこはタンポポが飛ばされていった方角なのだ。


 モンスターたちも彼女に気がついたようで、タンポポの方を向いた。

 セーラー服の少女は凛々しい顔でモンスターを見すえている。タンポポのこんな表情初めて見た。


 やがてその制服の右腕が高々と上げられ、真っ直ぐに振り下ろされた。



 その瞬間である――



 丘の向こうから十数体のモンスターが突撃してきたのだ!

 怒涛の如く現れたそれは精鋭の特殊部隊!


「モオオオオオオオ!」


 タンポポ牧場の〝のっぱらモーモー〟の部隊が乱入してきたのだ!


 トロールたちも対応しようと、こん棒を振り上げて迎撃態勢の構えを取る。

 先頭を切ってグリーンベレーモーモーが手前のモンスターに突撃する! トロールのこん棒が間に合わない!


 トロールはなんとか踏ん張ってその体当たりを耐えたが、続いてネイビーシールズモーモー、KSKモーモー、カラビニエリモーモーと立て続けに突進され引き倒されると、後続のコマンド部隊に蹂躙されてペチャンコになってしまった。


 残るはもう一体だ!


 残ったトロールもSASモーモー&特殊作戦群モーモーと格闘していたが、デルタフォースモーモーとスペツナズモーモーに背後から突進を食らって倒され蹂躙されてペチャンコになった。


 戦闘終了! 圧勝である。


 トロールが全く手も足も出ないまま、あっという間に倒されてしまったのだ。


 熟練冒険者も危なくて手を出さない、特殊部隊モーモーの戦闘力の凄まじさは目を見張るものがあった。

 これじゃ、こいつらに手を出すやつはアホとしか言いようがない。


 戦闘後ボクの目の前には、手を後ろにして立つタンポポと、彼女の後ろにずらりと横に一列に並んだ特殊部隊がいる。


 逆光で陰になったその光景は、映画のワンシーンのように強烈にきまっている。

 感動的なBGMまで聞こえてきそうだ。


 よく聞いたらタンポポが口でヒューヒューやってるけど、あれBGMのつもりなんだろうか。


 指揮官であるセーラー服少女が彼らに振り向き、サッと手を振ると部下達は颯爽と帰還していった。牛だから敬礼しなかったのだけが残念だ。


 カッコよすぎるよこのオバケ、なんなのこのオバケ、美味しい所を全部持って行ったよこのオバケ。


 これがもし物語だったら、タンポポが主役なんじゃないだろうか。慌てて恐ろしい考えを消去する。


 というかこいつホントにタンポポなんだよね、無駄に凛々しい顔してんだけど。フルスイングされた時に頭の部品がどこかイカレたんじゃないよね。


 明日また、特殊部隊モーモーのお乳を搾ってあげに行こう。


 ボクの意思が通じたのか、タンポポはこくんと頷いた。

 カレンだけが事態を飲み込めずにポカーンと呆けていた。


 ポカーンと開けた大口に蝶が入りそうになって現実に戻ったカレンは、今見た理解不能なシーンを忘れる為か、トロールをお肉にした。


 お肉にしだした途端にカレンは上機嫌になり、鼻歌を歌いながらお肉を袋に詰めている。


「あんまり高く売れないけど、ハンバーガーや安いソーセージの合成に使う事もあるんだよ。そのまま食べるとそんなに美味しくないよ、珍味ってやつだね。でもお肉はお肉、持って帰らないともったいない」


 カレンにとってモンスターはお肉なのだ。



 ノビているミーシアの口の中に回復薬を放り込み復活させると、二人でさっきトロールが何かを作業していた所に行ってみる事にした。


「うわ」

「あう」


 現場に着くとミーシアは一歩引いて、僕は固まる。


 とんでもない光景が拡がっていたのだ。


 そこには女の子の衣服、つまりトロールたちの戦利品が綺麗に並べられていたのである。

 種類や色によって並べられた服で、綺麗なグラデーションの作品が出来上がっていた。


「真ん中はブランド品コーナーみたい……」


 ミーシアはかなりドン引きして更に五歩後退した。

 どこの警察の押収品ですか。


 何も見なかった事にしてカレンとタンポポの所に戻る。

 ミーシアが後ろでブツブツ何かを言っている、そうだねミーシア、他の女の子たちにこんなの見せられませんから。


「フレイムオーバーキル!」


 灼熱の炎がトロールが残した、女の子たちの嫌な青春の思い出作品を消し飛ばしていく。


 その日、紐キャミソールとマイクロミニスカートで堂々と凱旋したミーシアはとてもかっこ良かった。

 恥ずかしさで顔真っ赤だったけど。そして彼女は三日くらい引き篭もった。



****



 その後ボクたちはギルドへ戻り、受付のお姉さんに〝おいはぎトロール〟討伐終了の報告をして、森のまじないの正体を明かした。


 早速女の人の冒険者を中心に町の若い娘たちが集まり会議をして、森の一部をパンツの森と称してあちこちの木にパンツを掛ける事になった。

 どれか一枚が偶然まじないになればいいのだ。


 その場所は当然男子禁制の場となり、こっそり侵入して幸せになった男の人は、見つかるや否やボコボコにされて町に連行後に正座させられる事になる。


 当然ボクのパンツも引っ掛ける事になったけど、逆にモンスターを惹きつけそうで怖い。でも大丈夫かな。


 森のあちこちの木の枝にパンツが掛けられて風になびくシーンを想像して欲しい、恐ろしくて誰もが逃げ帰るだろう。

 もうまじないの域を通り越して脅迫なのだ。


 ボクなんかカレンと一緒に確認に森に入って死に掛けた程だ、こんな恐ろしい場所は他にはないだろう。

 気絶して薄れていく意識の中でボクは見た。


 森の中を風が吹く。

 二つ並んだボクとカレンのパンツが仲良く揺れたのを――


 って何だかいい感じのシーンっぽくなってるけど……


 アウトでしょこれ……


「ああ、みのりん鼻血出てるよ、みのりんしっかりして――」


 第13話 「トロール討伐大作戦」を読んで頂いてありがとうございました。

 次回から第14話になります。

 みのりんが一度行った事のある、あの場所の深部への冒険です。相変わらずろくでもない事態になります。


 次回 第14話 「優しい強盗団の洞窟探検」

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