表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

89/222

その4 タヌキは友達じゃありませんよ


 なんとかタンポポを連れて四人でギルドの扉に向かうと、今度は受付のお姉さんに呼び止められた。

 一難去ってまた一難だ。


「あなた方はどちらにいかれるのですか?」


 受付のお姉さんはにこやかな笑顔で迫ってきたが、彼女を見てボクが涙目になるとちょっとショックを受けたようだ。


「ちょっとカフェで女子トークでもと思ってるのよ、ここお酒しかないんだもの」


 ミーシアのかわし方さすがです。


「おいはぎトロールの討伐は、ギルドの対応が決まるまで待ってくださいとお願いしたはずです」


 ミーシアの言い訳はあっさりスルーされた、何でもお見通し。小娘が受付のお姉さんをかわせるはずが無かったのである。


「行かせて欲しい、私は行かなくてはいけないんだ。自分の行動に責任を持てって師匠に教えられてる」


 前に出たカレンがとても真剣な目でお姉さんを見つめる。


「私もミミコお婆さんの敵を討ちたい」


 ミーシアもカレンの横に並んだ。

 とりあえずミミコお婆さんがどうなったのかだけでも教えてくださいミーシア。


「今のタイミングだと報酬は出ませんよ」


「構わないよ」

「私も別にいいわよ」


 カレンとミーシアに続いて。


「ボク……も」


 そしてタンポポが離れていった。


 慌ててタンポポを追いかけて捕まえる。

 音も無くスーっと離れていくのはさすがオバケといった所か。能力をフル稼働しないでください。


「ちょっとタンポポ、あなたお約束すぎやしませんか。オチ担当はやめて下さい」


「報酬出ないなんてちょっとありえないんだもん。田舎の女子高生としてはこれは見過ごせない」


 それ田舎の女子高生関係ありますかね。


「友達じゃないんですか?」

「カレンと友達になった覚えは微塵もないかな。一ミリの十分の一の十分の一、アリくらいしかないんだもん」


 アリはもうちょっと大きいでしょう。


「ボクとは友達じゃないんですか」


 タンポポの動きが止まった。

 フリーズしてる様子で、今タンポポの頭の中ではゴールドとボクが天秤に乗せられてガッタンガッタン揺れているのだろうか。


 カレンは何が何でも行くというオーラを出している、ミーシアもそれに同調した。

 しばらく無言で見つめていた受付のお姉さんが『ふう』と短い溜息をつく。


「仕方無いですね、では私がかけあって三体討伐で報酬が出るように交渉しましょう。本来なら冒険者は平等に機会を与えられるべきなのですが、今回の一件は相手が相手ですので女性冒険者の集団である、あなた方に託したいと思います」


 受付のお姉さんが折れた、お姉さんの交渉なら確実な気がする。ペチーンと潰される男の人の冒険者よりは見込みがあると思ってくれたのだ。

 まあ人間の女の子はカレンしかいないんですけどね。


「でも、くれぐれも無理はしないでくださいね」

「ありがとう」


「報酬出るんですってよ、タンポポ。あれ?」


 お姉さんと話しているカレンたちから視線を戻したら、横にいたタンポポがいない。しまった、目を離した隙に逃げられたか。


 探すとタンポポはギルドの扉を開けて『さあ、早く行くかも、遅いよ』とドヤ顔で待っている。

 そのはりきった顔に、ボクは思わず苦笑した。報酬が出ると知った途端にこの変わり身の早さである。


 全員でギルドの外に出て門に向かう。

 一見すると、女の子たちが町でお買い物という風に見えるかもしれない。


 これから凶悪なモンスターと戦いに行くという、物々しい雰囲気はボクたちには皆無である。


「報酬と聞いてあっさり手のひらを返しましたねタンポポ、さすがです」

「やっぱり友情は大切なんだもん、私の辞書は友達という文字でできてるんだもん」


「随分薄っぺらい辞書ですけど、二ページ本なんでしょうかね?」

「それは一枚の紙というんだよみのりん」


 そんなつっこみは期待していませんよタンポポ。


「因みにタンポポは、住んでた田舎で普段一緒に遊ぶ友達はいたんですか?」

「いたに決まってるかな。失礼な事言わないで欲しいかな」


「何人くらいです? 二人? 三人?」

「……タヌキは数に入れちゃダメかな。入れてもいいよね? 普通入れるよね?」


 入れるわけが無いでしょう。なんだか悲しくなってきちゃったじゃないですか。


 そういえばこの人、住んでた田舎で普段会えるのはタヌキくらいしかいなかったって言ってたっけ、なんとかカレンとタンポポを友達にできないものだろうか……


 門へと続く商業区の通りをしばらく歩いてると、今度はミーシアである。

 お財布を見たり、きょろきょろしたり、落ち着かない様子を見せたと思ったら。


「ちょっと着替えを買ってくるから待ってて欲しい」


 そう言って入って行くのは例の服屋さんだ。近くにこのお店しか無いからやむ終えずといった所か。


「あれ、ここってこの前のお店だよね」


 カレンも気がついたようだ。

 ボク、ミーシア、カレンと三連敗したお店なのだ。もしタンポポが入って行ったらどうなるのか興味もあるけど、ここはミーシアを黙って待とう。


 この店内で行われる惨劇は、あまり見てあげてはいけないのだ。

 五分くらいしてミーシアが出てきた、涙目で包みを抱えているので察しがつく。ダメだったんだね。


「今回はどんなのを買わされたんですか?」


 聞いちゃ悪いような気がしたけど、共に散った戦友だしいいかな。


「紐キャミソールとマイクロミニスカート上下セット、一ゴールドだったわ……ウウ。見てなさいよ、次こそは絶対勝つんだから」


 あの服まだ在庫あったんですか!


 次回 「まじないの秘密とカレンのパンツ」


 みのりん、噂話が怖いけどやめられない

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ