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その5 荷車の上はハーレム会場だった


 町を出て草原を進む我がパーティは最高記録の五人となった。

 四人と一体ではないのか、というつっこみは無しだ、霊体のタンポポも一人に数えるぞ。


「町の外のこの草原を進んで行くといつもは森に着くよね、そこを曲がって西に進んで行けばのっぱらモーモーが沢山いるよ。この草原ものっぱらモーモーのテリトリーなんだ」


 カレンの説明に納得した部分がある。

 なるほどだから以前やんばるトントンに追いかけられた時、テリトリーが違うから草原には入って来なかったんだ。


「このネギは何かな? さっきから気になってるんだもん」


 ボクはあえて積まれたネギにはつっこまなかったのだが、町にネギ屋が溢れてるのを知らないタンポポが聞いている。


「このネギはね、のっぱらモーモーの大好物なんだよ。これ食べてる間にお乳も頂こうかと思ってるんだ、だからバケツも持ってきた」


 カレンが言うにはこの冒険者の町の特産はネギらしく、しかものっぱらモーモーの好物なので討伐によく使われるみたい。

 なるほど、タンポポのお陰で不思議に思っていたこの町の謎が一つ解けたよ。タンポポにお礼で頭を下げると、彼女は不思議そうに首を傾げる。


「今日もいい天気ね。こうしてのんびり揺られているとなんだか眠くなっちゃう」


 ホントにポカポカ天気だ、ミーシアの言葉に皆賛同した。ゆらゆら揺れて眠くなりそう、『ふあぁ』と皆であくびをする。


 因みにここまでの会話は荷車の上で行われている。

 荷車の上で女の子たちがのんびりと会話を楽しんでいる風景だ。周りの牧歌的な景色とあいまって、平和な日常の一コマなのだ。


「なあ、一つ疑問があるんだが聞いていいか? 何でオラッちだけが荷車を引きずってるんだ?」


 皆を乗せた荷車を黙々と引いていたマンクが、ようやくここで自分の境遇に気が付いたようだ。

 とうとう気がついてしまいましたか、そこに。


 マンクは女の子に触れると、レベルその他がドレインされてしまうから当然だ、一緒に荷車の上にいられるわけがない。


「間違えてアンタを触っちゃうのも悪いしさ、他は可愛い女の子なんだから張り切ってもらわないと」

「うんそこは張り切る、みんな可愛い。可愛いが四倍になった」


 相変わらずの会話である、自分を含めて可愛いと言っちゃうカレンと素直なマンク。


 だが待ってもらおうか、お約束と言われようがここはつっこませてもらう。この中の〝人間の女の子〟はカレンさんあなただけなので。

 おさらいすると、このパーティは、男の娘・男の子・女の子・オジサン・筋肉で構成されているのである。


「それにさ、これなら荷車を通じてアンタも女の子に触れてる事になるんだよ。どう? 美少女四人のお尻が荷車越しにアンタに触れてるよ」


 カレンが凄い事を言い出した!

 と思ったらマンクも『ビシャーン』と雷に打たれたみたいになっている。


「俺今女の子に触ってるのか! 四人も! しかもお尻! ああーこれが女の子四人の感触か~しかもお尻~」


 荷車に頬ずりしてるマンクがこれでドレインされるアホでなくて本当に良かったと思う、更に度合いが高いアホなのは間違いないんだけど。

 何事も超越した者はすごいと言う事か。恐ろしい筋肉だ。


 ほら、変な事言ってるから、石ころを見るような目のミーシアがマンクから一番遠い荷車の端に行きましたよ。

 更にほら、今度はタンポポがネギを……おい齧るな。


「あ、ダメだよタンポポちゃん」


 そうですよ、カレンの言うとおり。それはのっぱらモーモーのエサなんですからね、あなたのお昼ご飯じゃないんですよ。


「タンポポちゃん、焼いてから食べようよ」


 そ、そうですよ、カレンの言うとおり。ネギは焼いた方が美味しいのです。


 パーティを乗せた荷車は森の直前で曲がり、西に進んでしばらくして小休止。

 マンクがさすがに疲れたようなので、皆で降りる事にしてついでに休憩しようとなったのだ。


 カレンが近くの森に入ろうとするので心配そうに眺めていると。


「ちょっとお花を摘みに行ってくる」


 ボクの視線に気がついたのか、そう言って彼女は森の中に消えた。


 さすがに今回は理解した。以前一緒に冒険したサムライが用足しの際に、同じようにボクから離れようとした経験があるからだ。

 もちろんサムライはお花を摘みになんて可愛い表現ではなかったが、カレンにそれを言わせてしまった事でボクの顔が赤くなった。


 だがいつまでも赤面している場合ではなかった。


「私もお花を摘みに行ってくるかも」


 短剣を構えながらタンポポが、カレンの消えた森の中に入って行こうとしたからだ。

 大慌てでタンポポの肩を押さえて止める。


「ちょっと待ってもらおうか、タンポポ。どこに行って何をする気ですか」


「無防備な所を狙うのが敵を倒す時の鉄則なんだもん」

「無防備な所とか何を言っているんですか! あなたも女の子でしょうが!」


「オッサンだもん!」

「尚更アウトだ!」


 タンポポと二人で『うーうー』と互いに引っ張り合いをしているとカレンが出てきた。


『チっ』と呟くタンポポを後ろに追いやりカレンを見ると、彼女は腕一杯の花束を抱えているではないか。

 ホントにお花摘みしてたよこの人。ポカーンとタンポポと二人でカレンを見る。


「店長に今度冒険するなら取ってきてって頼まれたんだ、よいしょっと。〝やんばるコスモス〟はハーブティになるんだよ。もちろん依頼料は貰うから皆と分けようね」


 荷車に花束を乗せながらカレンは笑った、美味しいんだよ、と。


「そっちの草は……何」

「ああこれ? これはストローの材料だよ。硬い茎の内部が空洞になっててね、ジュース飲むのに最適なんだ。これの仕入れも店長に頼まれた」


 さすが異世界、なかなか便利な草もあったものですね。

 飲み物の甘さでスイート空間に行っていたせいで、今まで全く気がつきませんでしたよ。



 小休止の後、皆で歩いて草原をしばらく進むと、先頭のカレンが皆に頭を低くするように指示。這って近づくと前方に草を食べているモンスターがいた。


 あれが〝のっぱらモーモー〟か……


 食べたお肉の味とその名前から、薄々は気付いていたんだけど、それは牛みたいな姿のモンスターで大きさも牛くらい。鳴き声も『モー』である。


 もう牛でいいんじゃないかと思うんだけど、取ってつけたような頭のドリルみたいな角が一応モンスター感を出している。


 そしてその後方には……


 のっぱらモーモーの大群が控えていた。

 それは、圧巻とも言えるモンスターの大部隊だったのである。


『モー』


 次回 「モンスターのミルクを奪え!」


 みのりん、お姫様だっこで運ばれる

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