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その10 突撃! 三人娘 (仮)


「ぶきーーーー!」


 毎度お馴染みのモンスター、やんばるトントンの登場だ。


 いつものように鼻息で飛ばされようと身構えた寸前、カレンがボクの前に入ってやんばるトントンと対峙してくれた。


 鼻息を寸前で邪魔されたモンスターは目を真っ赤に輝かせてカレンにジリジリと迫る、その一方でタンポポが短剣を握り締めてカレンの背後から迫っていた。

 カレンの絶体絶命の危機だ。カレン気をつけて、敵はトントンだけじゃない、敵は他にもいる!


 ボクが止めようと動き出した瞬間、ボクよりもタンポポよりもトントンよりも先にカレンが動いた!

 彼女の速さには誰も追いつけないのだ。


「スパイクトルネード!」


 カレンの剣に宿った精霊の力を一気に放出、敵を瞬時に切り裂くカレンの一撃必殺剣がモンスターに叩きけられた!

 一本の巨大な風の刃にモンスターはなすすべもない。


 相変わらずの電光石火だ、カレン以外全員ピクリとも動けなかった。

 見るとやんばるトントンは縦に真っ二つにされて転がっている。いつもは上半身と下半身にぶった斬っていたのにこれは凄い。


「私考えたんだよね、こうやって切ればお肉の部位も取り分け易いってんじゃないかなって。ほらお肉の部位図解もこの切り方だし」


 ソウデスカ……相変わらず凄い技ですね……


「ありがと。そうそう、さっきも言ったけどオバケ退治は私にまかせてね、私の精霊を纏った剣なら幽霊なんかスパーンと真っ二つだから」


 あんまりその子を苛めないであげて……ボクは短剣を構えたままの状態で固まっているタンポポにちょっと哀れみを感じてしまった。


 背後から迫っていたタンポポに気がついたカレンは、しかしもう既に一撃後のポンコツと化していたので、構えた短剣を見て呑気な事を言い出した。


「お肉の解体手伝ってくれるんだタンポポちゃん」

「ハイ! よろこんで!」


 カレンがポンコツになったと知らない顔面冷や汗だらけのタンポポは、カレンの部位についての講義にうんうんと真剣に頷いている。


 霊体なのに汗かかないでください、常識の無い幽霊は嫌われますよ。


「すごい! すごいよ、ロースが取れたんだもん! これ早速食べてもいいのかな」

「生はやめた方がいいんじゃないかな。タンポポちゃん、お腹壊すよ」


「別にいいんだもん、お腹壊しても私だけど私じゃないし」

「タンポポちゃんくらいになると、精神と肉体が超越するんだね」


「おおー! 今度はヒレが取れた! 食べてもいいのかな」

「だから生はダメだって」


「このヒレ、もっと深い所から取ったらフカヒレになるのかな。た、食べた事無いんだもん、とんでもなく高級食材だよ」

「へー、物知りだねタンポポちゃん。よし取ってみようよ」


 ポンコツ二人で何やってんですかこの人達……

 隣で青い髪の少女がジト目で見つめていますよ。



「ぶきーーーー!」


 先ほども聞いた雄たけびは、本日二度目の挑戦者。


「来たわねいつものお客さん。ふっふっふ、そう毎日毎日追い回されないよ、何故なら私には新兵器があるからさっ」


 新しく登場したやんばるトントンに向かって、ゆらりと立ち上がるカレンを見てボクは期待した。毎度毎度ポンコツではいられない、新しい技を会得したに違いないのだ。


 と思いながらも心の中でやっぱり違うんだろうな、とその先の展開を読む。


 カレンはモンスターを見て『ひい』と叫んで逃げようとしたタンポポの左右の肩を両腕で押さえると、そのままぐるりとモンスターに向けた。


「この子はねー私なんかより数倍も強いんだからね、あんたなんか飛んで火にいる夏のトントンなんだから。さっ先生お願いします」


 前に出されたタンポポが見上げる相手は、さっきのやんばるトントンより一回りも二回りも大きい。


「タンポポ先生、さすがにちょっと大きすぎかな。逃げる準備をした方がいいかも、これ普通のヤツじゃない、〝おうさまトントン〟だよ」


 カレンがちょっとやばそうだ、と荷物に手を伸ばそうとしている、逃げる準備だ。

 確かによく見れば、おうさまトントンはいつもの可愛いトントンに比べて、リアル志向のモンスター姿のようだ。


「ま、まっかせるんだよ、こんなザコモンスター、私の手にかかればちょちょいのちょいだもん」


 そう言いながらボクの方に振り返った目は、完全に助けを求める目だ。だが待って欲しい、不良に絡まれて道端のアリに助けを求めるだろうか。


 だから危惧したんだよ、素直なカレンは信じちゃうからあんまり大きな事は言わない方がいいのにと。

 ボクが感じてた不安は間違いなくこれだわ。


 改めて『木の棒』を握り締める、どこを狙えばいいのだろうか、ボクでも足にしがみつけば一秒くらい稼げるかもしれない。


 ボクの仕草を見たカレンもロングソードを構えた、ボクに連動して支援してくれる気だ。

 今の彼女はボクとどっこいどころかそれよりも弱いかも知れないのに、こういう所がカレンを好きになれる部分なのだ。

 

 初日に聞いたお姉さんの言葉を思い出す……


 タンポポのLv1はやんばるトントンとは互角に戦える強さだと。

〝おうさまトントン〟だとしてもボク達が支援して隙を作れば勝てる相手のはずだ。


 カレンに目配せをすると、彼女もその事を理解しているように頷いてくれた。

 ボクが右足を狙うから、カレンは左足を……


 と、作戦を練ってる間にタンポポが動き出した。


「う、うわあああ! やってやるんだもん! なんだこんなの! タヌキよりちょっと大きいくらいだし!」


 ヤケクソになったタンポポが短剣を振りかざしてモンスターに突撃したのだ!


「タンポポちゃん!」

「ちょ! まだ早いよタンポポ! 準備ができてないのに!」


 先遣隊が敵を翻弄した後に主力部隊をぶつけるつもりが、いきなり本隊がドーンである。


 それにタヌキよりちょっと大きいどころの話じゃないでしょ、熊二、三頭分くらいあるっての。

 タンポポのタヌキ算よりもボクの熊算の方が正確なのだ。


 やるしかない!


 ボクたちパーティの戦闘が始まった!


 次回 「死闘 激闘 なんですとう」


 それは激戦

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