その5 再戦! ボクらの切り札カレン参戦!
カレンのバイトも終わり、ボク達は町に繰り出した。
女の子三人でウィンドウショッピング、なにこれめちゃくちゃ楽しいじゃないか。
「そこの三人の足の可愛いお嬢ちゃん達、どうだい買ってくかい安くしとくよ。そしてオジサンにいっぱい可愛い足を見せておくれよ」
串焼き屋台の店主が通りを歩くボク達に声をかけてきた、本当に商売熱心な人である。
にこやかに声をかけてきた店主は振り向いた三人の中にカレンを見つけると、『ひっ』と目を押さえる。
そういえばこの前カレンにセクハラして、目潰し攻撃を受けたんだっけこの人は。
カレンが成敗しようと動いた時、彼女は盛大にくしゃみを二連発。オジサンの目はすんでの所で助かった。
「誰かが私の事噂してるのかな、褒められてたらテレちゃうよ」
くしゃみ二回なら、笑い話のネタにされてそうですけど……
しかし店主はせっかく誰かによって助かった命を投げ出した、めげないオジサンなのだ。
「オ、オジサンはなあ! この町のこの場所でもう三十年、通りを歩く女の子の足を愛でて串焼きを焼いてきたベテランなんだぜ! 焼き愛で、焼き愛で、女の子の足にサービスするのがオジサンの生き様でい! オジサンもサービスするからお嬢ちゃん達もオジサンにサービスしてくれなくちゃな! もってけ串焼き一本一ゴールド! さあどうだ!」
ポカーンと見つめる三人の娘っ子。
懲りないこの店主は屋台の下からゴソゴソとなにやら取り出して自分に装着した、ゴーグルである、強気の原因である。
「チラっとでいいんだチラッとで、足を見せてくれれば串焼き一本オマケで付けるよ! オジサンを幸せにしてくれ!」
「一本下さいな」
カレンはポーチから一ゴールドを取り出すと、人差し指と中指の間に装着した。
ボク達は近くのベンチで本日二本目の串焼きを食べている。
カレンの装着を見た串焼き屋さんの店主は、速やかにゴーグルを外すと、大真面目な顔でカレンから一ゴールドを受け取りすみませんでしたと一本、更にオマケで付けると宣言してた一本を渡してきた。
そして何故かボクにも一本を渡し、『青い髪のお嬢ちゃん、強く生きるんだよ……』と手ぬぐいで目頭を押さえた。
やめて頂けませんか、ボクだってゴールド持ちなんですよ心外な。
食べ終わり、串をゴミ箱に捨てようとする二人を制止、『何故?』と聞く二人にここには串は捨ててはいけないルールだと伝える。
「私さっき捨てちゃったわよ? どうしよう。もしかして指名手配とかされちゃってる?」
オロオロするミーシアを慰めつつ、先ほどからソワソワしてゴミ箱の横に待機していたオジサンに〝この町のルールは守ったよ!〟とアイコンタクトして親指を立てると、オジサンは遠い目をして帰って行った。
オジサン、疲れてるでしょうけど町の美化の為にこれからも頑張ってください!
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「あ、ここに入ろうよ! 私このお店まだ入った事ないんだよね!」
カレンが指差したお店を見てボクとミーシアは涙目になる。
そうカレンが指差したのは、よりにもよってあの服屋さんなのだ。
「ここはやめた方がいいと思いますよ、ここは方角が良くないです」
「私もそう思うわ、お店の壁の色がダメ」
おかしな理由を言って目が泳ぎだした二人。
そんなに危険な店なのかというカレンに、この店に入ってボク、続いてミーシアが敗北した事を告げる。
ミーシアは口封じと言っていたけど、特に教えてもいいみたいだ。
「大丈夫、今日はバイト代入ったんだし、なんなら千ゴールドだってどんとこい!」
意気揚々と入っていくカレンの後姿は頼もしい。
カレンなら大丈夫!
いよいよボクの相棒の出番なのだ! これで服屋さんに勝てる!
「らっせー、おやまたお嬢ちゃん達か、ズボンが買いたいなんて頭のオカシイ事を言わないでくれよ」
服屋さんに入ると、ボクとミーシアに気が付いた店主のオジサンが、鋭い目をボク達の足に向ける。
だから万引き犯の足を見るような目はやめて欲しい。
「今度は私が買いに来ました!」
と挨拶するカレンの足をふむふむと見る店主、とにかくこの店主は女の子の足ばっかり見てるんだよな。
「お嬢ちゃんにはマイクロミニのタイトがお似合いだよ、どうだい一ゴールドだよ」
「うわ、やっすいねー。でもこれ足出すぎだよ、足以外の物も出ちゃうよね、それにちょっと透けてないかな」
これはないとカレンがポイする、頼もしいよカレン、彼女ならこのオジサンに鉄槌を下してくれそうな予感。
「これにしよ!」
手にしたのはあのフレアスカートだ、ボクもミーシアも静かに放流したあの一品が今度はカレンの手の中にある。
ついにこのスカートが陥落する瞬間を目にする事ができるのだ!
「オジサンこれ買うよ、いくら?」
「一万ゴールド」
このオジサン……
カレンが固まった。ついでにボクとミーシアも固まった。
ああ、見たくないです、見たくない。カレンが敗北する姿なんか見たくないです。
「オジサン……女の子からぼったくろうとしてるの……かな? スカートが一万ゴールド? 返答次第によっては……許さないんだけど」
よしキタあああ!
それでこそカレン! 我が相棒!
ミーシアも期待が篭った目でハラハラしながら見守っている。
「あんたも冒険者ならわかるだろう、ほらこの生地、これはここから遠くアルガルカ山脈に住む羊型モンスターの毛から作った高級品だよ。アルガルカ山脈知ってるだろ? 名前しか知らない? そうかそうか、あそこに行ける冒険者は上級者だから仕方無いな。触ってごらんよこの手触り。この〝まっかなメーメー〟の毛は軽くて丈夫で高級品で知られてるんだ。知ってるだろ〝まっかなメーメー〟、え? 知らない? お嬢ちゃんも現地に行って戦えるようになるといいね。それよりもこのマイクロミニのタイトにしなって、お嬢ちゃんに似合うし、これだけ足がババーンと出れば戦う時に動きやすくて楽な事請け合いさ」
今ボクは、マイクロミニタイトスカートの代金の一ゴールドを支払うカレンを見つめている、ミーシアは目を伏せた。
カレンが素直な女の子だって事を忘れていたよ。
〝まっかなメーメー〟の話は、疑い深いこのボクですら120%くらい信じちゃってるもの。素直なカレンでは対応できない。
ボク達の最後の希望だったカレン。
もう勝てない、このお店には誰も勝てない。ボクの脳裏にはもう誰の姿も浮かばない。
「あら、みなさんもお買い物ですか」
新しく入ってきたお客さんがボク達に声をかけた、冒険者ギルドの受付のお姉さんだ。
「らっせー」
店主は受付のお姉さんの足を見ながら接客する。
「お嬢さんには、この両サイドにスリットがガッツリ入ったスカートがお似合いですよ」
スカートの山を物色していた受付のお姉さんはそれには全く反応せず、あのボクもミーシアもカレンも敗北した〝まっかなメーメー〟フレアスカートを手に取った。
「これを頂きます、おいくらでしょうか」
「十万……」
足ばかり見ていた店主は、ここでようやく受付のお姉さんをちゃんと見たようだ。
「十?」
お姉さんは笑顔で聞き返す。
「十円です」
固まった店主はおかしな通貨単位を口にした。
第6話「町の中での戦い。服屋と決戦!」を読んで頂いてありがとうございました。
次回より第7話となります。
新キャラが登場します! この作品で一番の問題児の登場となります。
楽しんでいただけると嬉しいです。
次回 第7話 「オバケ退治大戦略」




