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その8 ああっミーシアまで燃えてるじゃないか!


 何もかもを吹き飛ばし、あたり一面を焼き払ったミーシアの凄まじい魔法は、とんでもない破壊力だった。


 高温のあまり真っ白になった爆発の光がやがて消えると、ようやく視界が開けてくる。


「あっはははははははははは」


 真っ黒に焼け爛れた広場の中心で高らかに笑っているのは、黒煙に包まれたミーシア。それは物語の伝説のシーンに出てくるような美しい光景にも見えた。


 焼けていないのは中心にいたパーティメンバーと、最初に倒したやんばるトントンだ。

 腰が抜けたらしいカレンは、へたり込みながらミーシアを見つめている。


「どうして? どうして女の子が男性魔術師の魔法を唱えられるの?」


 うっわ……ここで意外なピンチが発生してしまいましたよ。どうしてそんなところに気がついちゃいましたか、一難去ってまた一難じゃないですか。


 ミーシアを取りまいていた黒煙が薄れてくると……なんかミーシアの感じが変だ。


 おいおい! ミーシアも焦げちゃってないか! プラスでもう一難発生してた!

 そういえば〝我が身と我が前に立ち塞がる者共を〟って唱えてたっけ、これダメなヤツじゃん!


 慌ててミーシアの元に駆けつける――マンクは爆風で剥がれてノビていた――と服も焦げてボロボロだ。


「あはははははははははは」

「ミーシア!」


 爽快に笑っていたミーシアが、ボクの声でこちらに振り向き微笑んだ。


「大丈夫大丈夫、同時に回復薬も飲んだしすぐに再生するから、火傷のヒリヒリが死にそうなくらいすっごい痛いけど、ハイ状態で爽快感なのよね」

「はやくこれを着てください!」


 ボクはポーチに入っていたキャミソールとマイクロミニスカートのセットを取り出してミーシアに渡す。こんなポーチにしまえるなんてどれだけ面積が小さい服なんだか。


「ああ……」


 ミーシアは笑顔のままやっと自分の格好に気付いたようだ。

 身体も回復していっているようで、とりあえず安心である。


 彼女は着替えながら魔法の説明をしてくれた。


「この魔法は本当は最初に魔力で偽装した別の何かに変身して、それを身代わりに焼かせた後で元の自分に戻るのがいいんだけど、私変身できないのよね。制約なんだと思うけど、ほら、普段既に可愛く変身しちゃってるから? だから薬を併用した直接自分を焼かせる方法を選んでるんだけどギリッギリなのよね。なんというか、一歩間違ったら死ぬかもしれないというギリギリ感もある意味で気持ちいいからいいんだけど、唯一の欠点はせっかく選んだ可愛い服が、身体と一緒に焼けちゃうって事なのよ」


「欠点はそこじゃないですよね?」


 ミーシアが長々と喋り終わるのを待って、キッチリとつっこみを入れた。説教タイムである。


「死ぬかもしれない制約と引き換えに、可愛い服を着る意味がわからないです」

「何を言ってるの?」


 この子頭大丈夫かしら。といった表情でポカーンとボクを見つめるミーシア。


「女の子に見られるのと生きるか死ぬかを天秤にかけたら、どちらに傾くか子供にだってわかるわよ?」


 いやいやいやいや、おかしいですからそれ。どこの世界のお子様の話ですか。


「女の子のおしゃれは戦い、可愛い女の子に見られたい、見られなかったら爆発して死ぬ。これはもう必然なのよ!」


 この子頭大丈夫かしら。といった表情でポカーンとミーシアを見つめるボク。


 二人揃ってポカーンである。ポカーン&ポカーンだ。


「ああそうか!」


 向こうでポカーンとしたカレンの声がした。


「そうなんだ! 魔法で男性魔術師に変身してから唱えてるんだ! 女の子が女性の魔法じゃなく男性の魔法を唱えたからびっくりしちゃったよ! ミーシア天才!」


 勝手に疑問を浮かべ勝手に納得、カレンがちょっとポンコツでも言い訳の手間すらかからないのは助かった。


「あーでもトントンが完全に墨になっちゃったねー、爆炎を見た時、焼肉にして持って帰れるかも! 焼き豚の手間が省けたかも! って期待したんだけど」


 あの凄まじい爆炎の渦の中で、この人はこんな事を考えていたのか……

 常にお肉の事を考える少女冒険者、カレンは一切ブレないのだ。


「今日の成果のお肉一体分は、仲良くパーティメンバー三に……四人で分けよう!」


 多分素でモンクの事を忘れてたんだと思う、そのマンクは向こうで岩を抱き締めて幸せそうにノビていた。

 と、その岩にバキっと亀裂が入るのを目撃してしまい、別の意味でも九死に一生を得た事を、魔法スキルを唱えてくれたミーシアに心の底から感謝である。


「ミーシア、本当にありがとうございました。ボクの背骨の恩人です」

「え、あ、ああ。どういたしまして、つまらない魔法ですが」


 同い年の少女はぺこりと挨拶をかわす。


「ところでみのりん、あなたに聞きたい事があるんだけど」

「はい? 改まってなんですか」


 ミーシアがボクを問い詰める、その顔はちょっと影があって怖いんですけど。


「あなたが貸してくれたこの服の事なんだけど……」


 ボクの前でもじもじしてるミーシアの姿を見て真っ赤になる。

 胸がかろうじて隠れてるだけのお腹丸出し背中丸出し、少しでも屈んだらお尻丸出し、この前町の中で自分がこの格好でいたのかと思うと卒倒しそうになった。


「これ、なに!」

「お金無くてそれしか買えなくて、服屋のオジ……」


「この格好で今から町の中を歩くのはさすがの私でも耐えられるかしら。無理かなー恥ずかしくて無理かもしんない。うん、死にそうなくらい恥ずかしいわ! こんな趣味だったなんて、あなたは私の何十歩も先を進んでる人なのね! ちょっと引いたけど尊敬するわ! 凄い女の子だねみのりんは」


「ねえ……話を聞いて……」


 涙目になって説明しようとするボクの横で、カレンがお肉を捌きだした。さっき中断した分を完遂しようと張り切っているようだ。


「今日は四人もいるから、一体分丸々持って帰れるね! 捨てるお肉なんて無い、全部利用だよ! 墨になっちゃった四体は勿体無かったけど、ホント、勿体無かったけど!」


 めちゃくちゃ嬉しそうですねカレン。


 ところで町への帰りの事だけど、ミーシアの胸が縮んだ事に関しては、お肉入手で上機嫌のカレンは気がつかなかったようだ。


 マンクにはそんな洞察力は最初から無いので安心だ。

 彼は可愛くて危険な物体としてしか認識していないだろうから。


 というか、この人ずーっとボクを抱き締めるタイミングを計ってばっかりで、他の事が眼中に無かったというのが正解なんだけど。


 迷惑な話である。


 第5話「ボクの新しい仲間ミーシア」を読んで頂いてありがとうございました

 次回から第6話になります

 町の中であるお店と戦います、一体何のお店なんでしょうか


 次回 第6話「町の中での戦い。服屋と決戦!」

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