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その7 モンスターに囲まれました


 ボク達パーティは四体のモンスターに囲まれていた。


 最初の一体を屠った事で能力を使い切ったカレンが、ポンコツから回復するまでには最低でも半日から一日かかり、回復薬を飲んで復活したとはいえ、ボクは端から戦力外。


 戦えるのは残りの二人だったが、ボクを抱いたまま立ち上がろうとしたマンクが『うぅ』と顔をしかめて動かなくなった。


「どうしたんですか!? もしかして、さっきボクを受け止めてくれた時に怪我を!? 大丈夫ですか!」


 心配になってマンクの顔を覗き込むと、抱きしめる腕にギュッと力を込めてきた。そう言えばこの人抱きついたら離れない事もあったっけと思い出すが、こうなったらどうしようもない。


「いででででででで、離してください! 筋肉が暑苦しいんですけど!」

「離せないんだ! 離したくない離せない!」

「こんな時にっ」


「わかってるんだ! 理性では離せと! こうなったら誰かに引き離してもらわないと無理! しかし、ああ柔らかい、いい匂い……このまま一緒に……でもいい気もしてきた、ふにゃ~」


「いいわけないでしょ! このままじゃ二人揃ってトントンのご飯です! やんばるトントンをご飯にする事はあってもその反対は認められません」

「どうすればいいの? このオヤジギャグの石ころじゃなかった、人を引き剥がせばいいの?」


 ミーシアが引き離そうとするのを慌てて止める。


 女の子だと思ってる存在が触ったらドレインでマンクは干からびてしまうから、なんとか自力で頑張ってもらうしかないのだ。

 というか、ミーシアはやっぱりマンクの事を石ころと思ってたんですね。


「頑張ってください! 闇の力から自らを解き放つのです! 負けてはいけません! 頑張れマンク! 頑張れ! 頑張れ! がんばえー!」


 必死に励ましたけど既に天国に行ってるような夢心地の顔をしている、もうダメだこの人。


 となると、残るはミーシア。彼女はボク達を庇うように正面に来たモンスターと対峙している。


 新しくできたボクの友人で、ある意味で仲間の女の子……だ。


 でもミーシア、武器を持って無いんだよね。

 この中で武器を持って来たのはカレンとボクだけ。といっても、ボクの『木の棒』は数に入れていいのかパーティ会議を開く必要があるかも。


 ああ、なんというポンコツパーティだったんだろう。


 でも武器を持っていないからといってまだ悲観しなくてもいい。

 もしかしたらこの子も実はモンクで、戦闘格闘のプロかも知れないからだ。


 うーむ……


 後ろから見つめるに、筋肉モリモリのマンクと比べてミーシアはあまりにも華奢すぎる。手足も細いし小さな背中だ。

 華奢な少女が格闘無双というのは憧れるけど、彼女が四体のモンスターと戦えるとはとても思えない。


 現にミーシアはモンスターを前にしてブルブル震えている始末じゃないか。

 ミーシアを庇おうと、一応カレンがロングソードを構えて震える少女の前に立った。


「ごめんね、必殺剣を繰り出した後の私って、仔犬と戦っても負けるんだ、へへ」


 そんな状態でも戦おうとしてくれてるんだ、ポンコツなんて言ってごめんなさいカレン。


 このままだと非力なカレンとミーシアの二人はモンスターに蹂躙されてしまう。なんとかしなければ。


 囲まれてはいるが、モンスターの目当ては恐らくボクだろう、連中をこのままボクに突撃させれば彼女達を助けられるはずだ。

 マンクはこの際筋肉の鎧として活用させてもらうとしよう、だって離してくれないんだもんこの人。


「もういいです! カレンもミーシアも早く逃げて! ボクは自分で何とかしますから!」


 振り向くカレンを真っ直ぐに見る、こういう時はさすがにコミュ障は出ないみたいだ。


「却下、そんな事できるわけが無いじゃない。みのりんを置いて私に逃げろなんて、冗談でも言っちゃだめだよ、メ!」


 にっこり微笑むカレンの顔がじわっと歪む、ああ、ボクの涙で歪んだんだ。


「同じく却下よ」

 震えながらミーシア。


 でもそんなに震えているじゃないですか、モンスター相手に頑張らなくていいんですよ。


「そう却下も却下、私が逃げる? どうして? クックックック、この窮地にゾクゾクして震えが止まらないというのに?」


 あれ、そこの震えているお嬢さん、あなたの様子がちとおかしいんですが、気のせいですかね。


「この鼻息が荒い豚どもが全身を嘗め回すように見てくるのよ、さあ私の姿を見るがいいわ豚! これが女の子よ! あなた達が見つめる女の子! この可愛い可愛いミーシアちゃんが最大の力で地獄に送ってあげるからさ!」


 その声に四体のモンスターが攻撃態勢に入った時だ。



 大地より火炎来たれり――

 天より火炎来たれり――



 ミーシアが何かを唱えながらゆっくりと両腕を動かし地面と天に伸ばすと、その手の平を中心に炎の輝きが生まれた。


 これは呪文だろか。

 ミーシアはこっち系だったのか、杖だのステッキだのを持ってないからその発想には至らなかったよ。


「火は全ての力の源たり、全ての生命に宿る熱き炎を携えて、我が前に姿を現せ火炎の魔王よ! その爆炎の力を持って、我が身と我が前に立ち塞がる者共を喰らいつくすがいい――」


「あれ……これって」


 カレンは驚いたようにミーシアを見つめた。

 ボクも初めて見る魔法スキルを見届けようと同じくその姿を見つめる。


「全てを焼き払え! フレイムオ――ヴァ――キル!」


 途方もない熱量だった、爆炎の渦があたり一面を焼き払い、爆風が何もかもを消し飛ばした。


 焼き尽くせ――――

 凄まじい火炎の嵐が吹き荒れ、敵を飲み込んでいく。


 焼き尽くせ――――

 焼き尽くせ――――


 焼き尽くせ――――――――



 ボクが初めて目にした魔法スキルは、とんでもない破壊力だったのである!


 次回 「ああっミーシアまで燃えてるじゃないか!」


 ミーシア焦げる

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