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その6 この連携、冒険者パーティみたい!


「モンちゃんがどこかに潜んでいる!」


 カレンの一声で、それまで呑気にピクニックを楽しんでいた一行は、一瞬でモンスター討伐の冒険者パーティに早変わりをする。


 モンスターの気配を察知したカレンが戦闘態勢でロングソードを構える、ミーシアも警戒態勢だ。

 ボクも本日二度目の登場である『木の棒』を握り締めると、マンクが庇うようにボクの前に立った。


 何よそのカッコいい行動は。


 でも庇うようにボクの前に突き出された腕が、ボクの胸に当たってるんですけど。

 もう一度言いますよ、腕がボクの胸に当たってるんですけど。


 まあ仕方無いか、緊急時の無意識状態だし……ボクの山が高すぎるからこんな事故も起こるのは必然だしね。

 マンクの口がエヘとにやけた。


「わざとでしょ! わざとだね! この状況で信じられません!」

「わざとじゃない! それだけは信じてくれ! 本当に偶然なんだ! 運命のめぐり合わせなんだ!」


 なんのめぐり合わせですか! それになんなんですか、このところずっとこの筋肉のターンじゃないですか、せっかくだからボクは新しく仲間になったミーシアともっと絡みたいのに、どうしてボクの目の前にはいつも筋肉があるんですか。


「ダメだよ! 警戒しないと!」


 マンクをポカポカやってるボクにカレンが注意したその時。


 ボクの真後ろにやんばるトントンが現れた!

 カレンが即座に反応! パーティの先頭から一気にボク達の所に走ってくると。


「スパイクトルネード!」


 風の刃が鼻息を飛ばそうとしたモンスターに瞬時に叩きつけられた!


 モンスターが一瞬で真っ二つになり、地面に転がる。

 間一髪、モンスターを一撃で倒したカレンは仁王立ちで立っていた。


「ご……ごめ」


 ふざけてる状況じゃないんだった、カレンの怒りを鎮めないと!


「お肉ゲットー♪」


 おろおろと身構えたボク達二人を前にして、鼻歌交じりでお肉を解体しだしたカレン。


「二人とも、ふざけちゃダメだよー、メッ!」


 なんとも軽い怒りだが、素直に反省して謝る二人。



「まだいる! 気をつけてみんな! どうやら一体だけじゃないみたい、周囲にもいる!」


 叫んだのは警戒態勢を解かなかったミーシアだ。


 その声に連動してすかさずマンクがボクを庇って身構える。

 またボクの胸に腕が当たってるんだけど、それは置いといても凄いよこの連携は! 歴戦のパーティみたいだ!


 ほへ? と必殺の一撃後にポンコツ化したカレンが台無しにしている感もあるものの、ちょっと感動してしまった。


「ブキー!」


 またもやボクの真後ろに現れたやんばるトントン。


 そうなんだよね、モンスターが現れるのはいつもボクんとこだよね~。


 鼻息で飛ばされながら自分のスキルを再認識だ。このままいつものように木に激突して、ヒットポイントが〝1〟になって……

 と思ったら、飛び込んできたマンクに抱きかかえられた。


「みのりんちゃん大丈夫か! 怪我はないか!」

「あ、ありがとうございます」


 真剣にボクを心配している顔を見て、お礼を言いながらつい赤くなってしまう。

 筋肉に抱き締められながら『ドキッ』っとなってしまった自分が憎い。


 今すぐこの『ドキッ』をボクの胸から取り出して、シュレッダーにかけてしまいたい。粉々に粉砕するのだ。

 それに結局またボクの目の前にあるのは筋肉だよ。


 でもボクの代わりにマンクが木に激突してクッションになってくれたお陰で、ボクのヒットポイントが最大値のままなのだ。

 本当にマンクのお陰で助かった。顔を赤くするサービスくらいあってもいいはずだ。


「あなた達、大丈夫!?」


 すぐにミーシアが駆けつけてくれて、モンスターは一旦離れて距離を置いた。

 今回モンスターは珍しく深追いをしてこない、こちらの人数が多いからか慎重になっているのだろう。


「これは不可抗力だよな、100%抱いてていい状態だよな、怒られないよな」


 マンクはドヤ顔を決めてボクを抱いたまま倒れ込んでいる。


「鼻息荒いです、さすがにこれは感謝しかありません、怒るわけがないです」

「うおおおおお、みのりんちゃんに感謝されたぞ俺ええええ。お尻触っても怒られないよな!」


 それは普通に怒ります。


 興奮したマンクが腕に力を込めてボクを締め上げてきた。


「いだだだだだ、折れる折れる背骨っ背骨がっ」


 嬉しさのあまりマンクがサバ折りし、ボクのヒットポイントは結局〝1〟になったのである。


「あ、しまった」


 しまったじゃありません、か、回復薬を早く。


「待っててくれ、今口移しで飲ませてやるから。木人形で練習したからな、ちううううううう」


 謎の練習の成果なんかどうでもいいですから、普通に飲ませてください! その唇モンスターをお肉の串で縦に縫い付けますよ。


「まったく呆れたわね」


「ほ、ほら、ミーシアが呆れちゃってますよ。いいんですか、今日のマンクはオヤジギャクを連発する変態だとして、ミーシアに本当に石ころとして記憶されますよ」


 まあ、普段のマンクがまともかと聞かれれば、『違う』と被せ気味に即答しますけどね。


「囲まれたわね、まさかこいつらモンスターも連携を取って来るとは思わなかったわ。綺麗な四方向からの挟撃だもの、呆れちゃうわね」


 モンスターの話でしたか。


 本当に呆れた顔のミーシアの声に周りを見回すと、ボクを中心としてパーティは四体の荒ぶる〝やんばるトントン〟に囲まれていた。

 何にも考えて無さそうなその顔。連携じゃなくて偶然じゃないですかね。


 でもまずいぞ、これでは逃げる隙がないじゃないか。


 ボク達はモンスターに完全に囲まれている!


 四体のモンスターはジリジリと包囲の輪を縮めている。

 数でこそ四対四と互角だが、戦力的には月とすっぽんだ。


 すっぽん――食べた事無いけど美味しいんだろうか。


 それはさておき、これどうすればいいんだろう……

 さっきまで呑気なピクニックだったのに、一瞬にしてサバイバル劇になってしまったようだ。


 次回 「モンスターに囲まれました」


 戦える戦力がミーシアだけじゃん!

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