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その5 初の四人パーティで森への冒険


 暫くして森の中を歩く一行があった。

 カレンを先頭にミーシア、ボク、最後尾にマンクの一行だ。


 パーティ契約をするセレモニーも終わり(マンクだけやたら離れていたが)、初めての四人パーティだ。


 いつもの二人パーティより賑やかで、頼もしさも跳ね上がっている。

 前にも後ろにも仲間がいるって、なんて素晴らしいんだ。


 四人は、カレンが串焼き屋台で買ってきてくれた串焼きを食べながら歩いた。

 ボクと一緒に食べようと、待ち合わせ場所に来る途中で買ってくれたのだ。


 セクハラ言葉でカレンから目潰しを食らった屋台の店主が、お詫びにと更にもう二本献上したらしく全部で四本。

 まるで四人のパーティになる事を見越したかのような偶然である。屋台の店主は超能力者だろうか、足を見るオジサンだと思ってた。


「これは我が新パーティのメンバー証、団員一人一人に授けましょう~」


 カレンがとても楽しそうだった、彼女も仲間が増えるのはやはり嬉しいのだろう。そんな彼女を見ているとボクの心も浮かれてくる。


 もちろんカレンはちゃんとマンクにも串焼きを渡していた、彼が女の子に触れないのでボク経由だけど。

 マンクに渡そうとしたら、口をアーンと開けたのでそのまま串を突っ込んであげたら、危うく手ごと食べられる所だった。


 マンクは『俺は殿を務めるぜ!』とかカッコいい事言って最後尾を歩いているけど、女の子に接触する危険が一番少ないからだろう。

 食べ歩きながらマンクに話しかける。


「カレンじゃないけど本当に大丈夫だったの? 今までもの凄く警戒して生きてきたのに、こんな危険を冒すなんてちょっと迂闊じゃないですか」

「みのりんちゃんと一緒のパーティとドレイン回避を天秤に掛けたら、どっちが重要かわかりきってる」


 大真面目な顔で答えるそのモンクを見て、ちょっと顔が赤くなってうつむいてしまった……ちょっとだけ嬉しいけど、うー、自分のこんな反応は求めてないぞ……


「みのりんちゃんパーティも大事だけど、みのりんちゃんパンティーもできたら後で――」

「たー」


 もはや我が守護神となった魔剣『木の棒』をモンクの顔に突き刺した。


「オヤジギャグはもう聞き飽きた! マンクはしばらくオヤジギャグは禁止します!」


「あらあらみのりんに嫌われちゃったんだ~? カワイソカワイソ」


 鼻に棒が刺さったマンクをカレンがからかう。


 串焼きで突き刺さなかった事をありがたく思って欲しい、ボクもそこまで鬼畜じゃない。さっき口に突っ込んだけど、そんな大昔の事は覚えていない。


「違う、これは愛情表現だ。俺にはわかってる、みのりんちゃんは俺にラブラブなんだぜ」

「断じて違います、ラの字もありませんから。何をもってそう感じているのか一回文章にでもしてもらえませんか」


「本一冊書けるぜ」

「ボクはマンクの事なんてどうでもいいと思っていると本三冊書けますけど」

「くうーいいねえツンドラ!」


 どこで覚えたんですかそんな言葉、しかもどこの地域ですか、つっこむのめんどくさいんですけど。

 懲りないマンクに呆れて、鼻から『木の棒』を回収。


「みのりんに連れてきてもらって感謝しなさいよ、だってハーレムじゃん、アンタ一人以外は全員可愛い女の子だよ」

「それは否定しない、確かにみんな可愛い。可愛いと可愛いと可愛いで、可愛いが三倍になった」


 自分で可愛いと言ってしまうカレンも凄いが、憎まれ口を叩かず素直にデレてるマンクもある意味大物だ。

 デレながら女の子を怖がってボクの後ろに隠れなければもっと大物だった。


「一人以外は全員女の子、女の子率が高いパーティは華やかでしょー。違うのが一人ってどんな気分? ねえねえどんな気分?」


 カレンが楽しそうにミーシアとボクの肩を抱いて勝ち誇っている。マンクとカレンは案外仲がいいのかもしれないな。

 ただボクはカレンに肩を抱かれてちょっと死に掛ける。


 だが待って欲しい、実はこのパーティで〝人間の女の子〟なのはカレン一人なのである。

 人間の女の子一人とそれ以外のパーティなのだ、でもそれを言ってしまうと男の娘種族一人とそれ以外でもあるわけで、ちょっと寂しくなるからこの思考はやめよう。


 ピチチチチ♪

 鳥のさえずりを聞きながら森の中の一本道を歩いていく、天気も良くピクニックみたいな気分だ。


 このままどこかでお弁当でも食べられたらいいのにな、これがモンスター討伐の冒険中だという事を、ついつい忘れてしまいがちになる。


 ボクが景色を眺めながら歩いていると、マンクが近寄ってきて小声で話しかけてきた。


「なあみのりんちゃん……ちょっと聞きたいんだが」

「何ですか?」


 マンクはボクの耳元に顔を寄せると。


「スーハースーハー、はあ、いい匂いだなあ」

「鼻の穴に石を詰めますよ、聞きたい事が無いのなら離れてください」


「実は、カフェでみのりんちゃんとあの子に会った時からずうーっと気になってたんだ……カレンが来てから更に聞き辛くなってしまったけど、教えてくれ」


 前を歩くミーシアをちらっと見ているようだ、あの子ってミーシアの事だよね。


 まさか、この人ミーシアの正体に気付いていた!? いやいや、どうせミーシアの連絡先を教えてくれとかでコケさせるお約束なんでしょ、パターンだもんね。


 マンクはこれまでにないくらい真剣な表情でボクに問いかけた。


「俺はいつみのりんちゃんに抱きついたり触ったりすればいいんだ? タイミングを失っブギャ! 頭突きは酷いぞ、あ、でもこれも触った事になるのか。よし、みのりんちゃんのおでこの感触頂きだ、一生おでこは洗わないぜ!」


 覚えていた罪悪感も見事に全部消し飛んだ、次に助け舟を出す時は泥の船にしようと思う。それにしてもこの人の頭は石でできてんのか、いったぁー!


 ボクが涙目で自分のおでこを押さえたその時、小道を行く先頭のカレンが止まった。その横顔は真剣な表情だ。


「警戒! モンちゃんだよ!」


 パーティに緊張が走った! 相変わらずの〝ちゃん〟付けに力は抜けるが。


 なんだか異世界冒険物みたいだ!


 次回 「この連携、冒険者パーティみたい!」


 みのりん、カレンにメッ! される

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