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その2 まさかあなたはボクの……!?


 可愛い笑顔で微笑む少女が目の前にいる。


 見れば彼女は羨ましい事に、なかなかのおっぱいをしているじゃないか。


 顔を避けて彼女の胸を見ていると、なんだろう……この違和感……なんだろう。

 揺れ具合だろうか、傾き具合だろうか、ボクが今まで目に焼き付けてきたソレとは妙に違う何か。


 はっ! と気が付いた。生前クラスメイトの少女達はそうでもなかったが、街を歩く女の人達の中にたまに感じていた違和感だ、これ!


 そうか、この子も実は悩んでたんだ、ボクと同じつるぺた……いやいやロリパ……ちっぱいで悩んでるんだ。


 目の前の少女の顔をまじまじと見てしまった。


 あれれ、そういえば顔を見ても、恥ずかしいけど以前のようにめちゃくちゃ恥ずかしくて直視できない感じではない。

 会話も比較的普通にできるし、これは一体どういう事だろうか。


 もしかしたら普段からカレンや受付のお姉さんと、流れるようにスムーズに会話をしている為に、だんだんと女の子に慣れていってる良い傾向かもしれない。


 毎朝の鏡の前での修行が効果を発揮しだしたのか。


 改めて少女の胸を見る。

 そうか、この子はボクのちっぱい仲間なのだ。


「なんで同情したような目で見るのよ、やめてよ同志を見つけた! みたいな目、そりゃ確かに同志だけれども、その目にちょっと悲哀を感じて失礼しちゃうわ」

「ああ、ごめんなさい、でもボクもそういう格好をしてみたいと思ってしまったのです」


 胸パッドという手があったのか! と目から鱗が落ちた思いのボクは、『ぷんっ』と膨れたミーシアに謝罪する。


「だよね~、やっぱり女の子の格好が一番よね! スカート姿で足をバンって出してさ、私達って町を歩くと女の子に見られるのが快感よね、やっぱり仲間だわ~」

「ミーシアは女の子だから女の子に見られるのは当然じゃないですか」


「え?」

「え?」


「胸の話じゃ」

「違うわよ! 気付いたのかと思ったけど、そうか、そうよね、私のこの姿が完璧だって事よね、えっへん!」


「胸が偽パイだという事は速攻で気がつきましたよ」


 得意げにニセモノの胸を張るミーシアにつっこみを入れる。


「なんなの、その眼力があるんだか無いんだかよくわからない観察力は」

「あっ」


 そこでボクは先ほどの彼女が言った言葉の意味に、ようやく気がついたのだ。


 彼女は確かにボクの事を『仲間』と言った、胸が小さい(う、涙目になる)仲間と思ってたけど違う。


 ……こ、この子まさか……!


 ガタっと立ち上がりミーシアの顔を震えながら見つめるボク。


 仲間って事は……仲間って事は……ボクと同族か。

 そう、ボクは同族に会えたんだ――!


 ボクに尻尾が生えてたらぶんぶん振り回しそうな勢いで聞く、今すぐ彼女に飛びつきたい勢いだ。


「ミーシアはボクと同じ男の娘なんですね!」

「違うわよ」


 あっさり否定された。スっと着席。



「もう、男の娘なんて希少種がこんな端っこの町にポンポコ存在してるわけがないじゃない」


 鈍感なんだから、とミーシアは呆れ顔でボクの耳元に唇を寄せると……


「私は女装子だよ」

 と囁いた。


 その言葉にテーブルの中央に互いに顔を寄せ。


「え?女装子ですか?」(ヒソヒソ)

「うん、女装子」(ヒソヒソ)


 つい彼女に従ってヒソヒソと声のトーンを落としてしまう、この事は誰にも秘密という事かな。


「そうでしたか、ミーシアは女装子という種族でしたか」

「いやいや種族じゃないから、普通に人間の子だから、種族とかワケがわからないから」


 うう、ガラスのハートが軽く傷ついた。


 気を取り直して二人でジュースを飲む。

 メロンソーダの甘さがボクの身体中を駆け抜けていく――


 一瞬で脳がやられて溶けてしまい放心してしまったが、目の前の女の子に気が付いて会話の途中だった事を思い出した。


「仲間っていうのは、もしかして服装の事だったんですか」

「そうよ、女の子として見られるのが大好き!」


 まあ、確かにそういう意味では仲間なのかも知れない。うん確かに仲間だ、ボクは一応女の子なんだけどその気持ちが凄くわかる。


「特に、お姉さんとかお嬢さんとか彼女ーとか呼ばれるとすっごい嬉しいし」


 うんうん、わかります。


「女の子に見られる事に命をかけて、無理なら死を選ぶわよね。女の子に見られないのなら生きている意味が全くないもの、爆発して死ぬわ」


 さっぱりわかりません。


 ポカンと見つめるボクにミーシアは気がつくと、『あなたもわかってくれたようね』と満足そうに頷いた。


 全然わからないんですけど、このポカンとした表情をちゃんと見てください、ほらボクのおでこに虫が止まりましたよ。


「だけど女の子として見られるのはいいんだけど、一つ盲点があるのよね。それは町の男達の目線! 最っ低な目線が多くて困るのよ。スカート姿の生足をじっくりガン見したり、スカートの中を透視するように見てきたり、絶対透視してるわよねあいつら! そういう事無い?」


 ミーシアは世の中のオジサン達のいけない言動について、ボクに懇懇(こんこん)と語った。


「あなたも気をつけないとだめだよ」


 喋りすぎて喉が渇いたのか、ジュースを一口飲むミーシアを見つめながらふむふむと整理する。


 なんというか、顔を見るのが恥ずかしいから胸を見る(ボクはここ)、それも恥ずかしい人が更に視線を落として腰や足を見る、程度にしか考えてなかった。

 なにより男の娘になってから、そんなささやかな視線程度に気を向けるのが馬鹿馬鹿しくなる行動に出てくる連中に、初っ端から出会っているからピンと来ない。


 ボクは、相手によるボクの足をガン見するという行動を、よほど見られているとボク自身が意識しない限り、何してんだこの人、くらいにしか思っていないのだ。


 あの筋肉連中の姿を思い出し背筋を寒くする。

 ボクに抱きつこうとしてくるあの筋肉と筋肉。


 どうしてあいつらはすぐにボクの背骨をへし折ろうとしたり、〝みのりんせんべい〟を生産しようとしてくるのだろうか。


〝みのりんせんべい〟


『ぐう』とお腹が鳴った。


 次回 「皆のフルネームが気になった」


 みのりんの背骨の天敵登場する

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