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その2 近くの村から来た悪い知らせ


 門の内側に集まった町の人たちや冒険者の様子がおかしい……


 そのざわめきは、彼らの中心で放心したように座り込んでいる少女によって起こされているものらしいのだ。


 女の子は保護されている様子なので、集まった皆に危害を加えられている心配は無いが、どことなく近づきがたい雰囲気にボクとカレンは少し離れた所で見ているだけだ。


「どうしたんだろあの子、何かあったのかな……」


「近くの村がモンスターの集団に襲われたらしいのよ。捕まってた女の子が村からここまで必死に逃げて来たみたい」


 カレンの呟きに対して横から説明してくれる声があった、ミーシアだ。


 どこから見ても女の子の容姿で突然現れないでください、か弱いボクの心臓を止める気ですか。声をかける時は十メートル先からが基本です。


「ミーシアこんにちは。集団って群れを成すモンちゃんなの? そいつら何? のっぱらモーモーじゃないよね。ま、まさか……」


 カレンが不安そうに聞くのをミーシアが答える。


「多分そのまさかよ。残念だけどカレン、そいつらは〝みどりのゴブゴブ〟なのよ」

「やっぱり! そんな!」


 驚愕の目をして手で口を押さえるカレンの様子に、ただ事じゃないと感じてボクはミーシアを見た。


 なんだか名前を聞いた感じでは、ブクブクした緑色のヘドロみたいなものを想像する。アメーバとかスライム系統なのかな。


「その〝みどりのゴブゴブ〟って何? 危険なの? へばりついたら取れないとか?」

「ゴブリン型のモンスターよ」


「もうそれゴブリンでいいんじゃないんですかね」

「うん、もうみんなめんどくさいからゴブリンて呼んでるよ」


 補足してくれたのはカレンだ。


「ゴブリンたちは軍隊で動いてるんだ、ゴブゴブの里から出陣しては人の町や村を襲ってまわる」

「そして襲われた町や村はとても悲惨な事になるのよ、捕まった人たちは……ごめん、言えない。それはもう地獄としか言いようが無いわ」


 ズシーンと沈み込んだ表情のカレンとミーシアの説明に悪寒がし始めた。


 ボクがこっちに転生してくる前に見ていたアニメでは、ゴブリンは暴虐の限りを尽くすド鬼畜モンスターだったからだ。

 見終わった後、ベッドの下の隙間からゴブリンが出てきたらどうしようと震えて眠ったのを覚えている。


 隙間を見張るように戦車のプラモを並べて寝たのだ。

 そして朝起きた時に踏ん付けて壊した、ゴブリンめ許さないからな。


「捕まった人たちはどうなるの?」

「ダメだよ、聞かない方がいいよみのりん」


 唇をかみ締めて目を伏せているカレンの姿に、先ほど逃げてきたという村の少女に目を向けた。


 黒髪の両サイドを肩までのツインテールにした村の少女。

 その女の子には緊急に毛布が掛けられていて、毛布から露出している肩には衣服はなく、首にはロープが巻き付いていて足は裸足だった。


 恐らく首輪をされた裸の少女――

 一生懸命逃げてきたのか泥に汚れたその姿は、一層悲惨さを増していた。


 ありえない、ありえない、女の子にこんな仕打ちありえない。


 それじゃあ、お、男の人はどうなるんだろう、トロールは男の人は叩き潰すってモンスターだった。

 じゃゴブリンはどうなの……


 ど、どーせ意味の無い謎の棒をグルグル回させられるとか、砂粒を数えさせられるとか、女の人の肩を揉むとか、そういった奴隷の使役なんでしょ?


 ああ、それはそれで怖すぎる、とても恐ろしい想像をしてしまった。

 そんな労働一分も耐えられない。特に女の人の肩はダメだ。


 これはさすがに興味本位では済まされない、でも村人や女の子が酷い目に遭ったのに冒険者として見過ごせないよ。


 特に女の子へのこの仕打ちはダメだ。

 今までパーティを組んでモンスターを討伐してきた(カレンが)冒険者としては、どうしても聞いておかなければならない。


「教えて欲しい……捕まった人たちは何をされるのカレン」


 ボクの真剣な目で決意を悟ってくれたのかカレンが答えてくれた。


「ゴブリンは女性に執着してるんだ、だからゴブリンに捕まったら――」


 ゴクリ。


 ショックを受けても倒れないように拳に力を入れる。


「可愛い水着を着せられるんだよ」


 ポカーン。


 聞き間違いかな?


 その時どよめきがあったので、先ほどの村の女の子に再び目を向けた。


 立ちあがって歩き始めた時に毛布が落ちてしまい、ピンクの花柄のビキニ姿を披露していた所だった。

 首に巻かれたロープは水着の紐だったのだ。


 硬直したボクにミーシアがおろおろしている。


「ほ、ほら、やっぱり聞かない方が良かったでしょみのりん。そ、そんなに怖がらなくてもいいわよ、殺されるわけじゃないんだから」


「これを怖がってる顔だと思ったら大間違いですよミーシア。ほら、よく見てください、これはジト目というのです」


「へえ、みのりんて意外とこういうの平気なんだ、私なんか恐ろしくて仕方無いんだけど」


 ま、まあ平気かどうかと聞かれたら、女の子の水着姿を見てヒットポイント的なものにダメージを負いましたけどね。


「で、女の人は水着、男の人はどうなるんです?」


「だから、捕まった人たちは老若男女全員が女性用の水着を着せられるんだよみのりん、それもビキニ」


 地獄だった――!


「な、何故そんな事に」


 カレンの言葉にボクはもう半泣きである。


「ゴブリンは無類の女好き、女の子が大好きなんだよ。そして特に水着の女の子に執念を燃やしている」


 ミーシアがカレンに続けてくれた。


「でも種族が違うから、人間の年齢もわからないし、男女の区別なんかつかないのよねあいつら。だから捕まえた人間全員に女性用水着を着せても喜べるのよ」


 お、恐ろしいモンスターだった。

 深夜アニメで見てたゴブリンよりも恐ろしいじゃないか。


 さてはボクに新しいトラウマを植えつける気だな。


 き、聞かなきゃよかった。


 次回 「ギルド会議は踊る」


 ガールズ(のような)パーティまたもや結成なるか

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