第36話 夜と朝の甘い想い
夜の帳が街を覆い、王都の空は深い藍色に染まっていた。
レオニスの部屋のランプは柔らかな光を放ち、壁に影を落としている。
窓の外からは静かな風が吹き込み、木々の葉がかすかに揺れる音が届いた。
リリアーナは少し恥ずかしそうに、でも安心した表情でベッドの端に腰掛けている。
「……レオニス様」
その呼びかけに、レオニスはゆっくり近づき、彼女の手をそっと取った。
「……リリアーナ」
手のひらに触れた温もりだけで、胸が高鳴る。
唇を重ねるまでに、二人の視線は何度も交わる。
互いの呼吸が少しずつ乱れ、指先は自然と絡み合った。
唇が重なり、柔らかく深いキスが始まる。
初めてのキスよりも、確かな想いの込もった、温かく濃密な時間。
レオニスはリリアーナの頬や髪に軽く触れながら、愛おしそうに視線を落とす。
「……ずっと……君のそばにいたい」
「私も……ずっと、レオニス様と一緒に……」
言葉を囁き合うたび、胸の奥が締めつけられる。
身体の距離は少しずつ近づき、互いの体温を感じながら、夜は二人だけの時間で満たされていった。
レオニスは無意識にリリアーナを抱き寄せ、額に、唇に、小さなキスを落とす。
その度に彼女は小さく息を漏らし、頬を赤く染めた。
夜が深まるにつれ、疲れと眠気が二人を包む。
毛布にくるまるリリアーナの体をそっと抱きしめ、レオニスも目を閉じた。
その胸の奥には、ただ彼女を守りたい、そばにいたいという想いだけがあった。
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朝。柔らかな光がカーテン越しに差し込み、部屋を温かく照らす。
リリアーナはまだ半分眠ったまま、隣で寝ているレオニスをぼんやりと見つめた。
「……おはようございます、レオニス様……」
その声に、レオニスはゆっくり目を開き、微笑む。
「おはよう、リリアーナ」
彼はそのまま手を伸ばし、彼女の髪を軽く撫で、唇を重ねる。
昨夜の余韻が残る、優しく甘い朝のキス。
互いの呼吸が交わり、体の距離はまだ離れられない。
リリアーナの頬が赤く染まり、少し恥ずかしそうに視線を逸らす。
「……レオニス様、そんなに……」
「……ずっと、そばにいたいから」
レオニスは真剣な瞳でリリアーナを見つめ、彼女の手を握りしめた。
二人の間に、何の邪魔も入り込めない甘く濃密な時間が流れる。
朝の光の中で互いを確かめ合い、微笑みを交わし、再び唇を重ねる。
小さな吐息、鼓動、指先の温もり――全てが愛の証のように感じられた。
「……リリアーナ、これからも、ずっと……」
「はい、レオニス様……ずっと一緒に……」
朝の光に包まれながら、二人は互いの心と体で愛を確かめ合った。
その幸福感は、今までの時間のすれ違いや不安をすべて超えて、確かなものになっていた。




