28 成長報告③
一年後。十七歳になったユーグは約束通り、フードを被ったままのオフェリアをすぐに見つけ出した。
遠くから来るのが見え、オフェリアから声をかけようとする前から気付いていたようで、ユーグの視線は真っすぐ彼女に伸びていた。
『フードを被っていても、たとえ見慣れない新しいローブ姿でも、僕はすぐにお師匠様を見つけられる自信があります』
昨年の言葉が証明された瞬間だった。
「お久しぶりです、お師匠様。新しいローブも素敵ですね」
正面の椅子に座ったユーグは、眩いものを見るかのような視線をオフェリアに向けた。
ユーグの方が眩しい笑顔なのに本人は気付いていないのかしら、とオフェリアは軽く目を見張った。
座っていても、ユーグの身長がさらに伸びたのが分かる。顔立ちは精悍さが増しているのに、笑みはとても柔らかくて甘みがある。
開口一番にレディの装いを褒めたこともあげれば、恋人にしたい男ナンバーワンに選出されても良いくらいの満点行動。
ユーグは百歳以上離れた弟子なので、オフェリアの頭には「良い男に育てられた私えらい」という感想が浮かんだ。ニヤリとした笑みを浮かべて、出迎えた。
「ありがとう。上手いことが言えるようになって、さぞかしモテるでしょう?」
学園生活は青春の場でもある。恋のひとつくらいしていても不思議ではない。冷やかし気分で試しに聞いてみる。
すると、メニュー表を広げていたユーグは片眉をあげた。
「モテるというようなことは今のところありませんが……その口振り、お師匠様から見て僕は良い男になってきたと捉えても?」
「当たり前じゃない。世の中には危険な香りがする人や俺様がタイプの子もいるだろうけど、たいていはユーグのような優しい雰囲気の人が良いんじゃないかしら」
「……ちなみに、お師匠様はどちらがタイプなんですか?」
「もちろん優しそうなタイプよ! 落ち着きや余裕感があるとポイントが高いと思うわ。まぁ、そんな素敵な人はなかなか世の中にいないのが現実だけどね~完璧に揃っている人で知っているとしたら、ウォーレス師匠くらいね」
オフェリアがそう言うと、ユーグは複雑そうな顔をした。その顔を見て。すぐにユーグが何を考えたか分かった。
くすくすと笑いながらオフェリアは応える。
「ウォーレス師匠に恋なんてしていないからね。奥様が師匠に愛されているのが、弟子たちの目から見ても分かるほどだったの。ウォーレス師匠の愛情表現に困りながらも、とても幸せそうな奥様に憧れただけで、師匠に対しては魔術師としての尊敬の気持ちしか持っていないわ」
「お師匠様にとって、理想の夫婦だったのですね」
「そうね。私だけでなく、他の弟子も憧れるような素敵な相思相愛の夫婦だったわ」
「なるほど。参考にします」
やけに神妙な顔、あるいは決意したような表情をしながらメニュー表を置いたユーグは、店員にカフェオレを注文した。
いつも大好きなココアを頼んでいたのに、コーヒー類を飲むようになったらしい。
小さな好みの変化に、弟子が大人になっていることをオフェリアは感じた。





