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月の触手は健全に遊びたい 〜魂の姿がアバターに表れるVRゲーム──え、私の魂って触手の化け物なの?〜  作者: にゃー
第二章 灯る信仰

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白昼の月 2


 ……なんて、強気になってはみたものの。

 当然のことながら、この快晴の昼下がりにあって太陽の擬似天使は途轍もない力を見せつけてきた。


「──ッ! ハッ! オラァッ!!」


 出会った日の最初の戦いでは、私が密着して有利な距離で戦っていたけど……今回はまったくの逆。プロミナさんのほうが自身に有利な位置取りを維持しつつ、絶えず近距離戦を仕掛けてきている。 

 『点火加速(イグニッション)』は出力・精度ともに上昇しているようで、これまで以上に緩急の激しいステップで常にこちらの触手()を逃れ、あるいは攻め入ってくる。ハイテンションな声と合わさって、まるで激しく踊っているかのよう。

 『陽光焔刃(エンジェルラダー)』はより激しく燃え盛り、攻撃力の上昇はもとより刀身形状の変化が以前よりも著しい。リーチをまったく見切れない。開戦わずかですでに数本、触手を焼き切られた。


 『点火加速(イグニッション)』も『陽光焔刃(エンジェルラダー)』も、一度ならず見たはずの『陽焔魔術』たちに対応しきれない。そもそもこの感じだと、各素養の数値自体が上昇してる可能性すらあるか。『暴く月導』は使えないから確かめようがないけど。


 しかもなにが恐ろしいって、これだけ激しく精密に二つの魔術を使いながら彼女、同時にもう一つなにかの準備をしているっぽいのだ。『点火天翼エリアルイグニッション』とも違う、まだ私が見たことのないなにかを。


「アァーッ楽しいィッ……! ……けど、これあたしが有利盤面でイキってるだけにも見えるんじゃ……」


 まあ全部口に出てるのは相変わらずだけど。いや、見えるってか実際その通りなんだけど。戦いってそういうもんだし別にいいんじゃない? とは思う。自分にあるもの、自分に有利な状況は使えるだけ使う。それって当たり前のことでしょ。だから私は今まで、昼間に戦おうとしなかったわけで。


「……ま、いっかァ!」


 プロミナさん自身も、さらに一本触手を切り落とせたことに気を良くして、葛藤なんてすぐに放り捨ててしまった。うんうん、そっちのほうがらしいと思う……なんてェ、理解者面してる場合じゃないんですけどもねぇこっちはァ! 昼間なので当然! 切られた触手は復元しませェーんっ!!


「ょおいしょォ!!」


 左上からの袈裟斬り、わっかりやすい軌道のそれは、焔剣の性質と振りの速さのせいで避けきることができない。触手を数本炙られ、返す刀の逆袈裟でまた一本持っていかれっ、だけどもそれで下半身が空いたプロミナさんへ、地を這う触手タックル──ぎぃいいいいっバックステップ『点火加速(イグニッション)』で躱されてェ! かと思えば再点火で再接近されていくゥッ! こっちの脳天(どこ?)を狙って突き下ろされる刃先をォどうにかこうにか転げて逃れ痛ぇっ! 蹴るな! いたいけな触手を! 足蹴にすな! んで蹴り飛ばしたそばから加速で寄って追撃すなっ! サッカーは個人競技じゃねぇチームでやるもんだろうが! 今はだれもサッカーの話なんてしてないが!?!?


「──さて、と。悪いけどっ、今回は確実に勝たせてもらうわっ!」


 あーちくしょうっ、こっちが生き延びるのに精一杯なうちに、向こうさんなにかしらの準備が整っちゃったっぽい。

 焔剣での攻撃は止まらないまま、燃え爆ぜる音に高らかな宣言が重なる。


 

「『陽焔反応(プロミナリアクター)──焔輪洞観(ブラックスポット)』ォッ!!」


 

 唾も飛びそうなほど勢い付いた詠唱。それと同時、プロミナさんの頭上に浮かんでいた炎の光輪が一回りほど大きくなった。燃え盛る勢いもますます激しく、けれどもその魔術の本質があるのは──輪の中心の穴っ!


「この魔術はあんたの全てを暴くっ! よく言うでしょっ、お天道様が見てるってねェッ!!」


 攻撃能力なんかはない、言ってしまえばただの看破系の技だというのは分かる。ただその出力が、マジで意味分からんくらい高いっ……!

 まるで光輪の中心に不可視の目があって、それがこちらをじっと視ているような。そんなゾワゾワとした感覚に襲われる。本能的に、これは防げないと理解(わか)らされる。

 

二戦目(このまえ)みたいに隠し玉があっちゃマズいからねェッ!」


 この前っ? ああ二戦目かっ、そうあの時は『点火天翼エリアルイグニッション』で突っ込んできたプロミナさんを、『収斂月光波』で撃ち落としたんだっけぇ? 隠し玉ってほどでもない、レーザーは顕界度Ⅱじゃないと撃てないだなんて、私は一言も言ってないってだけの話。もちろん威力は落ちるけども。

 しかしまあ、それで負けたプロミナさんが私の全てを覗き見ようと考えることそれ自体は、なにも不思議な話じゃないっ、かっ、くそっまた一本切り落とされたっ! 体力もう半分くらいしかないんですけど!


「ハァ? なに『月影の秘匿』ゥ?? そんなもんで、このあたしの目を遮れるかってのォッ!!」


 口も手も止まらないプロミナさんの猛攻を捌くだけで、今の私は触手()いっぱいだ。不可視の看破魔術になんて対応できるはずもない。

 暴かれていく。私のステータスが。隠されていたものが。『月影の秘匿』ですら抗えないほどに。それを肌身に感じ、バクバクと魂が早鐘を打つ。

 これはかなりヤバいっ。絶対ヤバいッ! 超ヤバいッ……!!


「ほらほらすぐよっ! もうすぐよッ! あんたのナカのナカまで、あたしが全部ほじくり返してあげるわッ!!」


 この上なくいやらし、もとい楽しそうなプロミナさんの叫び。焔の剣閃。転げて躱して、そしてそののち、ついに破られる。


「──あっはァ! ハイ丸裸ァッ!!」



[月の触手 戴冠者:『ノクトの森』の主 ルミナ]

 身体素養:112

 技量素養:127

 『月光』:191 顕界度Ⅰ(開示状態)


 『月光の化身』

 全ての魔術素養が永続的に失われる

 全ての魔力が永続的に失われる

 『月光』を得る


 『月影の秘匿』

 暴かれぬ限り、月光は秘匿され続ける


 『暴く月導』

 月光とはそれそのものが神秘であり、そして同時、秘されたものを暴く導べでもある


 『月光波』

 『月光』の、その僅か一片が漏れ出た光波


 『収斂月光波』

 一筋へと収束させた『月光波』

 月明かりとは元来、逃れ得ぬものであるからして



 私のステータスが露わになる。今までは私自身にも見えていなかった『月光』の実数値すらも。どこか、“ようやく判明した”という気持ちがあった。魂はなおもドクドクと脈打ち、震えてすらいる。


 プロミナさんも興奮気味に、すこぶる美味しそうに、私の情報を味わっている様子。


「イヤイヤ191って……魔術素養互換ならとんだ化け物じゃな、い──」


 いや、あれ? 不意にその声が途切れた。

 あるいは、脳内に響いた無機質なアナウンスがそれを上塗りした。


 

[秘匿が暴かれました。顕界度が二段階上昇します]


 

 情報が塗り替わっていく。いや、開示されていく。

 『月光』が。私の(うち)にあるものが。



[月の触手 戴冠者:『ノクトの森』の主 ルミナ]

 身体素養:112

 技量素養:127

 『月光』:764 顕界度Ⅲ(開示状態)


 『月光の化身』

 全ての魔術素養が永続的に失われる

 全ての魔力が永続的に失われる

 『月光』を得る

 月は常にそこに在る、昼もなく夜もなく

 なればこそ、『月光』もまた変わりなく

 月の形姿、光の形姿、その目に見えるか見えないか

 あるいは、見せるか見せないか

 秘匿とは、つまりそれは隠し布のようなもの

 互いのための、目に見えぬ目隠しのようなもの

 秘匿を暴くとは、月明かりをより強く浴びるということ

 であるならば当然、ただ数値が明らかになるってだけじゃ済まないわけで

 ぇあー、つまりなんだ──


 

 ──だからヤバいって言ったじゃんよ……♡


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― 新着の感想 ―
そうだよなぁ、化身なんだから天使とかいう代行者でしかないやつが勝てるかって言われたら無理よなぁ... うん?月?触手...化身....ブラッ〇ボーン?
あーあ、天使ちゃん、やっちゃったね…… 秘匿されているものを無遠慮に暴いたら、そりゃ待っているのはお仕置きなのだよ……(笑)
なんだこのお茶目なフレーバー!?
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