第四話 隠蔽してみたものの……
第四話 隠蔽してみたものの……
そして迎えた鑑定の日、私の結果を見たお父様は狂喜乱舞した。
「凄いぞセア。
わずか5歳で特殊魔法の熟練度99とは!
若干貴族の令嬢としてはいかがなものかと思うスキルも熟練度が高いようだが……
まあ、それは置いておこう。
これなら、国立魔法研究所に入所することも可能だ。
いっそ学園を飛び級して明日にでも研究所の門を叩くか」
失敗した。
元のステータスが高すぎて熟練度99は普通だと思い込んでいた。
5歳児に熟練度99はないなと冷静に考えればわかる。
そうしてみると、今世で培った木登りの熟練度99は、如何に私が野生化していたかを如実に物語っていることになる。
まあ、木登りのスキルはこの際置いておこう。
問題はお父様の喜びようのすさまじさだ。
確かに、国立の魔法研究所はエリートの就職先として認知されている。
魔法で立身出世を目論む者にとっての憧れの職場だ。
お父様は昔この研究所を目指した時期もあったらしく、娘の私の可能性に大いに喜んでいるわけだ。
しかし、国に縛られるのは私の本意ではない。
私は自由を愛する5歳児だ。
自分の将来を5歳の今から決めてしまうのは早すぎると思う。
そういうわけでお父様には悪いけど、魔法研究所の入所をあきらめてもらおうと口を開きかけたところで、お父様は盛大に後ろ頭をはたかれて、前につんのめった。
「何をとち狂っているのですか。
学園に入学すらしていない娘をいきなり魔法研究所に入れようとするなどめちゃくちゃです。
ここはセアに分別が付くようになってから自分で選ばせるべきでしょう」
救いの主はお母様だった。ありがとうお母様。心の中で感謝の言葉を捧げていると、お母様が私と目の高さを合わせて話しかけてきた。
「そうはいってもセア、あなたの魔法の才を鍛えないという手はありません。学園に入学するまでの1年間、魔法の勉強を私自ら教えましょう。
それに、これ以上木登りのスキルの熟練度が上がると嫁入り先が危ないので、当面木登りは禁止です」
救世主だったお母様は地獄の使者に早変わりした。今世の私から木登りを取り上げるなど、とんでもない鬼畜の所業だ。
私は抗議の声を上げほっぺたを膨らませたが、お母様から、
「貴族の令嬢として失格ですよ、その表情は」と膨らんだほっぺたを指でつつかれた。




