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第十三話 よせばいいのに試した結果

第十三話 よせばいいのに試した結果


 私は巨大化しつつある雷玉に新型ブラックホール魔法をかける。


 ジジジと放電している雷玉が徐々にその色を黄金から赤色に変え、直径5センチほどで生長を止めた。

 大きさの制御に成功した。大成功である。


 私はゆっくりと赤くなった雷玉をまとへ移動させる。


「おい、何だあの雷玉は……、色が変じゃないか……」

「ああ、それになんだか雷玉の周辺の景色がゆがんで見えないか……」

 魔法の制御に集中している私は、周囲のざわつきに気がつかない。


 そして、いよいよまとに接触する瞬間……

「セア、行きます!」

 私はかけ声とともに縮小魔法を解除し雷玉を的にぶつけた。


 ドンガラガッシャーーーーン


 鼓膜が破れそうな轟音とともに的が消し飛び、地面から天空へ向けて空高く稲光が発生した。練習会場である武道場の屋根に大穴が空き、晴れ渡った空がまぶしい。

 周囲は静寂に包まれる。

 というか、あまりの轟音に全員一時的に音が聞こえなくなったようだ。


 そして数秒後、武道場の空いた穴からさし混んでいた光が陰り、なんだか巨大な物体が落下してきた。


 ドドーーン


 聞こえにくくなった耳にも届く轟音と震動……


 黒焦げになった爬虫類らしき巨大物……

 なんだか長い首が三つもついている。


 後で分かったことだが、偶然にも上空を飛行していた災害級の三つ首竜が私の雷玉の放電を浴びてこんがり焼けた姿であった。


 この日は、この授業で学校全体が休校となった。校舎の破損もさることながら災害級の竜が出たことが問題視されたのだ。

 決して私のせいではない……。



 翌日、再開された授業で、あの自信にあふれていた宮廷魔法師団長長男のアブドル・アブラハム侯爵子息の姿は変わり果てていた。

 うつむいて机に向かってブツブツ言ったり、机の木目を指でなぞって「の」の字を書いたり、将に半病人である。


 彼の自信の源であった魔法の腕前を私が完膚なきまでに凌駕して見せたのが原因であることは明白だ。

 悪いことをした。

 次はもっと気をつけて手加減するので勘弁してほしいと心の中で謝っておいた。


 後日、学校に復帰したアイリス嬢が宮廷魔法師団長長男のアブドル・アブラハム侯爵子息の姿を見て、

「どうなっているのよ。私の押したちがどいつもこいつも腑抜けてしまっているじゃない。

 ここは乙女ゲーム「真の聖女の成り上がり」の世界じゃないというの」

 とブツブツ言っていたが、私は聞かないふりをした。







次話は明朝投稿予定です。

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