第十話 ヒロイン惨状
第十話 ヒロイン惨状
高等部の入学式の日、遅刻寸前になったアイリス嬢は淑女としては失格の全力疾走で入学式会場の大講堂へと突入し、見事に王太子殿下とぶつかった。
なぜ私がこのことを知っているかというと、アイリス嬢以上に遅くなった私は彼女の遙か後方から彼女を追走する形で講堂へと向かい、彼女が王太子殿下とぶつかった直後に後ろからお二人にぶつかり、二人をステージ上まで弾き飛ばしてしまったからだ。
私は万一に備え、特殊魔法の隠密と隠遁を使用して走っていたため、二人はアイリス嬢の勢いよいタックルで王太子殿下と二人まとめて吹き飛んだように見えたことだろう。私の存在は認識されていない。
私としては自らが目立たなかったので一安心だが、この事故で、入学式がめちゃくちゃとなったことは言うまでもない。
新入生代表挨拶を担当する予定だった王太子殿下は大けがをし、アイリス嬢共々全治3ヶ月となって、一学期も終わりかけた7月の中旬にやっと初登校を達成したのだ。
事故の責任問題はというと、アイリス嬢が入り口に走り込むのを止めなかったと言うことで、入り口での受付と新入生の誘導を担当していた二人の学園教師が懲戒処分となった。
特に、誘導を担当していたリュート先生は懲戒解雇となり、無駄にイケメンで新入生の女子の話題をかっさらっていただけに、とても残念がられた。
「おかしいわ。こんなはずではなかったのに。でも、結果として王太子殿下と縁は出来たけど、3番押しのリュート先生は首になっているし……」
隣の席では、3ヶ月遅れで登校してきたアイリス嬢が意味不明の独り言を呟いていたが聞こえないふりをしてスルーしている。
しかし、よく考えてみると学園に波乱を呼んだのはアイリス嬢だと言っていいのだろうか……
もしかして私……
サブタイトルの「惨状」は「参上」と掛けてみました




