第15話 「ついに動く黒い影…変態危うし 後編」
*この作品には…過度な飲酒描写と喫煙描写が含まれていますので、
苦手な方は ブラウザバックして下さい(震え声)作品中の行為や行動について
よい子の成年は絶対真似しないでください(注意喚起感)
なお、お酒とたばこは20歳になってから…容量・用法を守って
正しく摂取してください(未成年への注意喚起感)
──アリセリア港町。
異国の風と潮の香りが入り混じる、美しき交易の要所。
石畳の道、風にたなびく帆布、活気ある市場──旅人と商人が行き交う賑やかな街であった。
しかしその日──
「──変態だーッ!!」
「なんかすっごいミニスカートの男の人が歩いてるぅうう!!」
「網タイツ!?あれ網タイツ!?昼間から堂々と!?」
──街に悲鳴(?)が響いた。
ロイド「ちょっと待て!!俺は変態じゃねぇ!!これは……勇者の……衣装で……って通じるかぁ!!」
スカートを押さえながら必死に否定するも、
ヒールをコツコツ鳴らして歩く星柄パンティの男に、町人たちの視線は釘付けだった。
子供「ママ、あれなにー?」
母親「目を合わせちゃダメよ!」
老人「わしの若い頃のパンティじゃ……(遠い目)」
ロイド「おじいちゃん!?記憶混ざってません!?!?」
そんな騒ぎの中、仲間たちは一切動じない。
コト「ロイド殿、スカートの舞い方が潮風と相性抜群でござるな~」
マリス「今日のパフォーマンスは92点ってとこだな。観客の反応も上々」
リリィ「パンティ露出度、地上にしては良い条件でしたわ」
リー・アル「さて、今回の“目的地”は何が有名アルか♪」
そう言って、ガイドブックを取り出したリー・アルがパラパラとページをめくる。
リー・アル「アリセリアの名物、**“港町七湯”**アル。
なかでも、“湯煙桟橋”は名湯ランキング4年連続No.1の実績あり。旅人歓迎、食事付き、露天完備」
ロイド「温泉!?そこ行こう!もう何も考えず風呂入ってリセットしたい!!」
──ということで、その日のうちに向かった温泉宿「湯煙桟橋」。
海の見える高台にある老舗宿は、風情と湯煙に包まれ、極上の癒やしを提供する名湯だった。
女将「ようこそ、ようこそ。混浴もありますが、もちろん男女別もございますよぉ~」
ロイド「別で!!お願いします!混浴は本気でこの物語の描写的にアウトな気がする!!」
コト「拙者、温泉にどぶろく持ち込めるか聞いてみるでござる」
マリス「湯船でトランプ浮かべて遊べないかなぁ」
リリィ「タバコ、風呂場用防水カートンありますかしら?」
ロイド「お願いだから!”普通”に風呂入ろう!?ねぇ!?」
──夜。
港町アリセリアの高台に佇む温泉宿「湯煙桟橋」。
旅人たちの疲れを癒す、満天の星空と潮風の露天風呂にて──
変…勇者一行の女性(?)メンバーたちは、たっぷりと湯けむりに包まれていた。
コトの場合
月明かりの下、湯にゆったりと浸かるコトの肌が、湯気でうっすらと紅潮している。
さらりとまとめた髪が肩に落ち、しっとりとした頬には酔いの気配。
胸元は控えめでも過不足のない、ほどよいサイズの胸が湯に揺れ、どこか安心感すら漂う。
「ふぃぃ……おいら、やっぱり温泉はどぶろくと一緒に限るでござるな……」
片手に一升瓶、もう片手はおぼれかけた酒盃の救助に必死。
セクシーなのか、ただのダメ大人なのか判別に困る艶感がそこにあった。
リリィの場合
湯船の端、岩に背を預けて静かに肩を出すリリィ。
濡れた銀髪が湯に溶けるように垂れ、彼女の胸元は水面に触れるだけで波紋を広げる。
その胸は豊かすぎるほどに豊か──まごうことなき巨乳である。
「……この一服のために、生きている気がしますの……」
神秘的な微笑みを浮かべながら、五本目のタバコに火をつけ、湯煙と煙草の煙を混ぜて漂わせる。
その姿は、まさに“煙に溶け込む女神”といった風情だった。
マリスの場合
「さーて、混浴って言われたからにはサービスしないといけないよな~!」
マリスはというと、なぜか湯船の中でトランプ片手に水上セクシーポージング大会を開催していた。
ツンと反った胸元は、平坦というにはやや丸みがあるが──
他二人と比べると圧倒的に……貧乳。
それでも当人に全く気にする様子はなく、むしろ自信満々に湯を切る動きで全身をアピールしていた。
「ほら、♣クイーンが出たってことは“色気MAX”だぜ?」
湯面に浮かぶトランプを片手で回しながら、真剣な眼差しでキメポーズ。
ポージングの合間に湯しぶきで足を滑らせ、見事に岩へ尻餅をついた。
「イッタァァ!湯の女神、オレに厳しすぎじゃね!?」
──こうして夜の湯船には、
それぞれ違うタイプの「色気(あるいは錯覚)」が、湯けむりに混じって漂っていた。
豊満、ほどよい、平坦──だが、どれもこの旅には欠かせない魅力である。
(そしてその頃、男湯ではロイドが──想定外の誘惑に直面していた)
波音と湯けむりが響く石造りの露天風呂。
やっと静かにリラックス──……できるはずだった。
ロイド「……やっと風呂……今日だけで俺、羞恥で寿命5年縮んだ……」
そう呟きながら湯船に浸かるも──
ロイドは依然として、スカート・星柄パンティ・ヒールという「変態勇者」スタイルを崩していなかった。
ロイド「……はぁ。なんで俺、服脱げないんだよ……風呂なのに…あと…」
ロイドは隣にぴったりくっついていたリー・アルをみつめた…
ロイド「あの…君、妖精だけど…一応”女性”だよね?」
リー・アルは即座に笑顔で返す。
リー・アル「それは“簡単勇者ブレスレット”の効果で、シャッチョサンから半径1メートル以上離れられないアル。
だから付いてきたアル♪合法ストーカー状態アル♪」
ロイド「はぁ…じゃあ…その件はあきらめよう…でも、なんで俺、裸じゃなくてこの恰好のままなの!?!?」
リー・アル「中年の裸に需要はないからアル♪」
ロイド「やめろぉぉぉぉぉぉぉッ!?!?!?メタすぎるだろそれぇぇぇぇ!!??」
リー・アル「読者も作者も、たぶん全会一致アル♪」
ロイド「傷つくぅぅぅ!…まぁ…否定はしないが」
その時──
「ねぇ、アンタ♡ 初めて見る顔ね……ふふ、タイプかも♡」
ズゥンッと背後から重い声色が響く。
振り返るとそこには、ムッキムキのおにいさんが光沢のある肌をきらめかせて佇んでいた。
腕は太ももより太く、胸板はまるで岩。
だがその表情は、うっとりと甘く……危険な気配しかない。
お兄さん「そのスカート……すっごく……似合ってるわよ。かわいい♡ 今晩、一緒にどう♡?」
ロイド「だあああああああああああああああああああ!?!?!?!?」
慌てて湯船から滑り上がりかけるロイド。
だが、ヒールはツルツル滑り、スカートは湯に濡れて張り付き、動きが鈍る。
お兄さん「逃げないでぇ♡ そんなに恥ずかしがらなくていいのよ……あなたのパンティ、私だけに見せて♡」
ロイド「そのセリフ魔王より破壊力あるってばぁぁぁぁ!!!」
男性が好きなお兄さんとの新たな出会い…果たしてロイドは自分の”勇者”を守ることができるのか!?次回へ続く(続かない)
港町アリセリアに夜の帳が降りる頃。
温泉宿「湯煙桟橋」には、旅人たちの話し声と湯の音が静かに混じり合っていた。
脱衣所の奥、浴場からロイドが全力疾走で駆け込んでくる。
ロイド「ぜぇっ……ぜぇっ……ま、間一髪だった……っ!!」
背後には誰もいない。だが、彼の肩には湯ではなく恐怖の汗が流れていた。
ロイド「おかま……いや、あのお兄さん……。なんで俺の星柄パンティにプロポーズしてくるんだよぉぉ……」
ヒールのまま走ったせいで足をくじきかけ、スカートは片側だけ濡れてめくれ、
それでもなんとか逃げ切ったのだった。
脱衣所の隅にいたリー・アルは、何事もなかったかのように記録を続けていた。
リー・アル「シャッチョサン、今夜の逃走成功率:奇跡の12%達成アル。お疲れさまアル」
ロイド「それ、最初から俺が捕まる前提だったろ!?!?」
ヒールを脱いでタオルを巻いたロイドは、ぜいぜいと肩で息をしながらも
とにかく浴場から脱出できたことに命の安堵を感じていた。
ロビーに集まるロイドたち一行。
「湯煙桟橋」の広々とした休憩処では、湯上がりの旅人たちが畳の上でくつろぎ、冷たい飲み物や軽食を楽しんでいた。
その一角。
例によってロイド一行は、全員バラバラの方向に自由すぎるくつろぎ方をしていた。
リリィは浴衣姿で長椅子に腰掛け、タオルを頭に巻いたままタバコに火をつけていた。
その隣には“湯あがりレモン炭酸”と、なぜか“湯あがり六本目のタバコ”。
「ぷはぁっ……っげふっ」
思わず出た豪快なげっぷ。
隣の観光客のカップルがぎょっとして席をずらす。
さらに──
彼女は6本目のタバコに火をつけ、空中に煙をくゆらせながら恍惚の表情。
煙は湯上がりでリラックスしていた家族連れのテーブルに流れ込み、
幼児が「けほっ」と咳き込む始末。
母親「ちょっ、煙……!ちょっと、お風呂上がりなんですけど……!」
リリィ「申し訳ありませんわ。……でも、湯上がりの祈り(一服)は神への祈りなので……」
観光客「祈りが一服ってどんな神だよ!」
コトは小さなちゃぶ台でどぶろくをちびちびとやりながら、ほかほかの温泉饅頭をひと口。
「かぁぁ!うめぇぇぇぇ!!」と奇声を上げながら3杯目に突入。
隣にいた老夫婦がギョッとして目を合わせ、席を立つ。
老人「最近の若いもんは……風呂のあとに騒ぎおって……」
老婆「でも乳白色の酒って体に良さそうねぇ……」
マリスは卓上で「トランプタワー湯けむりver.」と称して
3卓分の座布団とテーブルを勝手に使い、派手にタワー建築を開始。
周囲の席を無言で押しのけたせいで、3人組の旅芸人が立ち尽くす。
芸人A「え、ここ予約してたんだけど……」
マリス「“勝負に予約はない”。これ、”俺のルール”だから」
芸人B「意味わかんねぇよ!」
そして、壁際の柱に寄りかかっていたリー・アルは、すでに端末を操作していた。
リー・アル「シャッチョサン、温泉脱出時のダメージログと心拍変動記録、送信完了アル。ついでに“逃走成功率記念スタンプ”発行したアル」
ロイド「何その記念!?欲しくねぇよ!!てかそんな情報必要!?」
ロイド「てけ…!お前ら!なんで風呂上がりで村八分状態になってんだよぉぉぉ!!?」
これまでの奇行により、旅行者たちから白い目で見られている しかしその状況で、誰も反省する気配はなかった。
コト「……旅とは自由なものだぜぇ……」
マリス「混浴は戦場、ロビーは遊戯場」
リリィ「タバコは……湯上がりの詩ですわ」
ロイド「なんだよ!このパーティ!?!」
──そんな中。
港町の静かな夜を破るように、“それ”はすぐ近くまで迫っていた。
風呂上がりに各々好き勝手にくつろいでいたロイドたちは、
突如現れた黒衣の美しい女性に視線を奪われる。
その後ろには、冷ややかな目をした銀髪の男──側近クロノの姿。
ロイド「……誰、あの美人」
コト「え、知り合い?じゃないでござるか?でも…どぶろく配達の人じゃないでござるよな……?」
リリィ「見た感じ“女王様”っぽいけど……いや、明らかにこの宿に似合わない格の高さですわね……」
マリス「ロビーでイベント発生だな、これ。絶対フラグ立ってる」
ロイド「なぁ誰だよほんとに!?見たことないぞ!?」
そんな彼らの前に、ひとり進み出たのは──クロノ。
クロノ「……貴様らが、噂の変態──いや、“星空のスカート魔法使い一行”か」
ロイド「いや、“スカート魔法使い”って呼び方やめて!?バレてるの!?」
クロノはちらりと後ろを振り返り、魔王様に一礼。
クロノ「魔王様。確認しました。
あちらにいるのが……スカート・ヒール・網タイツ・星柄パンティ装備の変態勇者、ロイドです」
魔王「……ふふ。可愛らしいじゃない」
ロイド「おまっ、誰なんだよほんとに!!??なんで俺の装備まで把握してんの!?」
マリス「え、え、ちょっと待って。魔王様って言った?今、言った?」
リリィ「え、あの美人が魔王? 嘘でしょ。もっとこう……禍々しいゴリラ的な存在かと……」
コト「拙者も“魔王”といえば岩の間から出てきそうなイメージしかなかったでござるが……」
ロイド「美しさと恐怖が同居してる……この人、本当に魔王なのか……!?」
クロノ「疑うなら力で証明しよう。
我が魔王様の手を煩わせるまでもない──この私が、相手になる」
クロノが一歩、足を踏み出すと同時に、床の木目がピシリと鳴る。
次の瞬間には、黒い魔力が彼の周囲を覆い──その腕に魔剣が現れる。
ロイド「いやいや!いきなり実力行使!?ちょっと風呂上がりなんですけどこっち!」
コト「湯冷めする前に、殺されそうでござる……!」
リリィ「ならば……」
リリィがタバコに火をつける。コトはどぶろくの瓶を開け、マリスはトランプを構えた。
ロイド「うわぁもう!はいはい、結局こうなるよな!!」
クロノ「構えろ。“変態勇者”……この名がただの汚名か、それとも真の称号か……今、確かめる!」
──次の瞬間、クロノの影がロイドたちへ疾駆する。
魔王様はロビーの柱にもたれ、微笑みながらその様子を見守っていた。
魔王「……いいわ。もっと見せて、私の変態勇者さん♡」
「湯煙桟橋」のロビーに、静かに漂う殺気。
だが、その空気を破ったのは──魔王の、穏やかすぎるひとことだった。
魔王「ここ、素敵な宿ね。壊すには、もったいないわ」
その声とともに、踵を返してゆっくりと外の引き戸へと向かう。
魔王「外に出ましょう。戦うのなら、月と波の下で。──ね、クロノ?」
クロノ「御意。ロビーでの戦闘は、あまりにも趣がありませんからな」
そのまま、音もなく宿の扉が開く。
夜風がふわりと吹き込み、湯の香りをかすかに冷ます。
ロイドたちを一瞥したクロノは、静かに言い放つ。
クロノ「……貴様の足で来い、変態勇者。
魔王様の御前で、貴様の価値を確かめてやる」
ロイド「……外で戦うとか、えらく礼儀正しいな……」
ぽそりと呟いたロイドの声に、マリスが苦笑し、
コトが「むぅ……”ただならぬ強者の気配”でござるな」と漏らす
──港町の石畳の通り。
静かな夜に、クロノと魔王様が並び立つ。
背後には灯りが点る温泉宿、そしてその扉をくぐって現れるロイドの姿。
魔王は柱のそばに腰掛け、月明かりの下、足を組みながら静かに見下ろす。
魔王「ふふ……かわいいわね。ロイドくん♡」
ロイド「“変態勇者”じゃなくて、名前で呼ばれた……!? こっちのほうがこえぇな!?」
クロノが一歩、前に出る。
クロノ「では、始めよう──」
漆黒の魔力がクロノの足元から湧き上がり、鋭く光る魔剣が彼の手に現れる。
クロノ「魔王様の手を煩わせるまでもない。貴様ごとき──この私が充分だ」
ロイド「よし、なら……やってやろうじゃねぇか。パンティの名に懸けて!!」
魔王「うふふ♡」
波音が静かに響く石畳の路地に、緊張感と……謎の違和感が漂っていた。
漆黒のマントを翻す魔王の側近、クロノ。
その前に立つのは──
ヒール、スカート、網タイツ、そして星柄パンティのまま、瓶片手に登場するロイド。
ロイド「よっしゃああ!いっちょブチかますかぁぁ!!」
クロノ「……あまりの光景に、戦意が削がれるのだが」
ロイドは酒瓶をラッパ飲み。
「ふぅ……くうぅぅぅっ!!身体があったまってきたぜ……!」
そしてそのまま、自分のスカートの中に手を突っ込んだ。
クロノ「……何をしている」
ロイド「ここからが俺の本番なんだよ……!」
スカートをごそごそ、カチャッ!
「いっけぇぇぇえ!!パンティ・ブレード・カスタムォォォォオオオ!!」
──取り出したのは、スカートに収納されていた謎の武器。
ブレードの形状をしてはいるが、どこかファンシーなリボンや鈴が付いている。
クロノ「その装備、何の意味がある?」
ロイド「見た目だ!あと趣味だ!!」
クロノ「……駄目だ、理解しようとするだけで魔力が消耗する」
──戦闘開始。
クロノが前に出ると、ロイドもヒールで「カツン、カツン!」と高らかにステップを刻みながら接近。
ロイド「行くぜぇぇぇぇ!!変態・ミラクル・ウルトラ・パワースラァァァァッシュ!!」
「せいっ!」
ロイドのブレードが唸りを上げ、
スカートをひるがえしながら放つ攻撃は、酔いに任せた動きにも関わらず、正確で速い。
「ふん……意外とやるな」
クロノは鋭く剣を振り抜き、受け、かわし、応じる。
その冷静さと手数の鋭さは、戦士としての格の違いを物語っていた──はずだった。
だが──ロイドの動きが、それに食らいついていた。
「さすが魔王の側近…油断できねぇな……」
酒のせいか、それとも仲間の視線が後ろにあるせいか。
ロイドの集中力は冴え、研ぎ澄まされていた。
ヒールで踏み込み、スカートの裾が舞うたびに、一閃。
酔拳と体術が融合したような奇妙なステップで、クロノの斬撃を滑らかにいなしていく。
クロノ(──これは、ただの変態ではない。だが……)
数合打ち合ったその瞬間。
クロノが剣を引き、目を細めて呟く。
「……認めよう。貴様、想像よりも強い」
ロイド「へっ……嬉しいねぇ。お前みたいな無表情に褒められるとはな」
「だからこそ──終わらせる」
クロノの足元に魔力が集い、漆黒の風が巻き起こる。
「見せてやろう。これが……“本気”だ」
クロノの体から放たれる魔力が月明かりを遮り、闇が蠢く。
「──必殺・影穿裂波」
その言葉とともに、地を這うように漆黒の魔刃が走り、
空間すら裂くかのように石畳を抉りながら、ロイドに迫る!
「ちっ……!」
ロイドはとっさに飛び退くが、魔力の刃は追尾するかのように軌道を変え──
「ぐああっ!?」
直撃。
爆風とともに弾き飛ばされたロイドは、空中で一回転し、石畳に膝をつく。
ヒールが砕け、星柄のパンティが夜風に翻る。
「ロイド(殿)(様)(シャッチョサン)!!」
仲間たちの叫びが響く中、クロノは無表情で剣を収めた。
「……これが、格の差だ」
ロイドはふらつきながらも立ち上がろうとする。
だが、全身を襲う痛みに膝が折れる。
悔しげに顔をゆがめながら、彼は言った。
「ははっ……やっぱ、そう簡単にはいかねぇか……」
「でも…こっからが”勝負”だ!」
石畳に膝をつき、額から血を流しながらも、ロイドはまだ拳を握っていた。
クロノの必殺の斬撃。
身体は既に限界を超えていた。
──けれど、心は折れていなかった…それは一瞬であるが”変態” から”勇者”になった瞬間であった。
そして、それを見つめていた魔王様は──
頬杖をつきながら、静かにひとこと呟く。
「……なんか、違うわね」
その言葉は、まるで“期待していたものが手に入らなかった”ような、淡い失望。
そして魔王様はゆっくりと立ち上がると、クロノに目線を向ける。
「もういいわ。帰りましょう、クロノ」
「……御意」
魔王様が踵を返し、クロノも静かに後に続こうとしたそのとき──
「……ちょっと待て!!」
路地に、かすれたが確かな声が響いた。
ロイド「まだ……勝負は……ついちゃいないぞ!!」
クロノは振り返る。
魔王も、静かに目を細めた。
ロイドはふらつきながら立ち上がると、血の混じった笑みを浮かべて言い放つ。
ロイド「ヒールも、パンティも、ズタズタだ……でもよ……まだ、“負け”って認めた覚えはねぇんだよ……!」
クロノ「……愚かだな。もはや剣すら握れていない貴様に、なにができる?」
ロイド「それでも──立ってる限り、勇者だろ……!」
その言葉に、一瞬だけ魔王様の表情が揺れる。
そして──彼女は静かに言った。
「……それが、あなたの“覚悟”なのね」
ロイド「……!」
魔王はロイドをじっと見つめ、軽く首を振った。
「でも……今のあなたでは、私の求めるものには届かない」
ロイド「な、何……?」
魔王様「あなたは確かに……星柄のパンティを履き、網タイツにヒールを履き、酒をラッパ飲みしながら戦う、唯一無二の存在よ」
魔王様「でも──」
彼女はゆっくりと一歩前に出て、こう続けた。
「まだ、“完璧な変態”じゃないの」
ロイド「……っ!」
魔王様「あなたにはまだ、“理性を超えて信念に変わる狂気”が足りない」
魔王様「変態とは、信念。狂気と優雅の狭間にある究極の様式美。
あなたの中にはまだ“迷い”がある。それが、あなたを凡庸な“勇者”に留めているのよ」
ロイド「……くっ……!」
魔王様は背を向ける。
「あなたが“完全な変態”となる時──そのとき、また会いましょう。ふふ……期待しているわ、ロイドくん♡」
振り返らずに、静かに続ける。
「“虚無ノ塔”へいらっしゃい。
この世界のどこか……雲をも突く黒き塔の頂で、私はあなたを待っているわ」
ロイド「“虚無ノ塔”……?」
クロノ「……魔王様の玉座にして、変態を許す唯一の地。
到達できる者など、まずいないがな」
魔王様とクロノは、ゆらめく夜霧の中へと静かに消えていった。
──そして、残されたロイド。
彼はしばらく沈黙していたが、ついに、空に向かって叫んだ。
ロイド「って……完全な変態ってなんだよぉぉぉぉぉおおおお!!??」
仲間たちはその叫びに微妙な表情を浮かべた。
リリィ「……でも、ちょっと見てみたい気もしますわね。完全な変態の姿……」
コト「うむ。旅の目的が明確になったでござるな」
マリス「面白くなってきたじゃねぇかぁ!」
ロイド「俺の“完全”の定義が、どんどん崩壊していく……!!」
──港町アリセリアの夜に、悔しさと月と笑い声、そして星柄パンティがひらひらと舞っていた。
ロイドは仲間たちの顔を見ずに、そっと空を見上げた。
海の向こうに輝く月。
その光が、自分のパンティに淡く反射しているのが見えた。
その光景に、彼は静かに、強く奥歯を噛みしめる。
夜は明ける。
変態勇者の新たなる旅立ちが、今、始まる。




