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第11話 「酒・たばこといえば…黒い女神様登場! 後編」

*この作品には…過度な飲酒描写と喫煙描写が含まれていますので、

苦手な方は ブラウザバックして下さい(震え声)作品中の行為や行動について

よい子の成年は絶対真似しないでください(注意喚起感)

なお、お酒とたばこは20歳になってから…容量・用法を守って

正しく摂取してください(未成年への注意喚起感)

*前回までのあらすじ…なんやかんやあってロイド達”変態”一行はギャンブル依存症のマリスと共に「ヘルズ・ジョーカー」に参加することになった…


夜のバルハラドは、昼とは打って変わって静寂に包まれていた。 白壁の街並みに灯るランタンの明かりが、ゆらゆらと風に揺れ、 その奥――交易の表通りではない、町の裏手へと続く石畳の通路をロイドたちは進んでいた。

「ここ……本当にカジノがあるのか?」

ロイドは網タイツの裾を押さえつつ、小声で尋ねる。 その足元では、昼にかいた汗がようやく乾き始め、ようやく人間らしい歩き方が戻りつつあった。

「シャッチョサン、声が震えてるアルよ。もしかしてビビってるアルか?」

「当たり前だろ!“裏カジノ”って響きだけで人生終わる気がしてんだよ!」

「わたくし、煙草のにおいが強い場所は好きですわ……心が落ち着きますの……」

「拙者、シラフで賭博場に足を踏み入れるのは、初めてでござる……」

先頭を歩くマリスは、黒コートの裾を軽やかに翻しながら、短い足でスタスタと歩いていく。 小柄で貧乳、しかし一歩一歩がやけに堂々としていて、不思議な威圧感があった。

「ビビってる奴に限って、意外と勝つんだよ。ついてきな──“運”ってのはバカに微笑むもんだ」

そして、一行の前に現れたのは、 まるで倉庫のような重厚な扉。そこには装飾のない鉄の札が掛かっていた。

《H・J》――地獄のカジノ《ヘルズ・ジョーカー》。

マリスが札を裏返すと、静かに扉が開いた。

その瞬間、空気が変わった。

中からは金属と煙草と香水が混じった、得体の知れない熱気と甘い匂いが漂い、 赤と黒のライトが天井から差し込んでいる。 人々のざわめき、チップの音、カードが弾かれる乾いた響き。

ロイドたちは、その一歩を踏み出しただけで、足元の温度が変わるような錯覚を覚えた。

「うわ……な、なんか……雰囲気が……」

「明らかにそっち系の人たちがうろついてるアルよ!?刺青と猛獣飼ってる人とかいるアル!!」

「拙者、場違い感で吐きそうでござる……」

「わたくし……あの煙の渦の中からこちらを睨んでる目が、非常に嫌な感じですわ……」

全員がそろって一歩後退した。

「やっぱ無理だこれ!帰ろう!今なら間に合う!スカートも脱がずにすむし!」

しかし、マリスはくるりと振り返ってにやりと笑った。

「……へぇ、帰るんだ?じゃあ……飲み食いしたぶん、全部払ってってね。砂漠のスイカ、どぶろく×4本、肉串×10本、タバコ一箱。ざっと……」

手元のメモ帳をパチパチと計算し、目を細めて告げる。

「合計で金貨38枚。さ、どうする?」

「え、えぇぇぇ!?たっか!!」

「いやいやいや、助けたの誰だっけ?水も提供したし、命拾いもさせたよね?……これは友情価格だよ」

「うわあああああ!完全に人質商売ぃぃぃ!!」

「命がけで払うか、命がけで勝って返すか──選びな」

こうして、逃げ場を失ったロイドたちは、観念して地獄のカジノへと足を踏み入れることになったのだった。

「──ようこそ、裏カジノ《ヘルズ・ジョーカー》へ」

仮面をつけたディーラーが、彼らを迎えるように手を差し出す。

「本日の目玉は、“命運カード・デスマッチ”……通称ヘルズ・ジョーカー。 これは、ギャンブルゲーム“ドラゴン&タイガー”を進化させた形式です。

ルールはシンプル。観客は“ドラゴン”と“タイガー”のどちらが勝つかを予想して賭け、 さらにゲーム参加者は自らのパーティから一名を選び、実際に戦わせて勝敗を決します。

勝利者には、賭けられた金額に引いたカードの数字を掛けた金額が与えられます。 つまり、より高い数字を引いて勝利すれば莫大な報酬が手に入るというわけです。

もちろん、命がけですので……脱落者は二度と賭場には立てません」

「……やっぱ帰っていいですか!?まだ外の砂のほうが平和な気がしてきた!!」

マリスがにやりと笑った。

「今回はあたしも含めて全員で“チーム戦”だ。『マリスwith変態パーティ』でエントリー済みだ」

「えっ、もう登録されてるのおおおお!?」

「拙者、初手からこんなこととは聞いてなかったでござる……」

「シャッチョサン、命の賭け方がどんどん雑になってるアル……」

「“マリスwith変態パーティ”って名前……絶対一生黒歴史になるやつだコレ……」


変態達の命がけ?試合

バルハラド裏カジノ《ヘルズ・ジョーカー》──その会場の熱気は最高潮に達していた。

仮面ディーラーの声が響き渡る。

「本日最初の対戦カードは……“チーム・マリスwith変態パーティ”VS“ブラッディ・バニーズ”!」

ロイドがガタッと立ち上がる。

「えっ、バニーズ!?バニーガールなの!?バニーガールが敵なの!?」

「違うアルよ、シャッチョサン。“バニー”は猛毒持ち兎型魔物の意訳アル……」

「なんでそんな名前で来るんだよぉぉ!!」

マリスが指を鳴らす。

「初戦は……侍、出番だぜ」

「えっ……えぇ?いや、あの……拙者、ああいう血の気の多い試合はちょっと……」

コトはじりじりとマリスの背後に回りこもうとするが、マリスがにっこり笑って瓶を差し出す。

「はい、どぶろく。酔えば怖くないだろ?」

「……っ、むむ……くぅ、そういう手に出たか……」

コトはぐいっと瓶を引き取り、その場で煽るように一気飲みした。

「んぐっ、んぐっ、んぐっ……ぷはぁっ!!!」

瞬間、瞳がギラリと光り、口調が一変。

「おいらの出番ってことだな……ヘッ、上等だぜ」

観客のざわめきが広がる中、コトは舞台中央に歩み出た。

対する“ブラッディ・バニーズ”の代表は、血染めのウサギの仮面をつけた、刃物二刀流の殺人狂──見た目からして完全にアウトなやつ。

「さぁさ、金を賭けな!ドラゴンにか?タイガーにか!?命と財布、どっちが先に尽きるかなぁ!!」

観客たちがチップを掲げながら、歓声を飛ばす。

ディーラーがカードを一枚ずつ引く。

「ドラゴン──チーム・マリス、カードは……ジャック!」 「タイガー──ブラッディ・バニーズ、カードは……ナイン!」

「数字勝負は勝ち……!残るは命の勝負!」

決戦の鐘が鳴る。

「千鳥足殺法・一ノ脚《紅梅の斬》ッ!!」

ふらつく軌道から繰り出される斬撃が、相手の片腕をはじく!

バニー仮面の男は鋭い蹴りを放つも、コトはふらつきながらかわす。

「次だァ!二ノ脚《黄梅の突》ッ!!」

突如、コトの足が地を蹴り上げ、敵の腹を抉る!

「この……アル中野郎め!!」

男が怒りにまかせて突っ込んできた瞬間、コトの体が反転。

「三ノ脚《白梅の薙》──酔いどれ流奥義ィ!!」

風と共に男の仮面が吹き飛び、観客席に突き刺さった。

仮面ディーラーが静かに宣言する。

「勝者──チーム・マリスwith変態パーティ」

場内に大歓声が響き渡る中、ロイドたちは叫んだ。

「勝ったぁあああああ!!」

「おいらは最強だぁぁぁぁぁ!」

「この調子で賞金も稼ぐアルよ!!次も勝つアル!!」

「やばいですわ、あの動き……見惚れてタバコ折りましたわ……」


場内の熱狂が冷めやらぬ中、仮面ディーラーが再び声を上げる。

「第二戦──“チーム・マリスwith変態パーティ”VS“スモッグスカル・ギャング”!」

「えぇ……わたくしですの?……正直こういう野蛮な舞台、気が進みませんわ……」

リリィはため息混じりに言いながら、それでもゆっくりとタバコに火をつけた。

対戦相手のスモッグスカル・ギャング代表はニヤついた顔で彼女を見ながらぼそりと呟いた。

「なんだその煙……クッセぇな……修道女ってのは、もっと清らかな匂いしてんじゃねぇの?」

その瞬間、リリィの動きが止まった。

「……いま、なんと?」

彼女の声は静かだったが、背後に幻の十字架が立ち昇る錯覚すら覚えさせた。

「わたくしの……煙に……文句を……?」

ゆっくりと振り返るその瞳には、笑みも慈愛もなく、ただ怒りだけが灯っていた。

「許しませんわよ、俗物が──」

彼女はタバコを深く吸い込んだ。

「ニコチン神様…今宵…あなたに歯向かう愚か者を成敗いたします…」

ディーラーがカードを配る暇も惜しいように、リリィは呪文を唱えた。

「《ミスティアロマ・セイントスモーク》」

ぎりぎりまで吸い切ったタバコをパチリと指で弾き、その煙が渦を巻いて相手を包み込む。

「けほっ……うっ、ぐあっ、な、なんだこの煙……!!」

煙はまるで意志を持ったように男の口と鼻をふさぎ、完全に窒息状態へ。 さらにリリィは怒りの形相で歩み寄り、ブーツで男の足を踏みつけた。

「言葉には、気をつけなさいませ」

バタリと倒れるスモッグスカル代表。

「勝者──チーム・マリスwith変態パーティ!」

ロイドが感心したように呟く。

「優雅で危険……っていうか相手、最後まで胸と煙しか見てなかったぞ!?」

「戦いとは“吸って沈める”でござるな……」

「語録にするな!」


「さぁ!第三戦!“チーム・マリスwith変態パーティ”VS“イービルズ・パペッツ”!」

ロイドが一歩前へ出る。

「ついに来たか……俺の出番……!」

「シャッチョサン、ちょっと待つアル!」

リー・アルがふわりと宙に現れ、にこにこしながら何やら腕を操作する。

「今回の戦闘では、新しい広報装備がございます!“変態モード・バニーVer.”、起動ッ!」

「いやな予感しかしねぇぇぇ!!」

ロイドはその場に置かれたブランデーボトルを掴み、

「だったらこっちも覚悟決めるしかねぇ……!」

と、ゴクゴクとラッパ飲みする。

「ブランデー・オブ・マジェスティ!!」

バシュゥゥッ!!と光が舞い、ロイドの体が眩しく輝く。

「アル・チュープリズム・パワーメイクアァァァップ!!」

スカートはピンクのミニフレアに。網タイツはそのまま、そして上半身はピチピチのバニーガール風ビスチェ! 頭にはぴょこんとかわいいウサ耳、ヒールは謎のグリッター付き超厚底仕様に強化されていた。

「だああああああ!!どこの誰に向けてんだこれえええええ!!」

対戦相手のイービルズ・パペッツは、人形師の男が目を剥いて叫んだ。

「な、なんだよその衣装!どう見てもモンスターじゃねぇか!!」

観客からは謎の大歓声が巻き起こる。

「セクシー!変態!勇者!!」

「股間に賭ける!!」

「誰だよ今の発言!!!」

ロイドはスカートを押さえながら叫ぶ。

「変態でも!恥ずかしくても!これが俺の戦闘スタイルだぁぁぁぁ!!」

そして、スカートの中からまさぐり取り出した“火炎バニーソード”が炸裂!

「必殺!ラビット・フレイム・スラッシュ!!」

火花と共に、傀儡たちを一刀両断。

「勝者──チーム・マリスwith変態パーティ!!」

ロイドは膝をつきながら、ぼそっと呟いた。

「お願いだ……次は普通の服を着させてくれ……」

リー・アルはにっこりと明細書を差し出す。

「“変態バニー特別出演料”発生してるから、ノルマ達成するまでは無理アルよ♪」

「地獄ぅぅぅぅぅうう!!!」

「第四戦──決勝戦!“チーム・マリスwith変態パーティ”VS“ヘルズ・クイーンズ”!!」

観客がどよめく。場内の熱気はこれまで以上。

ロイドが振り返ると、マリスが帽子を目深にかぶり、拳を握っていた。

「……へぇ、よりにもよってこいつらか」

ロイドが聞き返す。 「知り合いか?」

「“因縁”ってヤツだよ。俺が昔、全財産を奪われた詐欺師チームさ。あの女……インチキの化身みたいなもんだ」

マリスは、”ぺったんこ”の胸がコートの襟元は堂々と開いた、  逆に貧の主張が目立つという謎のスタイルで、静かに語った。

ステージに現れたのは、華美なドレスを纏った女と、取り巻きの美男美女たち。 その中心の女が笑う。

「まぁまぁマリス。まだギャンブルなんてやってたの? 貧乳のくせに」

「殺意湧いたわ」

開始の合図と共に、カードが配られる。

「ドラゴン──マリス、カードは……ジャック!」 「タイガー──ヘルズ・クイーンズ、カードは……キング!」

「おっと、これはヘルズ・クイーンズに軍配! 数字ではリードです!」

その瞬間、マリスの足元に光の鎖が現れ、彼女の手足を拘束する。

「っ……クソ、これは……!」

場外の高座席にいた、ヘルズ・クイーンズの協力者が魔道書を掲げ、密かに拘束魔法を展開していたのだった。

「動けないの? ふふふ、貧乳のくせに生意気言うからよ」

「あーもーその単語何回言うんだよ貧乳貧乳って!てめぇのボキャブラリー干からびてんのか!?」

だが、マリスの口角が上がる。

「……甘いな」

ステージの端、柱の影から、小さな影が跳ねた。

「トランプ兵──伏兵部隊、展開ッ!!」

忍ばせておいたスペードの兵たちが場外の協力者へと奇襲、魔道書を破壊し、拘束魔法を断ち切る。

「なっ!? そんなバカな──!!」

「バカかどうかは──賭けてみりゃ分かる」

マリスはカードを一枚空中で切り裂く。

「《ギャンブル魔法・スリーカードモンスター!!》」

炎を纏ったジョーカー兵が召喚され、対戦者を派手に吹き飛ばす!

「勝者──チーム・マリスwith変態パーティ!!」

観客席は割れんばかりの拍手と歓声。

ロイドは思わずガッツポーズ。 「やったぁぁ!マリスやったじゃねぇか!!」

「ハァ、ハァ……当然だよ。運命すら賭けてんだからな……」

その後、ロイドのもとにふらりと近づいたマリスが、ぽんと肩を叩く。

「そういやロイド、ギャンブル魔法使うときは、あんたも少しリスク負ってたぜ」

「へ? 何の話?」

「スリーカードモンスターの効果──対象者の精神に“スリル依存”を植えつけるんだ。禁断症状ってヤツさ」

ギャンブル魔法は使用するたびに、術者に禁断症状をもたらす副作用が生じる──ギャンブルの中毒性が、そのまま呪いとなる危険な力だ。

「……へぇ、そりゃこえぇな……で、俺にどう出るんだ?」

マリスは一瞬、視線を泳がせた後──ごくりと喉を鳴らした。

「……うっわ……なんで今、スカート姿のあんたが、ちょっと、いや、かなりアリな気がして……って、俺どうかしてる!?!?」

ロイドが震えながら一歩下がる。

「ちょ、ちょっと待て!? 何その目!? 俺、何かされた!? 今回!?」

「くっ……禁断症状、マジでこっちにも来るんだなこれ……!」

「なんなんだよぉぉぉ!!気になるぅぅぅ」

だが──その瞬間、マリスの胸の奥に、不思議な感覚が芽生えていた。

(……なんだこの気持ち。見た目は変態、言動も変態、スカートの履き方も終わってる……なのに……なのに……)

マリスの今回の禁断症状は…”変態に恋する”

顔を真っ赤にしながら、マリスはぼそりと呟く。

「……くそ、なんであんな奴に……ときめいてんだ、俺……」

──まさかの恋の発芽である。

だがそのとき。

場内の照明がすべて落ちた。

仮面ディーラーの背後から、黒いローブの男が姿を現す。

「──これが勝者? こんな、ふざけた連中が……?」

「貴様……ヘルズ・ジョーカーの主催者……!」

「我が名はダルマ・ディール。お前たちの“勝利”……気に入らん」

そして彼の周囲に、次々と現れる魔獣たち── その場にいる誰もが、戦慄するような気配を放つ“本物の殺意”が、会場を包んでいく──!!

暗転した会場に響くのは、魔獣たちの咆哮と観客たちの悲鳴だった。

「いやああああああっ!」「逃げろぉぉぉぉ!」「賭けチップ全部忘れてでも逃げるわよッ!!」

恐怖に染まった群衆がカジノホールの席から一斉に立ち上がり、出口へと殺到する。テーブルを蹴倒し、コインが宙を舞い、勝者の歓声はもはやどこにもない。

「行け、魔獣ども……すべてを喰らい尽くせ!!」

主催者・ダルマ・ディールの号令と共に、黒き魔獣たちが咆哮しながらステージへと放たれた。

「チッ、やっぱり最後に出てきやがったか……!」

マリスはすぐにトランプを構え、仲間たちをかばうように前へと出る。

「ロイド、コト、リリィ。ここは俺が足止めする。お前らは逃げ──」

「ふざけんな!」

ロイドが叫び、ピンクのヒールで床を蹴った。

「俺たち“マリスwith変態パーティ”の仲間だろ!仲間をおいて逃げられるか!」

「シャッチョサンかっこいいアル〜!”勇者様”みたい」とリー・アルもなぜか感涙。

「みたいは余計だよ!」

「……はっ。お前ってやつは、ほんと……」

マリスは小さな胸に、再びあの謎のときめきが湧き上がる。

(くそ……やっぱ俺、こいつに惚れてんのかも……)

「よし、ロイド。共闘だ。行くぞ──!」

「応ッ!」

二人が前へと飛び出す。

「援護するでござる!」

コトが千鳥足の構えを取り、魔獣の群れへと突進。どぶろくを一気にあおり、

「千鳥足殺法・三ノ脚《白梅の踏》!!」

酩酊スピンキックで魔獣の群れを吹き飛ばす!

リリィは祈るように煙をくゆらせ、低く呟いた。

「《煙魔法・マルボロ・ブレッシング》……ロイド様、マリス様、加護はわたくしに。」

立ち上る紫煙が光をまとい、二人の身体に祝福の結界を付与した。

マリスはカードを投げるように切り裂き、叫ぶ。

「《ギャンブル魔法・ブラックジャック・レイド!!》」

空中に黒のトランプ兵が出現し、魔獣の群れへと突撃していく!

「俺の命運、今日の手札に全部ベットだ!!」

ロイドもブランデーをラッパ飲みし、ぐるぐると回転しながら──

「アル・チュープリズムパワーメイクアップ!!」

きらめく光と共に、網タイツ&ミニスカートからスペシャル仕様── 頭にウサ耳、胸元にリボン、腰には尻尾が揺れる“バニーガールスタイル”に変身。

マリスの鼓動が跳ねた。

(……待て、無理……可愛い……いや何考えてんだ俺!)

魔獣たちを次々に薙ぎ倒すふたり。

だが──

「ふん、小細工など通じぬ」

ダルマ・ディールの身体がぐにゃりと歪む。

黒いローブが破け、下から現れたのは巨大な獣人のような魔物の姿。

「見よ──これが真の姿……“魔王代理課長・ディール・ビースト”だッ!!」

「代理課長ってなんだよ!!」 「肩書が雑魚そうで逆に強そうでござる……」

ロイドとマリスは同時に頷き、駆け出した。

「マリス!」 「いっちょ決めるか、相棒!!」

ロイドが空中でグラスを投げる。 マリスはそれをキャッチし、笑った。

「トランプ兵、全軍前進──!」

ステージ上に大量のハート&スペード兵が出現し、ディール・ビーストの動きを封じる。

「今だ、ロイド!」

ロイドは跳躍し、バニー衣装のヒールを閃かせる。

「必殺──バニー・スターダスト・エクスプロージョン!!」

無数の星型光弾とともに飛び蹴りが炸裂! 

ディール・ビーストが絶叫し、爆発音と共に闇へと崩れ落ちていった──!

……

そして、煙が晴れた後。 巨大な魔物の影は、もうそこにはなかった。

逃げ惑う観客席は一瞬の静寂の後、爆発するような歓声に包まれる。

「勝者──チーム・マリスwith変態パーティ!!」

ロイドとマリスは、ぐったりしながら拳を合わせる。

「……いい勝負だったな」

「……うん。マジで惚れ直した」

「ん?」

「な、なんでもねぇよ!ばーか!」

マリスの顔は、今夜一番の真っ赤さだった──。

数時間後、崩壊したカジノホールの裏口にて──。

マリスがふと、ロイドの隣に腰を下ろした。

「なぁ、ロイド。……お前らの旅に、俺もついてっていいか?」

「は?」

「なんだよ、ダメかよ?」

「いや……全然いいけど……急にどうしたんだ?」

マリスは帽子を深くかぶりながら、トランプの束を軽く弄んだ。

「ギャンブルってのはな……勝ち逃げより、続ける方がスリルがある。……あと、」

一拍置いて、照れ臭そうにぼそりと。

「お前の”変態な姿”、まだ……ちょっとアリだと思ってんだ。たぶん、禁断症状……だけじゃねぇかもな」

「えっ……?」

「わーったろ!今のなし!なしな!」

ロイドが爆笑し、仲間たちがそれに続いて笑った。

こうして、ギャンブル狂で破天荒なトランプ魔法使い──マリスが、 変態と奇人が揃い踏みする最凶パーティに正式加入したのであった。


「あっ…そういえばシャッチョサンまた”バニー”に変身したアルねぇ…」

「ん?」

リー・アルはにっこりと明細書を差し出す。

「追加の“変態バニー特別出演料”アル♪」

「…うぅ…うぅ」

ロイドはリー・アルの追加の明細書を見てその場に泣き崩れた

「…おまえも大変だな」


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