カラオーケストラ
カラオケ。
それは日本人が生み出した外来語。
空+オーケストラ=カラオケ
オーケストラがいなくても、音楽を楽しめる部屋で思いっきり歌うことができるという娯楽の一つであり、友達との交流を深めたり、大声を出してストレス解消を図ったりもできる。
ストレスというのは、『何かを出す』という行為によって解消、または緩和されるらしく、大声はもちろん、涙、唾液、汗、という類のものも含まれているらしい。だから唾液を出すためにやけ食いしたり、汗を出すためにその場から逃亡したり、涙を出すために泣いたりと、人間のそれぞれの行動には全て意味があるらしい。
というわけで、俺がこうして意図せずに寝坊したのにも意味があるんだと思う。
いやね、わざとじゃないんですよ。
ちょーっと昨日の夜に新しいゲームをダウンロードして、ちょーっと朝方までやってたら、ちょーっとだけ寝すぎちゃって、それがたまたま10時半だったってだけで、わざとじゃないんですよ。
・・・言い訳乙。
これはヤバイな。木村に責められるパターンだ。こういうときだけ渡辺が羨ましく思うわ。
ここから目的地のカラオケ屋までは、時間にして約1時間。
はい終わったー。俺の今日のリア充計画終わったー。
これはもしかすると、俺がリア充の中に飛び込むのはまだ早いという神のお告げだったのではないか?
そう考えるとすべてのことに意味があるように思えてくる。
そしてこの寝坊にも意味があるように思えてくる。
ブーブーブーブーブー
「うおっ! ごめんなさいっ! ・・・って電話か」
自分のケータイのバイブに驚くなんてアホか。
しかも瞬時に謝っちゃうところとか、俺もうダメじゃん。
そんなわけで、誰からかの電話なんて想像がつくけど一応確認。
はい。木村さんからでした。もちろん放置安定ですね。うん。
ブルブルとマナーモードたけしなケータイを見ていると、ピタリと震えが止まった。
よし。寝るか!
頭の中でふんばり温泉チームのリーダーが叫んだので、俺も布団の中に飛び込むことにした。
「お兄ちゃん」
「ふあっ!?」
布団に飛び込んだのと同時に弟が部屋の中に現れた。
なんでこいつがいるんだ?
「電話」
「いやいや。お前、なんでいるんだよ。学校は?」
「創立記念日」
「あーなるほど」
創立記念日なら仕方ないな。
むしろ創立記念日なら、なんか行事しろよ。わざわざうちの学校の学校祭の振替休日と一緒にすんなし。バカ校長。ん? 理事長が悪いのか? わからん。
「紗枝ちゃんから」
「・・・もっと単語以外の言葉を発しなさい」
そう言って、弟が差し出してきたケータイを受け取って耳に近づけると、それはとても怒りのこもった声が聞こえてきました。
『・・・あんた今どこよ』
実際に直接話していたら、テーレッテーって音楽が流れて一撃で沈められてしまうかもしれない。もしかするとコノメニウーかもしれないしデストローイかもしれないしオーモーイーガーかもしれない。かもしれない運転かもしれない。豪鬼さながらの禊やら楔やらをくらってしまうかもしれない。
そのくらい怖かった。
相手が怒っているならば敬語を使わざるを得ない。
「い、今は家です」
『家?』
「はい・・・ついでに言うと、さっき起きて、まだ寝巻きです」
『・・・はぁ。寝坊したってこと?』
「まぁ・・・そういうことです」
さらにため息をつく木村。これは怒りを通り越して呆れに移動した証拠だ。
『待っててあげるから早く来なさい』
「え? いいって。先に行っててください。むしろ行ってください」
『あ?』
「す、すみませんです! 今すぐ行きますんで、待っててくださいぃぃ!!」
というわけで、猛ダッシュで準備をすると、小走りで駅へと向かい、ちょうど良くホームに滑り込んできた電車に飛び乗って、ガタンゴトンと揺られながら学校近くの駅へと到着。そして再び小走りで目的地へと向かった。
カラオケ屋を視認!!
こちらへ駆け寄ってくる木村を視認!!
木村がボディーブローの構えをとっているのを視認!!
頭の中にいろいろと駆け巡ったのを確認!!
あ、これが走馬灯か。
腹部に痛みを確認!!
みぞおちから少し下の位置に痛みを確認!!
その場に崩れ落ちた俺を見下す木村を視認!!
・・・遅れてきた俺に対しての扱い酷くね?
「うっ・・・」
「遅い!!」
「・・・お、お前だって遅刻したことあるだろ・・・」
「それはそれよ!」
こいつ! 棚に上げおった! 自分の負の記憶を放り投げおった!!
「あんた何時間待たせてんのよ」
「えっと・・・1時間?」
「・・・正解」
「やったー」
「アホか!!」
頭をペシンと叩かれた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか読んでいただけると嬉しいです。
今回、格ゲーネタが多いです。
伝わらなければそれまでですw
次回もお楽しみに!




