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ぼっちデイズ  作者: シュウ
二章
34/128

気まずい二人

長いです。

「あ、お兄ちゃん」

「大丈夫なのか?」

「うん。ちょっと眠かったから保健室で寝てた」

「ただの寝不足かよ・・・」


中学校の保健室へとたどり着いた俺は、ベッドに横になっているが意外と元気そうな弟の姿を見てホッと胸をなでおろした。

隣にいた木村も同じように一安心しているようだ。


「ごめんね」

「いいって。気にすんな」

「紗枝ちゃんもごめんね」

「ううん。弟くんが元気そうで良かった」

「フフッ」

「何がおかしいんだよ」

「お兄ちゃんと紗枝ちゃん、仲直りしたんだなって思って」


そう言われて木村と顔を見合わせる。

弟には悪いが、俺と木村のことはまだ何も解決していない。

ここに来るまでだって、ほとんど喋ってないし、目も合わせていなかった。

互いに気まずいんだ。

よくよく考えてみると、告白されてから俺逃げ出してるしね。しかもそれから音信不通。

そんなことがあったら嫌われてるって思うのが普通だと思う。

でも木村はこうして俺の横にいる。

どういう神経してんだ?


「まぁ・・・な」

「へへへ」


『へへへ』ってなんだよ。


「じゃあ帰るか」

「うん」


起き上がり、そばに置いてあるカバンを持って、三人で保健室を出た。

そして校舎を出ると、家に向かって歩き出す。三人で。


「・・・どうしてついてくるんだよ」

「勝手でしょ」

「勝手じゃねぇよ。俺んちだ」

「じゃあ弟くんの家に行く」

「いいよ」

「こんの屁理屈言いやがって・・・」


こうして俺の家に三人で向かった。

そして家に着くと、弟はそのまま『眠い』と言って部屋に行ってしまった。


「おいっ! お前の友達忘れてんぞ!」

「ぼくもうむりー」


眠たそうな声で返事をする弟。

クソ。なんとなく想像出来てたけど最初からそれが狙いか。


「ほら。弟も寝るって言ってるし、今日はもう帰れ」

「・・・ダメ?」

「うーん・・・」


まぁ・・・なんていうの? あんなことがあって木村と関わるのが怖くて邪険にしてはいるけど、嫌いな訳じゃない。

好きか嫌いかで言われると好きだけど、それは木村が考えてるような好きじゃなくて、もっとこう・・・ライクのほうだ。しかもライクの中でもさらに下のほうだ。『嫌いとライクの間だけど、ライク寄り』みたいな感じ。

だからなんていうのか・・・こういう時って、日本語が上手い奴は上手いこと言えるんだろうけど、俺はそこまで対話能力があるわけじゃないから、なんて言えばいいのかわからない。教えてシンジ君。


「聞きたいことあるんだけどさ」

「ん?」

「ちょっとここだとアレだから、あんたの部屋行かない?」

「・・・変なことするなよ?」

「しないわよ」


そして俺の部屋に二人きり。

今一番話したくない人と二人きり。なんともいえない状況だ。


「で、なんだよ」

「あのね、えっと・・・」


なんとなく察しはつく。


「この間はごめんなさい」

「ほらやっぱり・・・は?」


なんか謝られた?

てっきり告白の返事とか聞かれるのかと思ってビクビクしてたんだけど、ちょっと斜め上だった。


「いや、なんか悪いことしたなぁって思って・・・」


口を尖らせて拗ねたように言う木村。

ホントコイツが考えてることが意味わかんねぇ。


「ビックリしたでしょ。私、ちょっと前からあんたのことそういう目で見てたんだ」

「まぁ・・・ビックリしたわ」


逃げ出すぐらいにな。


「で、あんたが逃げたあと、家に帰ってから考えたの。どうして逃げられたのかなーって。で、思ったんだけど、私とあんたってまだそういうレベルに達してなかったと思うわけ」


こいつそこで気づいたの? 俺なんかかなり前から気づいてたよ?

ギャルゲーで言うところのハート5個がMAXなのに、ハート2つぐらいしか溜まってない状態だった。馬鹿なの?死ぬの? あ、馬鹿だった。


「だからあの告白はナシ! なかったことにしてください!!」


そう言って床に土下座をする木村。

他人に土下座をされるとは思ってもみなかった。

意外と罪悪感が湧いてくるな。


「なかったことって言われても・・・」

「じゃあ気にしないで!」

「いや、それのほうがムズイ・・・」

「じゃあどうすればいいのよ! 脱げばいいの!?」

「なんでそうなるんだよ! お前は宴会中のオヤジか!」


どうして宴会してる最中のオヤジは一発芸ですぐに脱ぐのだろう。『ゲイと一発ヤる』という意味の『一発ゲイ』の隠語だったのだろうか。

制服のワイシャツの裾に手をかけていた木村の手を掴んで止めると、そのままお互いに正座で向き合った。


「じゃあどうすればいいのよ」

「俺に聞かれても・・・」

「じゃあどうしてほしいの?」

「いや、俺は・・・」


どうしてほしいかなんてわからん。

今後どころか、今までの俺たちの関係すらもよくわからんのに、どうしてほしいかなんてわかるわけがない。


「私は、前みたいにメールとかしたい」

「その関係を壊したのがお前なんだろうが」

「うっ・・・」


やべっ。言いすぎた。

木村の顔を見ると今にも泣き出しそうだった。


「わー! 泣くな! 絶対に泣くなよ! 泣いたら絶交だからな!」

「絶交!? ううっ・・・絶対に泣くもんか・・・」


本気で泣きそうになるのを気合でとどめているらしい木村の顔はとても険しかった。


「ぷっ・・・すげぇ顔」

「笑うなぁ!!」

「いてっ! 投げんな! あぶねぇって!」


木村はテーブルの上に置いてあったシャープペンやらプレステのコントローラーやらを投げてきた。

コントローラーだけは絶対に死守ぅう!! なんとかキャッチ成功。

と、ホッとしたのもつかの間。最後にベッドの上から枕を取って、顔面めがけて投げてきた。


「うぼっ!」


見事に命中し、避けようとした俺のからだはバランスを崩して、枕の勢いに押されて後ろに仰向けに倒れた。

視界が真っ暗になり、手にはコントローラーの感触だけがあった。

すると腹に重たいものがのしかかってきて、そのまま俺の上半身に向かって倒れてきた。

どうやら木村が俺の上に乗っているらしい。

つまり上半身と上半身がくっついている状態。腹の位置に木村のケツがあって、俺の胸に木村の胸が当たってる。い、意外と胸あるのな。ブラジャーの硬い感じもするけど、それでもわかるぐらいあった。そして枕越しだけど、そこに木村の頭が乗っているのが感覚でわかる。

ちょっと苦しいけど、木村のすすり泣く音が聞こえるから無闇に動けない。

『泣いたら絶交』と言ったはずなんだけどな。

喋れないからその言葉を言うことができない。もしかすると我ながら結構お人好しなのかもしれない。


「私はあんたとオタク仲間になりたいのよ」


泣きながらの声で木村が言った。

俺はクッションのせいで話せない。力任せに木村をどかせば話せるけど、俺のからだはそれをしようとしなかった。


「だから前みたいな関係に戻らせてよ。お願いだから・・・」


もう俺は何も言えない。

クッションで顔を抑えられていて良かったと思った。

そのまま何も言わずにこうしていてもいいのだが、さすがに苦しくなってきた。

木村の腕にタップして、限界だということを伝える。

木村はからだを起こして俺の上からどけた。重さが無くなって自由になったからだを起き上がらせると、とりあえずクッションを正しい位置に戻した。当然、正位置っ!

木村は目を拭っていた。


「泣いたら絶交って言わなかったっけ?」

「・・・泣いてないもん」

「嘘つきは泥棒の始まりだぞ」

「泥棒じゃないもん」

「はぁ・・・」


そんなに目を赤くさせて何を言ってるんだか。


「お前の気持ちはよくわかった」

「じゃあ!」

「でもちょっと待て。俺の気持ちはどうなる」

「うぅ・・・」

「俺だってお前からいきなり告白されて超驚いたんだからな。いや、驚いたなんてもんじゃないぞ。人間不信になるかと思ったぐらいだ」

「なんでさ」

「そりゃお前、ちょっと前まで他人だったやつが急にATフィールド破って接近してきたんだぞ? 怖いだろうが」

「んん?」


わかんねぇのかよ。


「お前らリア充と違って、ぼっちは人間との付き合い方に慣れてないんだよ。だからいきなり友達とかできても順応できないの。わかる?」

「えっと・・・食べ物じゃないと思ってたら食べれたけど、ちょっと抵抗ある的な?」


なんだその例え。


「それでわかったならそれでいいや。とにかくお前がそういう感じで急接近してくるから怖かったんだよ」

「じゃあ前みたいにっていうのは無理ってこと?」

「でも、だ! そのなんだ。あいつがお前のことを気に入ってんだ。今回倒れて保健室で寝てたのだって、俺とお前がケンカしたんじゃないかって悩んでたのが原因らしいからな」

「あいつって、弟くん?」

「そうだ」

「そんな理由だったの!? ちょっと謝ってくる!」

「やーめーろ! 今寝るって言ってただろうが」

「あ、そっか」

「それで、あいつの友達としてウチに来るのは別に構わないと思う。で、その時に俺がいたら一緒に遊んでやらんこともない」

「・・・・・・」

「えっ、ちょ、リアクションしてくれません?」

「あっ、えーと、じゃあメールは?」

「メールか・・・それも弟の友達としてならメールに付き合ってやらんこともない」

「つまり?」

「つまり? んー・・・」


言わせるのかよ・・・恥ずかしいじゃん・・・


「お前さえ良かったら、弟の友達ってことで一緒に遊んでやるってことだ」

「・・・いいの?」


そんな嬉しそうな目で俺のこと見ないでください。

俺は恥ずかしさで、目をそらして首を縦に振って答えた。


「やったー!! 嬉しい!! 超嬉しい!! 大好き!!」

「やめろ! キモイ! キショイ!!」


大好きとか言うな!!

抱きつこうとしてくる木村を、両手を伸ばして止める。

やっぱりこいつ怖い!


「やっぱり絶交してやろうか!? コノヤロー!!」

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけるとモチベーションが果てしなく上がります。


かなりの長文でした。いつもの倍ありました。

また一段落しました。

次回、新キャラ(?)登場します。


次回もお楽しみに!

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