持論:大事なことなので二度以上書きます
疑問:キャラクターを立たせる使い方は?
小説を書く人は、このサイトの他の作者さんの作品を読むこともあるでしょう。
その時のことを思い出してみてください。
作品中、あるキャラクターが初登場した時、フルネームを出し、どんな外見しているのか、詳しく説明されています。
進んでいくストーリーを読み進め、最新話まで追いつきました。
その話に登場しているキャラクターのフルネーム、性格、年齢、外見の特徴、どんな服装をしているか、答えられますか?
多くの人は覚えておらず、答えられないと思います。(性格は微妙ですが)
『なにかを覚える』という記憶はいくつか種類がありますが、その中でも短期記憶と長期記憶というものがあります。
文字通り、覚えている時間の違いで分類されています。短期記憶は約二〇秒間の一時的な情報記憶で、長期記憶は一生覚えている情報です。
暗記系の問題が多い科目のテスト勉強を思い出してください。
すんなり記憶できましたか? 教科書を読んだだけではテスト範囲をなかなか覚えられず、繰り返しノートを読んだり、暗記カードを作ったりして、年号や英単語を苦労して記憶したと思います。
小説でも同じです。
作者さんはキャラクターの情報を長期記憶で持っています。
キャラクターの作成に時間を費やしていることもあります。それに直接文書に起こすことはなくても、自分の作品に出てくるキャラクターの基本情報は、書いているうちに頭の中で繰り返し思い出す必要があるため、長期記憶として脳裏に刻まれます。
しかし読者さんは、よほどじっくりと深く読んでいない限り、キャラクターの情報を短期記憶でしか認識していません。
挿絵があるなら話は別ですが、初登場時に詳細にキャラクターを説明したとしても、ぼんやりしたイメージでしか覚えていないのが普通です。
その上、キャラクターの外見がストーリーの進展に関わる重大なことは少ないのです。だからどんなキャラクターか明確でなくても作品が読めてしまう。
それを「話がわかるなら問題ない」と判断される作者さんならば、これ以上言うことはありません。実際にあえて説明せずに、謎を売りとするやり方もありますから。(小説だと相当に難しいですけど)
以下は「読者さんの記憶に残る作品にしたい」「自分の作った作品のキャラクターは、ちゃんと知ってて欲しい」と考える作者さん向きの内容です。
読者さんにキャラクター像を覚えてもらうには、年号や英単語を覚えるの一緒です。
印象や要素を作中でも出すことです。
小説作法では、世界観などの設定説明を序盤に詰め込むのは、あまりよくないやり方とされています。
キャラクターの説明も、同じことすればいいだけです。
●例文1-1
腕時計が示す時間は、既に約束から一五分過ぎている。
指定していたカフェに飛び込むと、彼女の姿はすぐに見つかった。
所在なさげにしていた様子だったが、彼女もまた僕に気づいたようだった。
「ごめん、遅くなった……!」
そう言いながら近づくと、彼女はくすりと笑って返す。珍しい。
「遅刻の理由は?」
「……遅刻は遅刻だから、言い訳しない」
五分前には着くはずだった電車で急病人が出たために、到着が遅れた。
自分ではどうしようもない理由だけど、もっと早く着くように家を出ていれば、遅れなかったわけだから、遅刻については僕に非がある。
しかし彼女の言い方には毒を感じた。すぐに出るのは軽い症状で大したことないと思えるが、気づいたら手遅れになるような遅効性のものを。
だから僕は先手を打って、カフェのタイルに膝と両手を突き、頭を深々と下げる。
「ごめんなさいごめんなさい! 遅れてすみません! 謝るからどうか許してくださいっ!」
「なにこんな場所で土下座してるのよ!?」
さすがに僕のリアクションは予想外だろう。周囲の視線を集めていることに、彼女も慌てている。
「わかった! わかったから! 立ってってば!」
ふ。先手を打った上に一矢報いた。
…………その方法は自分でも情けないと思うけど。
●例文1-2
腕時計が示す時間は、既に約束から一五分過ぎている。
指定していたカフェに飛び込むと、彼女の姿はすぐに見つかった。
いつも洗いざらしのTシャツやジーンズといった無造作な服なのに、今日は夏らしい空色のワンピースを着ているので戸惑ったが。
もしかして今日のデート、少しは気合を入れてくれたのだろうか?
服装が違うだけなのに、いつもは意識しない女らしさを感じ、淡い期待がふと思い浮かんだ時。
長い髪を所在なさげに弄っていた彼女もまた、僕に気づいたように顔を上げた。
「ごめん、遅くなった……!」
そう言いながら近づくと、彼女はくすりと笑って返す。不機嫌そうに僕を見ることの多い彼女にしては珍しい。
「遅刻の理由は?」
「……遅刻は遅刻だから、言い訳しない」
五分前には着くはずだった電車で急病人が出たために、到着が遅れた。
自分ではどうしようもない理由だけど、もっと早く着くように家を出ていれば、遅れなかったわけだから、遅刻については僕に非がある。
しかし彼女の言い方には毒を感じた。すぐに出るのは軽い症状で大したことないと思えるが、気づいたら手遅れになるような遅効性のものを。
それはいつもの事だ。あまり多弁ではない彼女が口を開くと、傷を作るほどでもないが不快に感じ、しかもなかなか抜けない小さなトゲが、彼女の言葉には常にある。
だから僕は先手を打って、カフェのタイルに膝と両手を突き、頭を深々と下げる。新品のスラックスが汚れるが構わない。
「ごめんなさいごめんなさい! 遅れてすみません! 謝るからどうか許してくださいっ!」
「なにこんな場所で土下座してるのよ!?」
さすがに僕のリアクションは予想外だろう。周囲の視線を集めていることに、彼女も慌てている。立ち上がる際にテーブルを揺らし、紅茶の飛沫がワンピースに飛びかけたことも気づかないほどに。
「わかった! わかったから! 立ってってば!」
ふ。先手を打った上に日頃の微毒舌にも一矢報いた。
…………その方法は自分でも情けないと思うけど。
どうでしょうか? どんなキャラクターか伝わるでしょうか? シチュエーションは書いた自分でも意味不明ですが。
文章の書き方にも作家さんの好みがありますから、自分のやり方が正しいとは思っていません。実際これをやると文章が長くなりますし、あまりくどいと逆効果にもなります。
しかし地の文が薄っぺらいと感じる場合、改めてキャラ紹介をやるつもりで一文書き足すだけで、同時にある程度は薄っぺらさがなんとかなります。あくまでもある程度は、ですが。




