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【連載版】たいした苦悩じゃないのよね?  作者: ぽんぽこ狸


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44/54

44 覚悟




「配布した資料を見てほしい、これは、元ウォルフォード伯爵である彼女が作成したもので、先代たちの手記から精霊の守護像の研究結果を読み取り纏めてくれた」


 ふとレジナルドと目が合うと彼はシェリルに、向かって笑みを浮かべてシェリルも返しておく。


 彼はセラフィーナとも同じようにコンタクトを取っているのかなと思った。


「この資料があればすぐに制作に取り掛かることができる、そして彼女ならば安心して役目を任せることもできる。私は彼女に声をかけることができて、即座にこの件に関わり解決策を見つけ出せたことを誇りに思うよ」

「素晴らしい働きですな、ルーファス王子殿下」

「では、すべて今まで通りに……」


 ルーファスは最終的にシェリルに視線を送り、それからシェリルよりも少し上を見てぎょっとして目を逸らした。


 どうやらクライドが睨みを利かせてくれているらしい。

 

 ルーファスの反応を見て、シェリルは貴族たちの期待を打ち砕くことになる負い目を感じつつもそれでもブレずにいることができる。


「こ、心苦しいが、その役目は名誉ある素晴らしいものだ。私もできることならば変わりたいと願うほどに……しかしウィルトン伯爵は覚悟を決めて了承してくれた。そうだよね、伯爵」


 ルーファスは、それでも丁寧に笑みを浮かべてシェリルのことを見やる。


 その言葉にシェリルはゆっくりと頷いた。


 するとわっと、貴族たちは湧いて拍手の一つでも湧き上がりそうな様子だったが、シェリルはまっすぐにルーファスを見つめたまま即座に返した。


「覚悟は決まっていますよ。けれど、警告した通り、以前の私が契約していた通りすっかりそのまままったく同じにはできません」

「ああ、些細な違いが出てしまうという話だね、それについてもこれから話を詰めていけばいい。なにも今でなくても」

「いいえ、今。お話しするべきでしょう。なんせ……」


 言いながらシェリルは、ハリエット、その後ろにいるセラフィーナ、サイラス、ロザリンドそしてルーファスを見た。


「身を削り民に尽くす王族の皆様方に了承をいただかなければなりませんから」

「了承?」

「ええ、ご存じの通り、契約者の地位はアルバートに奪われ、精霊様に与えられる魔力の総量は私が契約者であったときよりもずいぶんと多くなっていましたね」


 ルーファスは予定にないシェリルの言葉に怪訝そうな顔をしたが、彼以外はその通りだと認めるように頷いた。


 もちろんロザリンドもサイラスもその言葉に納得する。


「それなのに精霊の守護像を破壊し、契約を強制的に破棄したのちに、アルバートが当たり前のようにその苦悩からの逃れて、少ない魔力の私に契約者を挿げ替える様なことは精霊様が損をしている形になります」

「……そ、そのとおりね」

「いくら、ハリエット様のお力があったとしても、それは声を聴く能力であって都合よくいうことをきかせられるようなものではありませんもの」

「それは、以前きちんと皆様にお話ししましたわ」


 シェリルの言葉にハリエットはなにかを察知して、そのシェリルの言葉を補足するように彼らに言う。


 そうして協力してくれる彼女に笑みを向けて助かっていることを示す。


「そんな状態で契約をして精霊様が応じてくれるか、私にはわかりませんむしろ精霊様のお怒りを買うようなことになったら? ……その力は強大です、なにが起こるかわかりません」

「そうですわね。どんなことが起こるか考えるだけでも恐ろしい」


 うまい具合に合いの手を入れるハリエットの言葉に、貴族たちもそれもそうかと考える。


 その様子にルーファスはシェリルを警戒するように視線を鋭くして、口を開く。


「だとしても、こうすることが一番早く国民のためになることだよ。それだけは変わりがない」

「ええ」

「それにしてもここにきてそんなことを主張するなんてまさか、その覚悟が鈍ってしまったとかないよね? そもそもアルバートが契約者になってしまったときに、君が止めさえしていればこんなことも起こらなかったのではないかな?」


 ルーファスは最後の切り札だとばかりに、アルバートのことを引き合いに出してくる。しかし、そんな言葉はいたくもかゆくもないのだ。


「……」

「……」

「……」

「そうして黙るということは図星がつかれて言葉もないと受け取ってもいいのかな?」

「いいえ、私はただ、覚悟はあると言いました。今もそうです。その気持ちを捻じ曲げて解釈されるのは、面倒くさいことなので黙りました」

「…………続けて?」


 彼のペースにもっていかれては困るのでシェリルは、たっぷり間をおいて彼がシェリルの話を聞くというスタンスを取るまで待った。


 それから、またたっぷり時間をかけて一呼吸してからシェリルは言った。


「先ほど説明した通り、今までと同じ契約をすると精霊様が損をしてしまう。けれど貴族たちに人々に負担をかけずに王族が民のために尽くすというルーファス王子殿下たっての希望だけは叶えられるように、精霊の守護に対等になる契約を考えました」

「それは、どのようなものかな」


 ルーファスに問いかけられてシェリルは彼をまっすぐ見て返した。




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