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これで解決!ヘタレイケメンの治し方  作者: 奈瀬朋樹
ヘタレイケメンの実態
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07話 ガンガンいこうぜ!

「……………お勤めご苦労様」

「……………真守もお疲れ様」


放課後がこれ程までに長く、待ち遠しく感じたのは初めてだ。大輔には女子を吸い寄せる特殊スキルが備わっていて、しかもその能力を発動させたまま俺の所に非難してくる丸投げっぷりで、とにかく大変だった。


だけど俺は女子から見れば興味の対象外で、ぶっちゃけ異物である。


なので〝友人Aは黙っていて〟という威圧を浴びない様、大輔が言葉に詰まった場面でだけ無難なフォローを入れる立場に徹したけど、当の大輔が委縮して全然喋ってくれず、そのシワ寄せが全部俺にきてしまったのだ。


昼休みは美緒の忠告を鑑みて、大輔は購買に向かうフリをして女子をまいてから中庭で俺と合流、その時に弁当を渡すという手筈を大輔にメールして平穏な昼食にありつけたけど、中庭でも女子の視線が大輔に集まっていたからなぁ……。その後もひたすら女子に揉まれ続けて、駅ホームでようやく2人になれたのである。


「今日は仕方ないけど、ずっとこのままって訳にはいかないぞ」

「……………うん。分かってる」


大輔は女子達の会話を当たり障りのない曖昧な言葉でかわし続けるだけで、入学して間もない今は大丈夫でも、そんな煮え切らない態度を続ければ、事態は悪化していくだろう。


この件で女子が悪いとは思えない。


高校生にもなれば恋愛がしたいと思うのは自然の摂理で、好みの異性を発見したら親密になるべく行動も至極真っ当な事だ。そして競争率が高い物件には積極的に迫る必要がある。しかも大輔は見るからに押しに弱そうな性格で、最早先着一名早い者勝ちバーゲンセール、駆け引き無用の〝ガンガンいこうぜ〟で押し切る!という有様だ。


ただ、当の大輔の表情が妙に曇っているというか、蒼ざめているのが気になる。

まるで、何かに怯えている様子に。


「けど群がってきた女子の大半は、本気じゃなかったな」


「えっ、そうなの⁉」


「イケメンって理由だけで近づいてきて、その流れに便乗して群がってきた子も多かったぞ。ノリと勢いだけで騒ぐ場面って結構あるだろ」

「うん、見た事ある!」


この意見に大輔が驚きの表情でコクコクと頷いてくる。


「それに美形・人徳がある奴とは仲良くなるに越した事はない。男だって、チャンスがあれば美人と話したいって思うだろ。例えそれが不釣り合いでも」


「へぇー、成程。どうして真守はそんなに詳しいの?」

「引っ越し続きで色んな人を見てきたからだ。電車来たぞ」


この後も電車内で客観的な意見を並べて、大輔自身がどうしたいかを一晩やるから考えておけと伝えたら、大輔はまるで希望が見つかったかの様に頷いてきた。


やっぱり昔と変わらず、分かり易くて素直な奴だなぁ。



   ◇  ◇  ◇



「じゃあな真守。車はもういいって彩さんに伝えておけよ」

「うん、分かった。バイバイ真守!」


爽やかな笑顔になった大輔と改札出口で別れたけど、当然ながら安心はできない。さっきの励ましに嘘はないけど、ポジティブな意見だけを厳選して伝えただけで、ガチで大輔を狙っている女子も多いだろう。そして何よりも気になったのが〝ノリと勢いだけで騒ぐ場面がある〟という俺の意見に、大輔が〝見た事ある〟って答えた所だ。この反応は、知ってはいるけど体験したことがないって反応だ。


大輔は俺の知らない5年間でイケメンに成長した。その過程で性格もある程度は改善されて人付き合いもマシになったと思ったが、残念ながらそうじゃないらしい。


「はぁ、とりあえずスーパー行くか」


今日は振り回されて疲れたから、今晩は美味いものを食べよう。春は野菜が美味しい季節だから豚肉と炒めて、余裕があればきんぴらごぼうを、いやでも切り干し大根が冷蔵庫に残っているから、先にそっちを……。


「止まって」


急に後ろから肩を掴まれてしまい、不良なら即行で逃げ出す心構えをしてから振り返ってみると。


「なんだ美緒か。脅かすなよ」

「話がしたいから来て」


「いや、連日お邪魔するのは悪いし、これからスーパーで晩飯の野菜を買わないと」

「家じゃない。野菜も好きなだけ食べさせるから来なさい」

「……分かりました」


難色を示した途端、また強引に手を握って逃げられない様にしてきたので是非もない。こうしてヘトヘトな体を引き摺りなら、駅前のファミレスに移動となりました。



   ◇  ◇  ◇



「温野菜と豚肉のポン酢かけ定食を1つ」


奥のオープン席に座ると「奢るから好きなだけ注文して」と宣告、この流れは割り勘すら拒否されそうな感じなので、無難なメニューを頼んでおいた。値段も700円だし、これなら角も立たないだろう。


「私はローストビーフセット・ライス少なめで。あと豆腐サラダ、じゃこ大根サラダ、和風三昧サラダを1つずつお願いします。ドリンクバーも2つで」


俺のささやかな気遣いが、容赦なく蹴り飛ばされちゃいました。


「ちょっと待て! なんだそのサラダ祭りは!」

「さっき好きなだけ野菜を食べさせるって約束をした。遠慮は無用よ」

「するよ! 女の子の奢りでがっつけるか!」


奢りにもモラルがある訳で、遠慮なく大量注文は普通にドン引きだよ!


「五月蝿い。これ以上騒ぐならデザートを3つ追加するわよ」


なっ、サラダだけじゃ飽き足らず、更に追加だと!? 人によっては歓喜かもしれないが、タダより高いものはないって言葉もある訳で、そもそも美緒のおこずかいは大丈夫なの? ってお金持ちだったなこの子。


「くっ……、分かった。だからデザートは却下で」

「了解、注文は以上です」


この後、ウェイトレスのお姉さんがニヤニヤしながら注文復唱という羞恥プレイを受けてから、改めて聞いてみる。


「それで、話って何?」


「兄さんについて。あなたも色々聞きたいんじゃないの?」


やっぱりか。

朝の大輔弁当受け渡しも意図的っぽかったし、今日の騒動も美緒には想定内だったのだろう。だからここは素直に状況把握に努めよう。



「じゃあ教えてくれ。大輔は女子が苦手なのか? それとも〝怖い〟のか?」



大輔はやたら低姿勢なうえに卑屈で、とにかく荒波を立てないスタンスを貫き、しかも自分の意見を全く言わないから流されっぱなし。イケメン補正がなければ、優柔不断の一言で切り捨てられていただろう。


「答えは両方。これから理由を話すわ」


本人抜きの過去話はマナー違反な気がするけど、妹の美緒ならセーフだろう。なので静かに首を縦に振ってから、話が始まった。

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