04話 サプライズ再会の原因
※先日までに投稿した計7話を4話に凝縮しました。1話を約3000字前後にしようって判断での編集です。なお内容は変わっていませんので。
我が家は俗に言う転勤族で、大輔とも小4の新学期から年末までの、決して長くはない付き合いだった。そんな渡り鳥生活が続いた中3の夏、荷造り中に父から
『高校から1人暮らしをしなさい。場所はお前が決めていい』
と宣告されたのだ。両親について行くのが当たり前で、他の選択肢があるなんて思いもしなかったから、その提案は衝撃的だった。高校以降の編入は現実的じゃないのが理由と告げられたが、今まで散々振り回してきた境遇にも責任を感じていたらしい。
だけどそれ以上に衝撃だったのは、行きたい場所が思い浮かばなかった事だ。渡り鳥生活は俺が生まれる前から始まっていて、しかも里帰りぜずに出産・俺が1歳になる前に引っ越したので出身地はノーカン、両親の実家も住んだ事がないという有様だ。
地図帳を見てもココだって場所が無く、いっそダーツを投げて刺さった場所にしようと思ったが、こんなてっきとーな理由を両親に説明する訳にもいかず、答えが見つからなないまま荷造りを続行、今回のお別れ会で貰った寄せ書き色紙と粗品(クレーンゲームの美少女フィギュア)をお別れ会専用段ボールに詰めようとしたら、片方を大輔に渡したリストバンドが目に入ってきたのだ。
大輔とは年5~6通の頻度で文通が続いていた。
確かに俺は手紙をくれたら必ず返事を出すって約束をした。
だけど、週5~6通はウザかった。
しかも夕食が唐揚げだったとか、空が晴れていたとか、しょーもない駄文が長々続くだけの毎回返事に困る内容で『もっと読者を楽しませる工夫をしろ』って要望を加えたら、庭の昆虫、妹の寝顔という微妙な写真が添付されるという、やっぱり返事に困る有様だったのだ。
こんなやりとりが大輔と別れた後に一ヶ月も続いて、つい『今後は簡潔な文章だけでいい。連絡も季節の節目だけにしろ』って返事で、俺と大輔の関係はただの文通仲間という形で落ち着いたのだ。だけどこの関係は意外にもずっと続いて、手紙を書いたり読んだりな時間も、案外楽しかったのかもしれない。
他に行く当てもないし、あの町に戻ってみるか。
そう考えながら恙無く引っ越しを終えて新居に移動したら、転送シール付きの残暑見舞いが大輔から届いていて『山桜高校へ合格する為に勉強中』とあったので調べたら、大輔はあの学区内で一番偏差値の高い公立高校を目指している事が分かった。
あいつ、頑張ってるんだな。
それなら俺も、頑張ってみるか。
レターセット入りの段ボールを真っ先に開き、新住所と近況報告の他に『全力で勉強して山桜に絶対合格しろよ!』って激励を加えて、これでもう後戻りはできない。そうして勉強漬けの日々がスタート、大輔との文通頻度も週一ペースに変更して受験日まで励まし合い、勉強に集中し続けられたのが勝因だろう。そうして無事合格、戻ってきたという次第だ。
◇ ◇ ◇
「大体こんな経緯だけど、質問ある?」
「何で同じ高校を受験するって連絡しなかったの?」
「いや、だってもし『俺も山桜を受験するから、高校で再会しような!』とぬかしておして俺だけ不合格になったら、格好悪いじゃ済まされないだろ」
ガチで死ぬ程恥ずかしい事になっちゃうし、宣言後のプレッシャーがデカ過ぎる。てゆーか落ちたらショックで立ち直れず、そのままニートまっしぐらだよ。
なので受験前日は一切寄り道せずに高校近くのビジネスホテルに直行、当日も隠れる様に受験会場に移動して、試験終了後は即座に新幹線に飛び乗りました。同行した母さんから「不審者っぽかった」って笑われたけど、大輔とばったり再会はリアクションに困る訳で、それくらい察してほしかった。
「じゃあ、何で兄さんの手紙を読まなかったの?」
「それは……、引っ越しが忙しくて。今までは親の会社が引っ越し手引きしてくれたけど、当然ながら今回はそれがなくて、アパート探し・荷造り・市役所等の手続き三昧やらで春休み中はフル回転で全然時間が……」
「たかが数分で読み終わる手紙が読めない程に、忙しかったの?」
ズバッと図星を突かれ、睨みっぱなしな美緒の眼光に威されてから、がっくり肩を落とす。
「すみません。大輔が大泣きして別れた場面を思い出しては、戻るって返事を出すのは小っ恥ずかしいなーって今更意識しちゃって、速達で届いた封筒の裏表紙の『合格した』って文字を確認した後、後で後でと後回しにし続けて、今日に至っちゃいました」
「……………そう。納得した」
「……………いや美緒さん。全然納得してませんよね? 胸ぐら掴んで睨みながら言う台詞じゃないですよね?」
ビンタ数発は覚悟しようと身構えていたが、幸いにもそんなドメスティック展開にはならずに美緒の手が解かれたが、こちらを一瞥してから、
「あなたの経緯、兄さんには私から伝える。もう手紙は読まなくていいから」
「えっ、それってどういう…」
意味なのか聞こうとしたら、ドタドダと迫ってくる足音が近づいてきて、
「真守っ、待たせてごめん!」
「やっと来たか大輔。……何で制服?」
「真守が制服だから着てみたの! お揃いだね!」
「お、おう。そうだな」
同じ服装になると、素材の差がここまで際立ってしまうのか。鍛え抜かれた細マッチョは制服越しでも存在感を示しており、そこに長身という要素がシナジー効果でイケメンオーラが無我の境地に達している。
もはや大輔と並ぶのは罰ゲームと同等だ。周りの男子全てが大輔の引き立て役となり、強制的にモブキャラと化すだろう。そんな感想を胸に秘めていると、美緒が大輔に近づいてから、
「兄さん。あの手紙、届いてなかったみたいよ」
「ええっ⁉ そうなの⁉」
驚きの表情で大輔が声をあげ、その後ろから美緒が物凄い形相でこちらを見ている。
「ウン、ソンナテガミ、シラナイデス」
「……そっか、届いてなかったんだ」
目に見えて落ち込む姿を晒す大輔に、凄まじい罪悪感が襲ってくる。ここは全てを打ち明けて謝罪した方がいいのではと思った瞬間、背後に回ってきた美緒が俺の首をガシッと掴んでから、耳元に顔を寄せて、
「今更読んだら……、分かる?」
この囁きに、全力で首を縦に振っておきました。なので手紙は知らない体で、春休みは引っ越しで忙しかったという趣旨を伝えて、そうしてひと段落?した所で、彩さんがカメラを取り出してくる。
「ねぇ真守君、大輔と並んでくれない? 記念写真撮らせて~」
「えっ⁉ いいの?」
彩さんからお願いって笑顔を向けられたので、目をキラキラさせた大輔と並んだのだが、
やっぱりデカい!
デカ過ぎる!!
相手の背が高いと委縮してしまうのが人の本能であり、しかも細マッチョという体幹が威圧感を放ち、その頂上にイケメンフェイスが聳え立っていれば、無条件降伏も辞さない所存だ。
「成長したな大輔、ビックリだぞ」
「全部真守のおかげだよ。あの約束があったから、ずっと頑張れたんだ」
んん、約束?
そういえば大輔と別れる前、一緒に作った物が……
「美緒~、あなたも並んで~」
「何で私まで」
「真守君を連れて来たのは美緒でしょ~」
「そうなの⁉ ありがとう美緒! 一緒に撮ろう!」
「……はぁ、分かったわ」
美緒が渋々こちらに来てから、彩さんが嬉しそうに写真を撮ってくれました。こういう場面は慣れてないから、こそばゆいなぁ。そんな撮影会も終わってティータイムが始まった途端、大輔が頭を下げてくる。
「真守、今日は休んでごめんね。わざわざ来てくれて、すっごく嬉しいよ」
「そんなの気にするな。大輔との再会も、結果的にこれで良かったと思ってるから」
「ほんとに?」
この言葉に満面の笑みをしてきた大輔に、
「ああ、だってこんな超絶イケメンと前情報なしで遭遇したら、同姓同名の別人としてスルー確定だったから」
「えーーーーーーーーーーー」
ギロッ
この至極真っ当な筈の意見に、美緒が思いっ切り睨んでくる。兄妹仲が良好なのは何よりだが、拗らせ気味っぽいなぁ。
「あと今更だけど、大輔って呼び方のままでいいか? 昔馴染みとはいえ、5年もブランクあるから」
「いい! 昔と同じがいい!」
「そ、そうか。じゃあ美緒は?」
この問いかけに美緒が黙り込んだ後、興味なさそうに横を向いてから、
「…………………好きにすれば?」
「あっ、はい。……じゃあ校内とか場所によって佐藤さんと呼び分ける感じにします」
この意見に否定はなかったので、とりあえずOKって事にしておこう。そうしてティータイムが始まったのだが、何故か俺と彩さんが喋ってばかりな展開となりました。大輔は話を聞いているだけで楽しいという姿勢でお菓子を食べ続け、美緒は俺をじーっと見続けるという有様、なのでこの町が5年でどう変わったか、スーパー等のインフラ情報という無難な話題を彩さんと続けて、あっという間に時間が過ぎていきました。




