第64話 二人の正体
「えっ? この男、ユニポニーの兄貴なの?」
俺はユニポニーに尋ねる。
「はい、私の兄のケロースです」
ユニポニーは俺から身を放しながら答える。
「ポチ! そういう事だから放してやれ」
「わう!」
ポチは吠えるとともにケロースを放す。
「すまなかったな、俺の名はイチロー・アシヤ。このフェンリルは俺のペットだ。恐らく不審者と思って捕まえたのだと思うが、悪く思わないでくれ」
そう言って、俺はケロースに近づく。
「ち、近寄らないでくれ!! 汚らわしい!!」
「えぇぇぇ~」
なんだよ、ユニポニーもこいつも兄妹揃って、男性恐怖症かよ… なんなんだよ、一体…
「いや…すまないが、君からは生理的嫌悪感を感じるんだ…悪く思わないでくれ」
うわぁぁぁ… そこも一緒かよ… しかも、生理的嫌悪感を感じるけど悪く思うなって… これ、喧嘩売ってるようにしか思えないぞ?
俺は握手しようと差し出していた腕を戻し、そのまま腕組みをする。
「しかし… ここは素晴らしい娘さんばかりだね… 私を捕まえた獣人やフェンリルも素晴らしいが、その二人の幼女も素晴らしい! そして、特に君! 君が一番最高だよ!!」
そう言って、ケロースはクリスを見て褒め称える。
「えっ? わ、私ですか!?」
「そうでしょ! ケロース兄さま! その方は本当に素晴らしいですわよね!!」
妹のユニポニーも揃ってクリスを褒め称え始める。一体、この兄妹はどうなってんだ? なんでそこまでクリスがお気に入りなんだよ?
「いやいや、私はそれ程でも…」
二人に褒め称えられたクリスは、にやけ顔をしならがらはにかむ。
「お二人とも、クリスをお気に召して頂いたのはいいが、そろそろ話を戻さないか?」
俺がムスッとした顔で告げると、我を取り戻したかのようにこちらに向き直る。
「あぁ、そうだったな、すまない。余りもこちらの娘さんが素晴らしくて…」
という訳で、皆座って落ち着いて話すことになったのだが… なんか、納得できない。
あの二人が俺の事を非常に毛嫌いをするので、ソファーにはユニポニー、ケロース、シュリ、カローラが座って、俺は簡易の椅子である。ポチは俺の横で寝そべり、その上にミケガいる。
まぁ、この馬車の主であるこの俺が簡易の椅子なのは、本当に納得できないが、カズオに至っては目に入れるのも嫌と二人が言うので、御者台にいる。それと比べたらマシか…
「で、思ったんだが… お前ら兄妹二人はバイコーンに襲われたんだよな?」
「は、はい…そうです…」
妹のユニポニーが答える。
「でも、バイコーンって、基本、処女・童貞の奴が近づかない限り、襲ってこないと思うが、お前らなんで襲われたんだよ? おかしいだろ?」
俺はそう言って、手に持っていた飲み物を啜る。テーブルから離れているので、ずっと持っておかないといけないのが面倒だ。
「お兄さま…」
俺の言葉にユニポニーがケロースの顔を覗き込む。
「言っても大丈夫なのか?」
ケロースは悩む表情をユニポニーに向ける。
「なんだよ! お前ら隠し事でもあるのか? もしかして、バイコーンの角を狙ったとかか?」
「あ、あんな汚らわしい魔物の角なんて死んでもいりません!!」
俺の言葉にケロースが声を荒立てる。いや、バイコーンの角は媚薬や精力剤に使えるから結構値が張る物なんだが… 金目の物をいらないって、そこまで潔癖症なのか?
「じゃあ、汚らわしいから殺してやろうと思ったとか?」
「いや、近づきたくもありません!」
ケロースが続けて言う。
「じゃあ、なんだよ。バイコーンの方から積極的にお前たちを襲いに来たのか?」
「そ、それは…」
俺の言葉にケロースが声を詰まらせる。
「ケロース兄さま… もう話してしまいましょう…その方がいいわ」
「しかし…それは… 分かった話そう…」
ユニポニーの説得にようやくケロースが腹を決めて話すようだ。ケロースが俺の方に向き直る。
「実は我々はユニコーンなのだ」
「はっ? ユニコーン?」
俺はケロースの告白に目を丸くする。
「ユニコーンって言っても… お前ら人…」
「フェンリルも人化をするし、わらわも人化しておるだろう、ユニコーンも人化してもおかしくないじゃろう」
シュリが二人の人化を正当化する。
「いや、まぁ、確かにそうだが、猫も杓子も人化しすぎだろう」
「杓子は知らんが、猫ならほれ」
そう言ってシュリはミケを指さす。そうだわ、猫も人化してるわ…
「まぁ、確かにそうか…今までの言動を考えたら確かにユニコーンっぽいな」
「わらわとカローラ、そしてクリスが気に入られていたのは、そのせいじゃな」
「でも、なんでクリスだけこんなに気に入られているんだ?」
別に処女性を求めるなら、そんなに違いはないだろ?
「はい! それはここまで処女を拗らせた方が珍しいからです!」
ユニポニーは声高らかに答える。
「わ、私が処女を…拗らせている? これは褒めらているのか、それとも貶されているのかどっちなのだ?」
ユニポニーの言葉に、問題のクリスが訳が分からないといった顔をして首をひねる。
「それはけな…」
「褒めているんです!!」
シュリが口に出そうとした所へ、ケロースが被せてくる。
「ここまで拗らせている人は本当に稀です! 貴方は一生、処女を拗らせ続けてください!」
俺もユニポニーとケロースのこの喜びように首を捻る。
「しかし、そこまで、処女と非処女、童貞と非童貞で違いがあるのか?」
「ありますよ」
意外なところ、カローラから返事が来た。
「私も場合は主に血の味についてですが、処女や童貞の方はピュアな味わいで、非処女や非童貞の方は雑味がありますね」
「なんかワインの味の評価みたいだな…」
血のソムリエみたいなのもいるのか?
「確かにそれに近いですね。でも、それが良い悪いとは異なりますね」
「そうなのか?」
「はい、非処女が好きなヴァンパイアもいますし、処女が好きな方もいます。ちなみにカズオの味はえぐ味をひどく感じました」
あぁ~ あいつの場合は前も後ろはパンだけど、非だからなぁ~
「ちなみに俺はどうだったんだ?」
「いや、イチロー様の血液は直接体内に取り込んだので味は分かりません」
「そうなのか?」
「はい、でも力は大変ありました。そこが、血の味と血の持つ力の違いですね」
血と味と血の持つ力か…
「食べ物と一緒で、美味しくても栄養の無いものと、不味くても栄養のあるものの違いみたいなものか…」
「ところで話の続きをしてもよろしいですか?」
ケロースが俺に聞いてくる。
「あぁ、すまんすまん、脱線したな。それでお前らがユニコーンの人化した存在だから、バイコーンに襲われているって事だな?」
「はい、そうです。あいつらめ、ずっと我々のことを追ってくるのですよ… それで、貴方たちはお強い様に見えるので、お願い事があるんですが…」
ユニポニーとケロースは真剣な顔を俺を見てくる。
「俺たちにバイコーンを倒して欲しいってか?」
「そうです。もし倒してもらえるならこれを…」
そういって、二人は懐から何か取り出す。
「それって、ユニコーンの角じゃねぇか!!」
二人の手のひらにはユニコーンの角があった。
連絡先 ツイッター にわとりぶらま @silky_ukokkei
ブックマーク・評価・感想を頂けると作品作成のモチベーションにつながりますので
作品に興味を引かれた方はぜひともお願いします。
同一世界観の『世界転生100~私の領地は100人来ても大丈夫?~』も公開中です。
よろしければ、そちらもご愛読願います。
https://book1.adouzi.eu.org/n4431gp/




