第46話 報奨金と仲間の証
城で色々あった俺は、精神的に疲れていたので、とりあえず休憩する事にしていた。ソファーの上に身を投げ出すように座り、気分転換の為にお茶を入れるように言ったのだが、暫くして、袋を被って荒い息をしたカズオがコヒーを持ってくる。
顔を見せたら見せたでキモいが、隠したら隠したで、なんだか、金曜日のジェイソンみたいで不気味だ… ほんと、こいつは何とかならんものか…
そんな事を考えていると、馬車の外から物音が聞こえる。
「たのもー! 勇者イチロー・アシヤ殿はおられますか!」
ウリクリの城の者か?
俺が出ようかと思ったが、先にカズオが外に出てしまう。
「ひぃぃ!! 化け物!!」
俺は慌てて、カズオを押しのけて、馬車の扉に向かい、カズオを馬車内に押し込める。
「すまん! すまん! こいつは俺が服従させてる部下だ! 危害は加えん、驚かせて済まなかった」
俺がそう告げると、ウリクリの文官らしき人物は、安心して胸を撫でおろす。
「左様でございましたか、しかし、勇者認定される程の人物となれば、この様に恐ろしい化け物も支配に置くことが出来るのですね」
そう言って、文官は引きつった愛想笑いをする。まぁ、確かに恐ろしいが、それは普通の脅威ではなく、変態的な脅威だが…
「で、なんの用なんだ?」
「あぁ、そうでした。マイティー女王からの報奨金とその他をお持ちいたしましたので、受理していただけますか?」
あぁ、パレードの代わりに報奨金をくれると言っていたな。その他ってのはなんだ?
俺は、馬車から降りて、文官の前まで進み、差し出された袋を受け取る。
「受け取りのサインもいただけますか?」
報奨金の入った袋を手渡した文官は、懐から書類を取り出し、俺に受領のサインを求める。
「あぁ、サインだな。それより、その他ってのはなんだ?」
「はい、アシヤ様には既に勇者認定の証をお渡ししてますが、お仲間の分の証をお渡ししていなかったのでその分です」
俺は袋を小脇に抱えて、差し出されたペンを使ってサインをする。
「パーティーメンバーの分の証もあるのか… 俺、前のパーティーでは無かったぞ?」
「はい、勇者パーティーから追放された者が、悪事を働く事件が御座いましたので、制度が変更されたのです」
俺の事じゃないよな… 俺、ロアンパーティーを偽って、勇者特権使ってないし、それに悪事も… 人里でババアを剥いだのはバレてないよな… ちゃんと袋被って変装してたし…
「へぇ~ そんな事があったんだ。では、パーティーメンバー登録はしなくていいのか?」
俺は平静を装いながら答える。
「いえ、必要です。証を偽造する者が現れる恐れがあるので、なので、パーティーメンバー登録の用紙もお持ちしました」
そう言って、文官は受領の書類を懐にしまい、新たに登録用紙を出す。
「色々面倒事が多いんだな… ん~ パーティーの登録枠は五人か」
「はい、基本五人ですね。増員手続きや、変更手続きは各地のギルドでも行えますので。あと、その辺りの詳しい説明は、袋の中に『勇者心得の手引き』という冊子を入れておりますので、一度、目を通してください。各種手続きや、勇者に対しての支援や補助など、又、勇者たるものの気構えや素養についても記されております。まぁ、アシヤ様にとってはその様な気構えや素養など、今更だとは思いますが」
そういって文官は『ははは』と笑う。色々と後ろめたい事がある俺には、その言葉と笑いが煽っている様に思えたが、まぁ、今までの様子を見る限り、俺の後ろめたい事をこの文官が知っている感じがしない。
そんな事より、今はパーティーメンバー登録だな。えぇっと、今の俺の仲間と言うと、ハイオークのカズオ、シルバードラゴンのシュリ、フェンリルのポチ、ヴァンパイアのカローラの四人だな。骨メイドは数に入れてなくていいだろう。しかし、揃いも揃って人外ばかりだな…とても勇者パーティーのメンバーとは思えん… この際、城で留守番しているクリスでも入れとくか? いや、後で知れたら、あいつ、煩そうだな… 止めだ。
俺はとりあえず、この四人?正確には三人と一匹をパーティーメンバーとして、登録用紙に記載して、書類を文官に返す。
「おや? オークにフェンリル、ドラゴンとヴァンパイアですか…人間のメンバーはおられないのですか?」
文官の言葉が、『お前、人間の友達いないの?』という意味に聞こえて、心が痛む…
「いや、逆に凶悪な人外ばかりなのでな… か弱い普通の人間では、俺達についてこれないのだ…」
俺は片手を顔に隠す様にあて、ふっと笑い、なんとなく中二っぽい感じで返す… なんか、昔の自分の古傷を抉るようで、更に心が痛む。
「おぉ!! さすがはあの剣豪ノブツナ様が認めた勇者様! そのようにいつ寝首を描きに来るか分からない化け物たちの中に身を置いて、人類の為に戦っておられるのですね!!」
いや、最初はそんな事もあったが、今では自身の心配よりも、あいつらの行動に親や飼い主の様な注意を払っている状況だから、そんな大層な状況でもないのだが… なんか、滑ったギャグを気を使って大げさに笑われている感じだな… もうやめてくれ、俺の心のライフがゼロになりそうだ…
「私どもウリクリ王国も全力でアシヤ様を支持いたしますので、なにか私どもの力が必要な時は、他国であってもギルドを通して連絡して頂ければ、支援いたします。お気軽にお申し付けください」
「あぁ…分かったありがとう…」
「それでは失礼いたします」
そう言って文官は頭を下げて立ち去って行った。俺はそれを見届けると、自分も馬車の中に戻っていく。
「主様 なんであったのじゃ?」
中に入るとシュリが駆けつけてくる。
「あぁ、報奨金とお前たちのパーティーメンバー登録をしていた」
おれはそう答えると、袋の中を漁って、メンバー証を取り出し、シュリに手渡す。
「ほれ、お前の分だ」
「ほぅ! ありがとう!!主様!」
思った以上にシュリが喜ぶ。そこへ、カローラも近づいて来て、俺の袖を掴む。
「イチロー様、私も私も!」
「おう、ほれ」
「わぁーい! ありがとう!」
カローラも思った以上に喜んでいる。その様子を見ていると、背中に荒い息遣いを感じる。俺が振り返って見てみると、袋を被ったままのカズオが無言で両手を差し出していた。
「お前、無言で後ろに立つなよ…で、お前も欲しいんだな?」
カズオは無言でコクコクと頷く。
「ほれ、お前の分だ」
俺がカズオの分を渡すと、袋で表情は見えないが、小娘が喜ぶような仕草をする。俺はそんなカズオを無視して、小物入れの中を漁り、紐を見つける。
「ポチ!」
「わう!」
ポチも自分が呼ばれるのを待っていたようで、すぐに俺の前に来て、お座りをする。
「よーし!よし!よし! お前も待っていたんだなぁ~ よし!よし! 賢いぞ~! ポチ!」
「わう!」
俺はポチの顔を両手で挟んでワシワシする。
「お前の分の証もつけてやるからなぁ~」
俺は先程、見つけた紐を使ってポチの首に証をつけてやる。
「これで、お前も正真正銘俺の仲間だ! よーし!よし!」
「わう!」
ポチに付け終わった所で、皆を見回す。どいつもこいつも、証ぐらいで想像以上に喜んでいる。
「なんで、そんなに喜んでいるんだ?」
俺は皆に問いかける。
「わらわは何度か人里に出かけた事もあるが、これさえあれば、気兼ねなく、街の中を歩き回れるのじゃろ?」
「私も、自分でカード買いに行きたい!」
シュリとカローラはそう述べる。なるほど、そういうことか…で、俺はカズオを見る。
「お前は前に変装して捕まったからな…」
カズオはコクコクと頷く。
俺は皆の喜ぶ姿を見てから、文官からもらった袋の中を確かめる。
「よし、そんなに街に行きたいのだったら、皆に小遣いをやろう」
俺の言葉に、皆は俺に向き直り、瞳を輝かせる。
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