第34話 カード談義と敵情視察
「うぉぉぉぉ!!! やっと出たぁぁぁぁ!!」
俺は開けたカードパックから一枚のカードを見つけると、ガッツポーズをして叫ぶ。
「わらわには、なんでそこまで騒ぎ立てるのか良く分からんのう…」
念願のカードを引き当てて、興奮する俺とは対象に、シュリは冷ややかに述べる。
「お前はこのゲームをやっていないから分からんのだ! ウリクリ限定パックの期間限定カードだぞ!? この機会を逃せば次に手に入らんのだぞ? それはもう手に入れるしかねぇだろ!!」
「うんうん!! そうそう!」
カローラも俺のとなりで、嬉しそうにパチパチ手を叩きながら喜ぶ。
「しかし、だからといって、最初に買って来た2つに入っていないからと、店に戻って、置いてある全てを買い占めるのはどうかと思うのじゃが…」
シュリの言う通り、テーブルの上には開封されたカードパックが山積みされている。俺はそんな中で、最後のから2つ目のパックでようやく念願のカードを引き当てたのだ。
「欲しいカードは引き当てるまで、買い続けるのが基本だ! 前の世界ではそんなに金を持っていなかったから出来なかったけど… こうして、手に入れると嬉しいなぁ~」
俺はそう言って、念願のカードを両手で持って、高く掲げる。
「ねぇ!ねぇ! イチロー様! 私もそろそろ、じっくりカード見せて! 見せて!」
カローラが俺のとなりで、カードめがけてぴょんぴょんと飛び跳ねる。
「待て!待て! 俺もまだじっくりとカード見てないんだ。一緒に見るぞ」
俺はカードをテーブルの上に置くと、カローラと二人でカードを覗き込む。
カードのタイトルは『プリティー魔法少女☆プリンクリン』と記されており、元の俺の世界でも通用するレベルの可愛らしい女の子のイラストの絵が描かれている。実際にこんなに可愛いなら…ふふふ、戦いの後が楽しみだ…魔族相手なら遠慮せずに頂ける。
「しかし、レベル高けーなぁ~ しかも、これ、ラメ加工みたいのまでしてあるぞ」
他のカードとは異なり、見る角度を変えると、キラキラ輝いているようにも見える。
「イチロー様! 説明文も見て!見て! このカード、強さも凄いよ!」
「なになに…このカードで攻撃又は防御した対象の男性キャラのコントロールを奪う事ができる。尚、このカードが破壊等された場合は、そのコントロールを失う…って、結構、つえーなぁ~」
「イチロー様の女性版みたいなカードですね」
確かにこれは俺のカードよりも強い。俺のカードはゲーム除外だか、こいつはコントロールを奪える。これは相手にしたら厄介だ。でも、俺のカードと合わせてデッキに組んだら最強じゃね?
しかし、なんで俺の場合はゲームから除外なんだ?…あっそうか…孕んだから戦力外になるって事か…ハハハ、ゲームの効果を考えた奴はよく考えてんな…
「でも、なんで魔族側のこいつがこんなに優遇されてんだ?強さだけならまだしも、この絵柄の力の入れ具合、尋常じゃねぇぞ?」
「あぁ、多分それは、プリンクリンは自己顕示欲の強い子だから、カードの存在を知って、脅してか魅了して作らせたんだと思う」
カローラがそう解説する。
「ということは、自分でこのカードを作らせたのか…って、テキストの解説、倒せば、コントロールを失うって書いてあるけど、自分の弱点みたいなものじゃねぇか… こいつアホの子なのか?」
「あぁ~ 前から思っていたけどそうみたい。イチロー様。これを見て」
パックを開けていったカードの山を漁っていたカローラが、俺にカードの束を見せる。
「ええっと、このカードがプリンクリンにコントロールを奪われた場合には、スキル純愛の盾が使える様になる…ん~ どれもこれも、このカードの束、同じ効果が記載されているな…って、こいつらが取り巻きって事か… 情報駄々洩れじゃねぇか… アホじゃねえか?」
俺はプリンクリンの取り巻きになった連中のカードを見ていく。その中には見知った顔もあった。
「げっ! 剣豪のノブツナ爺さんまでいるじゃねぇか… あの堅物まで、プリンクリンの取り巻きになっているのかよ… 今頃、剣の代わりにサイリウムスティックでも振ってんのじゃねいの?」
「サイリウムスティックって?」
カローラが聞いてくる。
「光る棒みたいな奴で、女の子の歌手の演奏会で、観客が手に持って振るんだよ」
「あぁ、プリンクリンなら、そう言うの好きそう…やってるかも…」
俺はカローラの言葉に、知り合いの堅物だった剣豪ノブツナ爺さんが、必死になってサイリウムを振っている姿を想像する。
「マジかよ…剣豪の名が泣くぞ…」
「主様、その爺さんは強いのか?」
シュリが俺の顔を覗き込みながら訊ねる。
「あぁ、剣だけの勝負なら俺よりガチ強い。あれは只者じゃねぇ… カローラ、取り合えず、プリンクリンの取り巻き連中のカードを全部、集めろ。他にどんな奴らが取り込まれているか確認する」
俺は取り巻きの事を現代で言う所のアイドルオタ程度だと思っていたが、ノブツナ爺さんの存在で、考えを改める。これはマジ警戒しないと駄目な奴だ。
「イチロー様、ちょっと待って…結構、開けたパックがあるから、一度全部抜き出す。そこから、ダブっているのを抜いてく」
「分かった、俺も手伝うから、全部終わったら、合わせてダブっているのを抜いて行こう」
そうして、俺とカローラの二人でカードの山からプリンクリンの取り巻きを抜き出していく。その後、抜き出し終わったら、それぞれのカード毎にテーブルの上に並べていく。
「これで、全部か…」
俺は並べ終えたカードの一覧を見る。
「50人ぐらいかのう?」
シュリがテーブルに並べられたカードを見て言う。
「いや、カードにするぐらいの主だった者だけで50人と見るべきだと思う」
シュリの言葉にカローラが付け加える。
「ちょっと、ヤバいな… 結構、有名どころのパーティーも取り込まれているじゃねえか…」
「主様、そんなにきつい状態なのか? 先程の剣の腕だけなら主様を上回る奴らがいるのか?」
シュリは不安げな表情で身を乗り出す。
「いや、ノブツナ爺さんを越える奴はいないが、そこそこ腕のいい奴は数多くいるな…ん?」
「どうしたのじゃ?主様」
俺が疑問の声を上げたので、シュリが問いかけてくる。
「いや、こいつら5人パーティーメンバーのはずなのに3人しかいないなと思って…」
「残りの二人が弱いからカードになっていないのか?」
俺はテーブルに並べたカードから、記憶にあるパーティーメンバーを集めていく。
「いやいや、その逆だ、このパーティーはその二人で持っているようなもんだから…って、あ!? そうか!」
俺は途中であることに気が付き、声を上げる。
「なんじゃ?」
「あの二人、女だったのか… 他のパーティーも女性メンバーは悉くカードになってない」
手元に集めたパーティーもそうだし、テーブルに並べたカードもぱっと見は女性が見当たらない。
「プリンクリンは男しか取り巻きにしてないようですね、イチロー様」
カードの説明通りの状況って事か、間違いなさそうだな。
「だったら、勝機はありそうだな… あぁ…こいつ、男だったのか…結構可愛かったんだがやっぱり男だったかぁ…」
男か女か今一分からず、口説く事を躊躇っていた対象が男だった事に、安堵と残念さを感じる。
「主様、どうしておなごがおらんと勝機があるのじゃ?」
「ん? 大体のパーティーで女性が支援や回復役をやっているからな、だから、その辺りを付けばなんとかなるな… んーこのパーティー、あのガチムチオネェがいないな…あれ、マジで女だったのか… こえぇ~」
俺は、女はおらず、男しかいないという条件で改めて、カードを眺めていく。強さうんぬんよりも、そのパーティーの性別状況が分かって面白い。
「とりあえずだな、支援、回復役がいないと言う事は、状態異常にかかっても回復する手段に乏しいと言う事だ」
「あぁ、なるほどじゃな、しかし、わらわは状態異常など使えませんぞ」
「そこはカローラの出番だ。カローラ、お前状態異常得意だったな?」
俺はとなりのカローラに訊ねる。
「はい、イチロー様。初めてイチロー様達と戦った時と同様とは申しませんが、ある程度はいけます」
最初に戦った時にこいつは、色々な状態異常を撒き散らしてくれた。あの時は聖女のミリーズが居たからどうにかなったが…
「なら、こいつらの顔をよく覚えて置け、こいつらは回復職だ。最優先対象だ」
俺はカードの一覧から、俺が覚えている回復職の連中を抜き出し、カローラの前に並べる。
「分かりました。覚えます。で、イチロー様はプリンクリンの魅了に対する対策はお持ちですか?」
「ん~ そこは悩みどころだな… 今の所、使われる前に倒すことしか考えていないが、これだけの面子を魅了している所を見ると、俺もヤバいな」
俺もある程度の抵抗能力を持っているが、有名どころのパーティーが魅了されている所を見ると結構ヤバい。
「それでは、私の血を飲みますか?」
「えっ?なんで?」
魅了の対策とカローラの血を飲むことにどんな繋がりがあるんだ?
「ヴァンパイアは不死でも有名ですが、その本分は魅了です。魅了しないと大人しく血が吸えません。そして、自分自身も魅了されない様に抵抗があります。だから、分量を弁えて飲めば、ヴァンパイアにならず、魅了抵抗だけを得る事が出来ます」
「へぇ~ そんな効能があるんだ」
「はい、あまり知れ渡ると、その効能で狙われますので、ないしょですが」
あぁ、なるほど、その事実が知れ渡ったら、ヴァンパイア狩りが始まるな。もしかしたら、ヴァンパイアが持つ驚異的な治癒能力も手に入るかもしれんしな。
「では、ちょっと頂こうか」
俺は思わぬ事で、特殊能力が手に入るので、嬉しくてちょっとそわつく。
「ホノカ、刃物持ってきて、出来るだけ小さい奴。では、イチロー様、ちょっと失礼して…」
「なんで、俺の膝の上に乗るんだ?」
カローラは俺の膝の上に対面座位の形で座る。でも、なんだろ…全然、エロくも嬉しくも無いな… ただ、子供がじゃれて座りに来ているみたいだ。
「私はヴァンパイアなので、傷の治りが早いんです。だから、血がでたら直ぐに飲んでください」
「では、行きますよ……………………………………………………………………」
カローラはホノカから受け取った刃物を指先に当てるが、固まったままずっと動かない。
「早く刺せよ!怖いのかよ…貸せ、俺がやる」
俺はカローラから刃物を奪い、その手を握って、指先に刃物を当てる。
「イ、イチロー様、その…痛くしないで下さい…」
「バカ、そう言う言葉はもっと大きく、エロピッチピチになってから言え」
その言葉の拍子に指先に刃物が刺さり、ピッと血が滴る。
「ん~~~~~!!!」
カローラは痛みというよりも恐怖で目を閉じる。
「あっ、ズボンの上に零れた、って、早く飲まんと」
俺はこんな幼女の指を舐めるのはどうかと思い、指ごと咥える。そして、チューチューと吸い始める。
そんな俺に、カローラは目を閉じながら頬を染めて、プルプルと震える。ホント、年頃の女の子だったら、興奮するんだけどなぁ~
そして、血の味がしなくなったので、俺は指を咥えるのを止める。するとカローラは瞳を半開きにして恍惚な顔をしながら、俺の膝がら降りる。
「カローラ、大丈夫か?」
「あっ、は、はい、大丈夫です」
カローラは顔を伏せたまま答える。
「じゃあ、目的地に向かって出発するか」
こうして、俺達はプリンクリンのアジトに向かって進み始めた。




