第135話 本当の息子
俺自身が股間から伸びるものを見て驚く。辺りの皆も理解が追いつかない状況に、目を丸くして、ただ、固唾を呑んで状況を見守る。
「ちょっ! えっ!? ホント、これなんだよ!?」
俺自身も状況が吞み込めずに混乱する。俺が何かに覚醒して、自分のマイSONを伸ばせるようになったと言うなら、俺の意識でコントロール出来るはずだ。しかし、敵のジェネラルを倒したのは俺の意思ではない。
「えっと… 旦那ぁ… 前々から人類の枠組みから、ちょっと外れた所があるなとは思っていやしたが… 遂に完全に踏み外しやしたね…」
カズオがポツリと言う。
「しかも、角や爪を生やしたカッコ良い魔王の様な姿ならまだしも… この様な触手を生やした淫魔とは… もう、淫魔王になってしまわれたのか… わが主ながら恥ずかしい…」
シュリは、息子が痴漢で警察に捕まる時に、泣き出すような母親みたいに、涙を流す。
「いや、ちょっと待て! 違う! こんなん知らん! 俺じゃない! 俺じゃない!!」
俺も、痴漢冤罪を受けたかのように弁明するが、敵のジェネラルのあそこを触手で突き刺した後なので、全く説得力がない。
すると、問題の触手が俺の方に伸びてくる。
(怖がらないで、僕、悪い触手じゃないよ)
キェェェェェアァァァァァシャベッタァァァァァァァ!! しかも脳内に直接!!!
「いや、良いも悪いも、そんな事関係なく、驚いてんだよ!!!」
俺は触手に語り返す。
(驚かないで、だって、僕はパパの息子だよ)
「おまっ! パパの息子って… いや、確かに俺の股間から生えているからって… って! そこ! シュリとカズオ!! 俺を可哀そうな人を見る目でひそひそ話をするなぁ!! 俺は正常… いや、肉体的には不安だけど、精神的には正常だぁ!!!」
俺は状況に戸惑いつつも、こそこそとひそひそ話をするシュリとカズオに怒鳴り、自分が(精神的に)正常である事を主張する。
「そもそも、お前は一体何なんだよ! 俺は寝ている間に、宇宙から来た卵に寄生された事なんてないぞ!!」
もし、仮にこいつに名前つけるとなったら、股の間だからマターとかになるのか?
(パパは僕の事、忘れちゃったの? 僕はイチローパパとプリンクリンママの間に出来た息子だよ。パパが僕に意識を集中したから、僕は再び目覚めたんだよ!)
「えっ!? ちょっ! 目覚めたって… それに今、プリンクリンママって… もしかして、お前! あの時の触手か!?」
俺は触手の言葉に、プリンクリンに一度、マイSONを奪われ、触手になって戻って来た時の事を思い出す。
確か、プリンクリンに等価交換魔法で、一度、奪われてしまったが、プリンクリンの魔力を吸って触手になって、プリンクリンに絡みついていたんだよな… その後、プリンクリンがガン泣きして、お願いだから返すと言ってきて、そして、仕方なく返してもらったんだが… その後、元通りになっていたはずなのに…
「えっ? イチロー様、それ、やっぱりプリンクリンの時の触手なんですか?」
今まで、ずっと気配を消して、危機回避をしていたカローラがひょっこりと顔を出す。
(あっ! カローラお姉ちゃんだ!)
「あぁ、そうみたいだ… ちなみにこいつがお前の事をお姉ちゃんって言ってるぞ」
「ひぃ!! やめて! やめてぇよぉぉ!! そんなのにお姉ちゃんなんて言われたくないぃ~!!! いくら私の血が関わっているからって、そんな弟はいやぁぁ~!! 弟と妹はもう三人いるからいらない~!!」
カローラは青い顔を更に青くして、顔を引きつらせて叫ぶ。
「カローラ、お前の血が関わっているって、やはり、あの時、股間に血を落としたからか?」
「えぇ… 恐らくそうだと思いますが… こんな触手と血がつながっているなんて… なんて罰ゲーム…」
確か、プリンクリンとの対戦前に、魅了対策として、カローラの血を飲もうとしたんだよな… その時に、少し零して、それが股間の上に落ちて…
「しかし、カローラ、お前、弟と妹がいるんだな」
「は、はい、すぐ下に双子の妹のトレノとレビンが…」
そう来たか…前々からそんな気はしていたが…
「じゃあ、一番下はコロナとか?」
「いや、デミオです」
なんで会社かわってんだよっ! 会社を統一させろよ!
「私はデミトリにしようと言ったんですけどね…」
あぁ、それはアカン… 色々な所に喧嘩売り過ぎだ…
「ご歓談、お楽しみのところ、申し訳ないのですが、そろそろ、前衛が厳しくなっているのでキング・イチロー様のお手を煩わせて申し訳ないのですが、加勢していただけますか?」
アルファーが俺の所に頼みに来る。ベータはすでに新しく加わった三人を引き連れて、前衛の加勢に赴いている様だ。
「分かった… おい、マイSON、そういう事だが、お前、大丈夫か?」
(任せてよ、パパ! 僕、がんばるから!)
マイSONの俺に対するけなげな言動に、少しこいつの事がかわいらしく思えて来た。なんか、どこかの騎士に出て来た『つむじ』ちゃんみたいな感じだな。
俺とマイSONは互いに頷くと、坑道の先へと向かい、前衛が戦っている次の広間へと向かう。
坑道を進むにつれ、先の広間から聞こえてくる戦闘音が響いてくる。かなりの激戦のようだ。今まで、ギリシャ文字でも足りないぐらいに仲間のジェネラルを増やしたのに、その数が劣勢になるなんて、向こうもそうとうな数を用意しているはずだ。
次の広間に辿り着くと、そこはもうスマッシュシスターズ顔負けの大乱闘状態になっていた。というか、みんな同じ姿なので、どっちが敵でどっちが味方なのか全く区別がつかない… こんな事なら味方のしるしとして黄色の頭巾でも被せるべきだったかな?
「主様、これをいったいどうするのじゃ… 敵味方の区別がつかんぞ…」
後からひょっこりと出て来たシュリが言う。
「だよな… 流石に俺も区別がつかん…」
(パパ! 大丈夫だよ! 僕にはちゃんとわかるから!)
マイSONが直接脳内に語りかける。
「お前には分かるのか!?」
(うん! ちゃんと味方にはパパの匂いがあるから!)
マイSONはそう答えると、股間の触手は何本にも分れ、敵目掛けて突き進んでいく。
ツコンッ!! ツコンッ!! ツコンッ!!
「うぐっ!」
「うわぁ!」
「うっ!」
あっという間に、三人のジェネラルが崩れ落ちる。
「すげー! すげーよぉ!! まるで、サイコミューでも使っているみたいだ!!」
使っているのは触手ってのはアレだが、下半身丸出しで、気分はニュータイプである。ズボンなんて飾りだ!エロくない人には分らんのだ!
「行け! マイSON! オールレンジ攻撃だ! 俺のマイSONからにげられると思うなっ!!」
俺はフハハハハハと下半身丸出しで高笑いをあげながら、敵のジェネラルを次々と突き落としていく。
「もう… 状況も言動も、人の常識の範囲を超えておりやすね…」
「あぁ… わらわたちは新たな魔王…いや、淫魔王の誕生の瞬間に立ち会っておるのかも知れん…」
「わ、私なんて、アレと血縁関係があるなんて… こんな仕打ち…いや羞恥を受けるなんて…」
高笑いをあげる俺の陰で、カズオ、シュリ、カローラの三人は呟いた。




