第101話 貴方も孕まれたのですね…
ここはウリクリの玉座のある謁見の間で、俺は跪きながら、この国の頂点であるマイティー女王が現れるのを待つ。
「マイティー女王のおなぁり~」
女王の登場を知らせる係の声が響き、俺は跪き、頭を下げているので、直接見る事は出来ないが、玉座に誰かが座る気配を感じる。
「勇者イチロー殿、面をあげよ」
声がかかったので、俺は少しづつ頭を上げていき、徐々に玉座の様子が見えてくる。
先ず、始めに女王の足元が見える。パンプスを履いている…
次にスカートの裾… えっ!? スカート履いてんの?
徐々に視線を上げていくと、豪華なドレスにサッシュが見える。ビ、ビキニアーマーじゃない…だと…!?
そして、そのご尊顔を拝謁すると… やっぱり、マイティー女王だ…
前回、謁見した時は、斧持ったドワーフとパンツ一枚の戦士と一緒に冒険してそうなビキニアーマー姿だったが、今日はどういう訳か、普通の女王然とした、豪華で荘厳なドレス姿をしている。普通にめっちゃ美人の女王様だ。
脱いだら凄いって言葉は聞いたことあるが、逆に着たら凄いってのは初めての体験だ… いや、最初からこの姿をしておけよと思う。
「なんだ? 私の何か付いているのかな?」
前回と同じような言葉を言ってくる。
「いえ… 初めて見るドレス姿なので驚きました…」
俺は思わず思った事を口にしてしまう。
「うふふ、身体を冷やすわけにはいかなくなったのでな…」
身体を冷やせないって、今は初夏なのに? なんで?
「どうして?という顔をしておるな、しかし、そなたも関係がある事なのだぞ… 父親のイチロー殿」
「えっ!?」
俺は冷や汗がだらだらと出てくる。もしかして、前回、マイティー女王に逆レされた時に!?
「イチロー殿、そなたの様な強き者の子だねだ、きっと良き子が産まれてくるであろう…」
ここで、顔を背けたり、目を逸らせたりすることは出来ないな… がしかし、こんな時、俺はどんな顔をで、どんな言葉をかければいいのであろうか… 笑えばいいのか?
「お、おめでございます」
俺は少しどもりながら答える。しかし、マイティー女王が孕んだとなれば、またイアピースのカミラル王子がティーナの格の事で悩み苦しむだろうな。今までは俺が孕ませた女の中で格的にトップだったのはイアピースの姫のティーナだったが、ウリクリのトップであるマイティー女王が相手となると落ちるだろ… ってか、俺の扱いはどうなるんだ?
「で、私はどうすればよいのでしょうか…」
俺は恐る恐る尋ねる。
「あぁ、そなたは何も気にしなくてよい。…我がウリクリは夫の立場や配偶者の立場を設けておらぬ、外戚との関係をこじらせると混乱の火種にしかならぬのでな。なので、そなたは単なる子種の提供者だ」
まぁ、歴史を紐解けば、権力者の配偶者で外戚問題で国が乱れる事が多いので、理屈は分かるが、それを実際に対処して実行するのは凄い話だな… これは女王だから出来る事だろう。権力者が男性の場合なら、女性を手元に置いておかないと、その子供が本当に自分の子供であるか確証を得られないが、女性の場合なら、誰の子種であろうと、産んだ自分の子に間違いはない。でも、それって、どうよ…
「所で、子種の父親殿」
「えっ? あっはい!」
マイティー女王は王者らしい腹に一物を含んだ笑みをする。
「子を授かった祝いとして一つ手柄を立ててはくれぬか? イアピースの南部獣人連合で上げたようにな」
まぁ、女王だから、それぐらいの情報はすぐに手に入れるよな…
「どの様な事をすればいいのでしょう?」
「我が国の東にベアース国があるのは知っておるな?」
向こうからベアースについて話を振ってくれるのか、有難い。
「はい、存じております。今、魔族の侵攻によって、国内が蹂躙され、民が逃げまどっているとか…」
「そうだ、我がウリクリもプリンクリンの騒動で身動きがとれなかったが、隣国ベアースも今、魔族に蹂躙されておる。ベアースは海のない我がウリクリにとっては重要な隣国だ。なので、支援物資を運ぶついでにイチロー殿もベアースに行って、戦況を打開してくれぬか?」
「分かりました。マイティー女王の命、このイチロー・アシヤが承ります」
俺は恭しく頭を下げる。
「うむ、良い返事だ。南部獣人連合の件はイアピースの権益になったので、こちらにはあまり褒章を与えてやれぬが、支援物資輸送とその後のベアース解放の前払いとしてある程度の褒美を遣わそう。見事成し遂げた暁には、更なる褒美を遣わす」
「はは、ありがたき幸せ」
こうして、マイティー女王との謁見が終了した。
その後、使いの者から報奨金として、金貨100枚分の金が渡された。結構、渋い… まぁ、国境を接していない南部獣人連合の事はあまりウリクリにメリットをもたらさないからな… 支援物資輸送の護衛とベアース解放の前払いが50枚づつという事かな?
でも、良く考えると金貨100枚分って、日本円にすると1000万なんだよな。前回の報奨金が500枚だったので、ちょっと金銭感覚が狂っているな。
俺は報奨金を懐に仕舞いながら、皆が待つ馬車へと向かう。皆に城の待合室を使えばと尋ねてみたが、やはり馬車の中が一番落ち着くらしい。
「おう、戻ったぞ」
「わう!」
ポチが尻尾を振りながら駆け寄ってくる。
「よーしよしよし! ポチ! 俺を待っていてくれたのか~! 賢いな~ ポチは!」
ここしばらく、ポチをミケやらクリスやらにとられていたので、俺は気兼ねなく、ポチをワシワシする。
「主様! どうじゃった!?」
タンポポの根の皮を剥いていたシュリも駆け寄ってくる。
「おう、向こうからベアースの依頼があった。これで、そのハルヒと言う人物も助けに行けるし、金も貰える。一石二鳥だ」
「おぉ! では、『初恋、はじめました』の続きが読めるのじゃな!」
シュリはタンポポの根を掴んだまま、もろ手を挙げて喜ぶ。
「で、いつ出発するじゃ? 明日か? それともこれからか?」
「いや、支援物資輸送の護衛も受けたから、その準備が終わるまでは待機だな」
俺の言葉に、先ほどまで喜んでいたシュリは少し不安な顔になる。
「それまでの間、ハルヒ殿は無事であろうか…」
「いや、それは何とも言えんな… 全く情報が分からん。俺も後で向こうの情報を調べてみるつもりだ」
俺も女王の配下の者から、ある程度の説明を受けたが、ベアース国は北部をほぼ魔族側に制圧されて、ベアースの軍勢と民は南部の城塞都市を拠点に抵抗を続けているらしい。どの様な敵か、またその数とかは全く分かってないようだ。というか、何か言葉を濁していたな…
俺がそんな事を考えていると、カローラとカズオがシュリの後ろでそわそわしながら、俺を物欲しそうに見てくる。
「な、なんだよ… お前ら…」
カローラとカズオは同じようにそわそわしながら、俺を上目遣いで見てくるが、なんでこんなに可愛げに違いがあるのだろう…
「あのぅ… 旦那ぁ、今回も小遣い貰えるんでやすか?」
「私、お小遣い欲しい!」
あぁ、こいつら小遣いが欲しかったのか… まぁ、何かと協力してもらっているから遣らないとな。
「分かった分かった、小遣いを遣ろう。しかし、城の維持費もあるから、あまりやれんぞ」
そうして、今回は全員に金貨一枚づつ渡していく。もちろん、ポチにも一枚だ。
「これで、色々食材が買えやすね!」
「わぁーい! お小遣い! 私、お小遣い大好き!」
「わらわはどうしようかのぅ… 新しい農業の本を買うか… 将又、珍しい種でも買ってみるか…」
皆それぞれにお小遣いの使い方に思いをはせる。
「とりあえず、買い物と飯を兼ねて、街へ繰り出すか」
皆、俺の言葉に賛同した。




