第六十三話 イケメン君の相談
あれから和奏とはベランダで時々話すくらいの関係を続けている。
一つだけ違うとするなら、お互いに遠慮していた部分がなくなったことくらいだ。
「あーもう、雨最悪ー」
クラスの女子達がそんな風に話していた。
六月に入ると雨続き。
そんな天気ばかりでは、気分が沈んで不満を漏らしたくなる気持ちもわからんでもない。
「雨だとテンション下がるなぁ……」
「僕はそんなに嫌じゃないけど」
「えーまじかよ」
昼休み、幸太が今日は一之瀬と一緒ではなかった。
どうやら一之瀬は和奏と一緒に、他の女子達と楽しく話しながら食べているみたいだった。
いつもみたいに幸太と二人で食べることなるかと思ったが、今日は珍しい人物が一緒だった。
「なんだ天ヶ瀬、僕をじろじろ見て」
「いや……なんか片桐が一緒ってことに慣れないなと」
「たまにはよくね?」
片桐は幸太に用があったらしく、俺達が飯を食べている時に話しかけてきた。
その時に幸太が一緒に飯を食べないかと誘ったのだ。
俺は断られるだろうなと思ったが、予想を裏切るように片桐は幸太の誘いを素直に受けた。
そのため普段と違った昼食に少し戸惑っていた。
「今日は速水と一緒じゃないのか?」
「ああ。というか六花ちゃんのことで聞きたいことがあって」
「え、俺に? 速水さんのことなら、俺なんかに聞いても仕方ないと思うけど」
「いや、そういうわけじゃなくて……女の子が喜ぶものについて聞きたい」
片桐は少し恥ずかしそうにそう言った。
速水に何かのプレゼントを贈るためにだろうと、俺と幸太は察した。
「んーなんだろう。俺はいつも陽香の好きなものをあげてるけど」
幸太がそのまま女子の喜ぶものについて悩み始めた。
幸太が悩んでいるのを余所に、俺は片桐に気になったことを聞いていた。
「プレゼントってことは速水の誕生日か何かか?」
「いやそういうのじゃなくて、六花ちゃんが今回の中間テストで一位だったから。おめでとうってことで何かあげようと思って」
そういうことか……というか片桐と速水、いつの間にか相当仲良くなってるな……。
まぁゴールデンウィークで話をしたのも一ヵ月前だし、そんなもんか。
「そういえば、お前らもう付き合ってるのか?」
「……いや、付き合ってはいない」
「え!? 俺は付き合ってるものだと思ってた!?」
「……そう思われても仕方ない関係をしてると思う。でも、自分の中で整理がつき始めてるから……このままの関係を続けるなんてことはしない」
「……そうか」
幸太は片桐の件にほとんど関わってなかったから事情を知らない。
そのため、片桐達が付き合ってないことにかなり驚いていた。
片桐の中でどんな答えを出すのかわからないが、前を向いていることは確かなので、俺は良い方向に向かっていて良かったと思った。
「それよりも、僕の相談に答えてほしい……」
「あっ、そうだよな。うーん、俺も陽香のことしかわからないしなぁ……修司はなんかないか? 確か妹いるだろ?」
妹と言われても……もう二年くらい一切話してないけどな。
そんなこと思うが、幸太の思っている人物が和奏のことだと思い出す。
俺はそのまま和奏の好きなものを思い出した。
「……可愛いものとか?」
「可愛いもの?」
「あー確かに。陽香もデートしてる時に可愛いものがあると、ついつい見に行ってるな」
幸太の話によると、一之瀬は可愛い小物類があると、立ち寄って見に行ってしまうらしい。
あの容姿で可愛いものを見る一之瀬を想像すると、やっぱり高校生というよりかは中学生くらいに思えた。
「結構いい案かもな。速水さんなら可愛いもの似合いそうだし」
「そうだな……ありがとう。少しそれで考えてみる」
片桐は何か閃いたのか、先程の困った様子ではなくなっていた。
それから俺達は飯を食べ終えると、そのまま話し続けていた。
「片桐って、結構マメだよな」
「急になんだ天ヶ瀬。お前が僕を褒めるなんて気持ち悪いぞ」
こいつ……。
「でも、俺も修司の言いたいことわかるぜ」
「まぁ……日頃からお世話になっているところもあるからかな」
片桐はそう言うと、蓋を閉めてある空の弁当箱を眺める。
どうやら今日食べていた弁当は速水が作ったもののようだ。
幸太も作ってもらっている立場なので、同じように空の弁当箱を眺めた。
このリア充共の様子を見て、俺は軽くため息をついて呆れた。
「幸太は片桐みたいに、もっと一之瀬に感謝しとけ」
「……うっ……はい」
俺が忠告すると、幸太は申し訳なさそうに肩を縮こまらせる。
そんな俺と幸太のやり取りを見ていた片桐は、おかしそうに笑っていた。
俺達はそのまま雑談をしながら昼休みを過ごした。
昼休みが終わる頃になると、片桐は先に自分の席に戻ったが、幸太はまだ居座っていた。
「なぁ修司、最近なんかいいことあった?」
「急にどうした?」
「いんや、なんとなくな。いつもの修司なら他の人が一緒だと嫌がるかなって思ったけど、そんなことなかったからさ」
幸太のこういうところが、人を良く見ていると思うところだ。
前よりも少しだが、俺は人と関わることに抵抗がなくなっていた。
やっぱり、自分の中に溜め込んでいたものを、和奏に打ち明けた影響が大きいと思う。
それから俺は少し笑いながら答えた。
「まぁな」
「へぇ~そっか」
幸太はそんな俺を見ると、少し喜ばしそうに笑って自分の席に戻って行った。
授業中、昼休みに話した片桐の相談を思い出した。
日頃お世話になってるお礼か……そういえば和奏の奴も学年一位だったな……。
そんなことを思いながら横目で和奏のほうを見るが、授業に集中しているため気付かない。
片桐に感化されるわけじゃないが、丁度いい機会だしな。
俺は視線を前に戻して、和奏へのお礼を考えながら授業を受けた。




