第五十三話 看病と来客
神代の顏色は悪く、少し赤くなっているように見えた。
「お前、熱出てるよな?」
俺は神代の額に手を当てる。
神代は普段のように慌てたりせず、大人しく熱を測られる。
思ったりも熱く、かなり熱がありそうだった。
「……うん……でも、寝てれば治るから気にしないで……」
「そういうわけにはいかないだろ」
フラフラな神代に肩を貸しながら部屋の中に入って、寝室のベッドに寝かせた。
「……ありがとう……」
神代は話すのも辛そうに息をしながら横になった。
「無理して話さなくていいぞ。ちなみに食欲は?」
神代は首を少し横に振って、食欲がないことを伝えてくれた。
とりあえず自分の部屋から冷却シートにマスクやタオルなどを持ってくる。
戻ってくると、神代は苦しそうに寝ていた。
俺は静かに額の髪の毛を分けて、頭に冷却シートを貼った後にマスクをつけてやる。
神代は苦しそうなままだが、先程よりは少しマシになっただろう。
その後、神代は食欲がないと言っていたが、食欲が戻ってきた時ように何か作っておくことにした。
小さい鍋、コンソメスープの素、玉ねぎ、人参を自分の冷蔵庫から持ってくる。
他には生姜があればよかったが、なかったので仕方がない。
部屋のキッチンを借りて、鍋に水を入れて沸騰させるまで火にかける。
その間に、火が通って食べやすくなるように玉ねぎを薄く切って、人参も皮をむいて薄く細切りにする。
沸騰したら火を中火にして、ゆっくりと玉ねぎと人参を茹でていてく。
人参が箸で切れるくらいになれば玉ねぎの色も透き通っているので、コンソメスープを入れる。
それから少し待ってば、コンソメスープの完成だ。
手を洗って神代の様子を見にいくと、荒い呼吸をしながら結構な汗をかいている。
俺はタオルで首元や顔の汗を拭いてやると、呼吸が少し落ち着いたので安心した。
俺は落ち着いて他にやれることがないかと考えながら、なんとなく部屋を見渡す。
神代の部屋はテーブルがコタツになるのもだったり、クッションではなくて座布団があったり、昔ながらの日本家屋にありそうなものが多かった。
そんな部屋に少し浮いた感じで、可愛いぬいぐるみが多く飾ってあた。
ほんとに好きなんだな……。
俺は近くに飾ってあったぬいぐるみを見て、そんなこと思う。
ぬいぐるみを眺めていると、近くに写真が飾ってあった。
その写真には、黒髪の優しそうな男の人と金髪の女の人が並んでいて、女の人は金髪の小さな女の子を抱いている写真だった。
おそらく写真に写っているのは神代の両親なんだと思う。
抱かれている女の子は幸せそうに笑っていて、それを優しく見ている二人。
とても幸せそうな写真だった。
そこで俺は、ふと写真の男の人をじっと見る。
なんかどこかで会ったような……。
俺はしばらく昔の記憶を探るが、どうも思い出せない。
どうにか思い出そうとしていると、インターホンが鳴った。
俺は居留守をしようか悩んだが、新聞勧誘とかなら追い返せばいいと玄関を開けた。
「あら? 部屋を間違えてたかねえ」
そこには、両手に袋を抱えた黒髪のお婆さんと思えない容姿の人がいた。
「間違えてごめんなさいねぇ。この近くに神代って苗字の家はあるかい?」
「あ……えーと……ここで間違いないです……」
俺はギャップに驚いて固まってしまうが、なんとか間違えていないことを伝えた。
「え!? じゃあ何かい? あんたは和奏のボーイフレンドか何かかい!?」
「違います! 隣の家の者で同級生の天ヶ瀬です! 神代さん……あー和奏さんの具合が悪そうだったので様子を見に来たんです」
「そうだったのかい……若いのに親切にありがとうねえ」
そう言ってお婆さんは頭を下げた。
「頭をあげてください。大したことをしたわけじゃないので、荷物持ちますね」
「そんな気遣いいらないのに、ありがとうね」
「気にしないでください」
俺はお婆さんから荷物を受け取ると、家に上がってもらった。
「和奏は今寝ているのかい?」
「はい」
「じゃあ、起こすのはよくないねえ。とりあえず、あたしが持ってきたものを片付けるとするかね」
俺達は手分けして、荷物を仕舞っていく。
荷物はスポーツドリンクや風邪薬、それと食べ物だった。
一通り片付けると、お婆さんは和奏の様子を見に行った。
何処に何があるかわからなかったが、俺は何とかお茶を入れていた。
「お茶を入れてくれたのかい? 長居しないから気にしなくていいのにねえ」
俺がテーブルの上にお茶を出すと、お婆さんが寝室から出てきた。
「いえ。遠いところからいらっしゃったんですから、休憩してください」
「出来た男の子だ。ありがたいねえ」
そう言って、お婆さんは座布団に座り、お茶を飲んで落ち着いていた。
「あたしは神代奏子。和奏の祖母になるね」
「天ヶ瀬修司です。和奏さんとは同級生で……友達です」
俺は神代との関係をどういうべきか少し悩みながらも、友達ということにした。
ただ友達と言った時に、何故か少し胸が痛んだような気がした。




