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第百五十六話 勘違いな質問

 店を出てから、諏訪妹に聞く。


「えっと、よかったのか?」


「えっ、あ、はい。本の趣味はお姉ちゃんと優君の方が合ってるので。そっ、それより……」


 何か言いかけた諏訪妹の顏を見ると、何やら顔色が悪くなっていた。


「ど、どうした?」


「す、すみません。人混みに慣れてない人と家族や優君と一緒じゃないので緊張してしまって、ちょっと気分が……うっぷ」


「嘘だろ!?」


 周りを見渡して、幸いにも少し先にトイレの看板が見えた。


「あと少し我慢できるか!?」


「すっ、少しなら……」


 諏訪妹に確認をした後、急いで隣の店にいる和奏に電話をかけた。

 すると、和奏はワンコールですぐに電話に出てくれた。


「どうかしましたか?」


「すまん! ちょっと緊急事態で、店の前付近にいるからすぐに出てきてくれ!」


 俺がそう言うと電話は切られ、すぐに和奏と速水が店から出てきてくれた。


「どうしたんですか!?」


「えっ! この子さっきの人じゃないですか!」


「すまん、説明は後! ひとまずこいつをトイレに連れてってやってくれ!」


 俺が頼むと、二人は頷いて諏訪妹に付き添ってトイレに向かっていた。

 三人がトイレに入ってすぐ、和奏から連絡が来る。


『水とスポーツドリンクをお願い』


 近くの自販機で飲み物を買ってきて、トイレの外で待っていた和奏に渡す。

 それから少し外で待っていると、和奏がトイレから出てきた。


「それで何がどうなって、さっきの子が修司と一緒にいたの?」


「実は――」


 和奏に本屋で諏訪妹と信城に鉢合わせし、何故か諏訪妹が姉に信城と本を見て回るように即したこと。

 そして、諏訪妹が姉の件で俺と話したいことがあったため、俺と一緒に店を出たことを説明した。


「どうして諏訪さんの妹さんが」


「姉が迷惑かけたことを気にしてるみたいだが」


 それも終わった話なので、正直俺としては気にされてもと言った感じだった。


「それじゃあ、妹さんも諏訪さんが私のことを好きだっていうことを知ってるの?」


「それは……」


 そうだろ、と言いかけた。

 しかし、少し前の図書室で初めて信城と会話した時に、どうして姉が俺を監視しているのかわかっていない様子だったことを思い出した。

 それなら、俺に話があるというのはどういうことなのだろう。


「ごっ、ごめんさい。看病していただいて」


「いえいえ! 全然気にしないでください!」


 そんな考え事をしていれば、トイレから速水と一緒に諏訪妹が出てきた。


「もう大丈夫なんでしょうか?」


 諏訪妹の様子見ながら、和奏が心配そうに声をかける。


「え、あ! ほ、本当にすみません! わ、私なんかのために、神代さんの手を貸していただいて!」


 諏訪妹はまるで身分の違う人に出会ったような反応で、和奏に頭を下げた。

 こんな反応をされるのが久しぶりなのか、和奏は少し困ったように笑いながら言う。


「えっと、そんな気になさらないでください。誰でも突然具合が悪くなることだってあるので」


「あ、ありがとうございます」


 それから話をするということもあって、諏訪妹を気遣いながら近くのカフェに入った。

 四人席に諏訪妹から座って隣に速水、その向かいに俺と和奏が隣になって座った。


「買い物中だったのにすまん」


「必要だったものは買えましたので、気にしないでください」


 そう言いながら、和奏は店で別れた前には持っていなかったトートバッグの中身を見せてくる。

 そこにはパイプ式ファイルやら色々入っていた。


「そうです! あとは私用で欲しい物を見てただけなんで、そんなことよりも!」


「ひっ」


 速水は勢いよく隣に座る諏訪妹のほうを向いた。

 そんな速水に驚いて、諏訪妹は小さく悲鳴を上げる。


「おい。さっきまで具合が悪かったんだから、あんまり驚かしたりするな」


 俺が嗜めると速水は申し訳なさそうに笑う。


「たはは、ごめんなさい。えっと、私だけ知らないと思うんで、一年の速水六花って言います。こんなんですが、一応生徒会役員してます」


「あ、ありがとうございます。諏訪真星です」


 二人の自己紹介が終わったところで、速水も和奏も気になってるであろうことを俺から質問する。


「姉と信城を二人にしたが、デートしてたんじゃないのか?」


「でっ!? ち、違います!」


 諏訪妹は顔を赤らめて恥ずかしそうに否定した。


「それじゃ、ただ二人で買い物をしていただけなのか?」


「そ、そうです。この前からお姉ちゃんの様子がおかしくて……張り詰めたような雰囲気から、今度は元気がなくなったような感じで。それで少しでも元気が戻ればいいなと、二人でお姉ちゃんが喜んでくれそうなものを買いに来たんです」


 どうやら速水や諏訪姉の考えとは違い、単純に姉を元気づけるために買い物に来ているだけだったようだ。


「でも、今と違ってかなり仲が良さそうに見えましたよ?」


「そ、それはその。優君と一緒は慣れてるので、仲が良いなんてのは、その」


 諏訪妹は速水の率直な質問に普通に答えているものの、何処か嬉しそうな表情が見える。

 そんな諏訪妹の様子を見て、俺達三人は少なからず想ってるのだろうなぁと温かい目を向けた。

 それから、和奏が諏訪妹に声をかけた。


「諏訪さん、あ、えっと」


「あっ。す、すみません。ややこしいと思うので、好きに呼んで頂いて大丈夫でしゅ!」


「そうですか? それじゃあ、真星さんはお姉さんのプレゼントを買いに来たと言っていましたけど、その買い物は終わったんですか? 男の人はお姉さんと一緒に本屋にいると、天ヶ瀬君に聞きましたけど」


「は、はい。あとは優君がお姉ちゃんにプレゼントを渡してくれると思うので……その方がお姉ちゃんも」


 諏訪妹の小さい呟きに妙な感じがした。

 なんかこれ、ややこしいことに巻き込まれてないか?

 俺と和奏が違和感を覚えてる中、速水は一人ワクワクしながら話を聞いてる。


「それで、その。天ヶ瀬さんに聞きたいことがあって」


「そういえばそうだったな」


「は、はい。えっと、天ヶ瀬さんはお姉ちゃんに……その」


 あぁ……多分勘違いした質問が飛んでくる。


「こ、好意をもっていたりするんですか!?」


 勇気を振り絞って質問する諏訪妹、驚きながら俺を見る速水、諏訪姉の気持ちを知っているため戸惑う和奏。

 そして、変な関係に首を突っ込んでしまっていると気づいて、頭を抱えたくなる俺という構図ができた。

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