第百二十六話 妹と幼馴染と親友
話が終わると、俺達は店を出た。
芹沢達と別れて少し歩いたところで、和奏が疑ったように聞いて来た。
「さっきの井上君の話なんだけど」
「……和奏の予想通りだ」
それから、俺はその時の状況を和奏に話した。
その現場を見たことも助けたことも、全て偶然が重なっただけということを説明する。
和奏は俺の話を聞いて呆れた様子になった。
「……偶然とはいえ、本当に誰でも助けてたんだ」
「あの時はそういう考えだったからなぁ」
「誰かに頼ろうとかは思わなかったの?」
「それで迷惑が掛かったら申し訳ないと思ってたから、そういうことは頭になかった」
「……バカ?」
「おい、流石に直球すぎるだろ」
そんな会話をしながら、色々な店を見て回っていた。
ふと和奏が気になっていたけど、話題に出さなかった話をした。
「ちょっと聞きづらくて聞かなかったんだけど、井上君って芹沢さんに片思いだったりするのかな?」
「友達とは言ってたけど、実は的なやつか?」
「そうそう」
「まぁ……そう見えなくもないけど」
芹沢の苦手を知ったとはいえ、初対面の人の克服に付き合うのは人が良いと思う。
そこに恋愛感情があったとしたら、納得できなくもない。
「でももしそうだったら、井上は打算的な奴に見えるぞ?」
「それでも自分の気持ちを伝えずに、献身的に想い人の克服に付き合ってるんだから応援したくならない?」
「それは……まぁそうかもな」
あくまで仮定の話なので本当のところはわからないが、和奏の言う通りならば応援したくなる気持ちもわかった。
そんな話をしていたせいか、ふと沙希に片思い中の相手がいることを思い出した。
え……片思いの相手が井上で和奏との話の通りだったら、三角関係とか言うやつになるのか。
俺のことを知ってる奴が、もし沙希の片思いの相手なら、やっぱり少なからず影響が出るよなぁ。
俺は嫌な想像をして、沙希に申し訳なくなった。
「どうかした?」
「いや……あっ、そこ雑貨屋だからぬいぐるみとかあるぞ」
「えっ! ほんと!?」
和奏が俺の表情を少し気にしていたが、何とか誤魔化してそのままやり過ごした。
久しぶりに来たせいもあったのか、俺達は思った以上にショッピングモールを楽しんでいた。
気付けば時間は夕飯時くらいだったので、家に帰ることにした。
ショッピングモールからしばらく歩いた帰り道、反対側の歩道で軽く言い争いになっている奴らがいた。
それが顔も知らないような奴だったら無視をしていたのだが、どう見ても良く見知った顏。
そいつらは和奏も見たことがあった。
「修司、あれって」
「海斗と朝倉……それに沙希だな」
正直、今あの空間に飛び込みたくなかった。
海斗と沙希が導火線に火がつくかつかないかのところで、あと少しすれば爆発するような雰囲気だ。
ただ芹沢と井上の頼みもあるし、もうすぐ夕飯時で連絡もせずに遅れれば母さんがキレる。
そのため、爆発寸前の空間に飛び込まざるを得なかった。
俺と和奏が三人のところに向かうと、二人の言い争う声が聞こえて来た。
「こんなことをしていては、君のご両親が心配する。それに修司が知れば黙っていないぞ」
「っ……あんな兄貴なんか関係ない」
「関係なくないだろう。昔から君を一番心配していたの修司なんだから」
「そうだよ! さっちゃんがこんなことをしてるって、しゅうくんが知ったら……」
「っ! あんたのせい……のに……ふざけるな」
朝倉の言葉で沙希のほうが爆発した。
「あんたが兄貴を語るな! 原因を作ったあんたが!」
「あの時のことを琴葉だけが悪いような言い方はやめろ。一番の悪は修司を嵌めようとした奴らだ」
「それでも! 昔から付き合いなんだから あの時の兄貴を良く知ってたはずだ!」
なんだこれ……沙希の行動で言い争いになってるのはわかったんだが、なんで俺のことを嫌っている沙希が俺を庇ってるんだ?
思ってもいなかった状況に戸惑ってしまうが、横の和奏が何か言いたげに服の裾を軽く引っ張った。
歩いてる人達が注目し始めてるし、流石に止めないとまずいか。
「だいたいあんたらは兄貴に……!」
「おーい、俺になんだよ」
「っ!」
「修司か?」
「……しゅうくん」
俺が声かけると、三人はまるで幽霊でも見たかのように、俺のほうを見てきた。
沙希と朝倉が驚くのはわかるけど、海斗もそんなに驚くか? まぁ帰らないとは言ってたけど。
俺が不思議に思っていると、海斗が聞いてきた。
「お前、眼鏡を掛けるくらい目が悪くなったのか?」
「あっ」
海斗にそう言われたため、俺は伊達眼鏡を外した。
「これでいいか。それで俺になんだ?」
「っ!」
「あっ! おい!」
沙希に先程言いかけたことを聞くと、沙希は何も言わず何処かへ走り去って行った。




