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第百十二話 拗ねるお隣さん

 夕飯を食べ終わって二人で食器を洗っていると、俺は和奏に言い忘れてたことを思い出した。


「あ、和奏。明日なんだが、ご飯を作りに来なくて大丈夫だ」


「えっ、どこか出掛けるの?」


 和奏は俺のほうを向いて心底驚く。


「外に出ないことが多いのはわかるが、何もそんな驚かなくても」


 一之瀬達にも休みの日は常に暇をしているみたいに思われてたな、俺だって買い物に出たりするんだが。


「い、いや、珍しいなって思って」


 まだ驚きを隠せない戸惑った様子で和奏は聞いてきた。


「出掛けるわけじゃないんだが、明日家に遊びに来る奴がいるんだよ」


「友達って、赤桐君?」


「幸太じゃなくて……あれだ、片桐の時に起こったトラブルで和奏も顔を見てるやつだ」


 和奏は食器を洗う手を止めて、思い出そうと記憶を探っている。

 ほんの少し和奏の様子を見ながら待つと、思い当たる人物がいたのかピンと来た表情になった。


「眼鏡かけてた一之瀬さんと片桐君を連れてきてくれた人!」


「そうそう。黒ぶち眼鏡をかけた委員長タイプの奴だ」


 和奏は納得したような顔をした後、残念そうに小さく呟く。


「それじゃあ、明日は作りに来れないのかぁ……」


 残念そうな和奏の様子が気になったので、食器を洗い終えて手をタオルで拭きながら聞く。


「何か俺に用があったか?」


「えっ、あ、そういうわけじゃないけど、何か急に予定が空いたからどうしようかなーって」


 和奏は軽く笑いながら、俺が気を使わないように振る舞う。

 そんな和奏の表情を見て、俺は申し訳なく思った。

 俺を心配して、ここ最近いつも飯を作りに来てくれてるんだもんな。

 そんな風に思うと、改めて和奏に対する感謝の気持ちが大きくなった。


「いつもありがとな」


「えっ、あ、私が勝手にやってることだから! その……むしろ修司にとってお節介かもしれないっていうか」


 和奏は俺が気を使ってお礼を言っているのだと思ったのか、慌てながら気にしないでといった素振りで言う。

 そんな風に言われても、俺が和奏に対して感謝しているのは紛れもない事実なので気にせず、腕を組みながら考える。


「和奏には何かお礼を返さないとだなぁ」


「元々私を助けてくれたお礼なんだから、そんな……あ」


 和奏は何かを思い出したのか、途中で言葉が詰まった。


「どうした?」


「あーその……お礼ってさ……なんでもいいの?」


 先程まで気にしなくていいと言った手前、お礼を頼むのが気まずいのか、俺の様子を確認しながら恐る恐る聞いてくる。


「まぁ俺にできることなら。買ってもらいたいものがあるなら値段と相談だが」


「何か買ってもらいたいとかじゃないんだけど……その」


「おう……」


 和奏が何処か緊張した様子なので、俺にもその緊張がうつって身構えてしまう。


「……さっきみたいに……頭……撫でてほしいんだけど」


「へっ?」


 身構えていたわりにあまりにも可愛らしい頼みだったので、俺は気の抜けた声を出して驚いてしまった。

 そんな俺を見て、和奏は急に恥ずかしくなったのか顔を赤くして捲し立ててくる。


「あっ、えっと! 別に修司に撫でられたいとかじゃなくてね!? その、なんていうか、そう! 子供の時以来だったから、なんか懐かしくて!」


 俺はやたら慌てふためく和奏に何も言えず、目を丸くしていた。


「いや、これも子供っぽくて、あれかもしれないけど! だからって撫でられたくないかと言われるとそうじゃなくて……はっ! 童心に帰りたくなったっていうやつ! そう! ただそれだけ!」


 ようやく和奏が捲し立てを終えて、熱くなりすぎて酸素が足りなくなったのか肩で息をしながら、恥ずかしそうに俺を見ている。


「……っぷ、あはは! なんだよそれ!」


「わ、笑うな~!」


 俺は言い訳する和奏に笑いが込み上げてきて、どうしても我慢できなかった。

 恥ずかしそうに顔を真っ赤にして怒った和奏が睨みながら注意してくるが、それは逆に可愛らしいもので全く恐怖を感じない。

 俺はそんな和奏をなだめるように、頼まれた通りに日頃の感謝の気持ちを込めて撫でてやる。


「退院してからいつもありがとな」


「……なんか妹さんと同じ扱いされてる気がする……あ! さっきもそうだった!」


「うっ……」


「むぅ~……」


 さっきのことも黙っていたのに気づかれてしまい、和奏は頭を撫でてもらいながらどこか拗ねたようになってしまった。

 拗ねた和奏をどうしたらいいのか全くわからないので、俺は素直に聞いてみる。


「どうしたら機嫌を直してもらますかね?」


「私の気が済むまでこのまま!」


「はぁ、わかったよ」


 それからしばらく、和奏の機嫌が良くなるまで頭を撫で続けた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 可愛いから許す!(気づいてなかった)
[一言] 修正ミスかと思いますが、中ほどで同じ会話部分があります。
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