ただただ・・
「この辺にはいないのか・・・社長か、宗方が見つけてるかもな」
リディアはそう呟き、悪魔の方を見た。城ほどの高さの悪魔は、悠然とそびえ立ち、王都の街を壊しながら進んでいた。
「ん?・・・・あれって!」
リディアはそんな悪魔に向かっていく一つの人影を見つけた。
「この野郎!みんなを返しやがれ!」
悪魔に向かっていたのはキールだった。
「1人で向かっていくなんて、本当は作戦があるんだろうな・・」
リディアはキールと合流すべく、悪魔の方へ走り出した。
「うおおおおおおお」
キールは護身用の何の変哲も無い短剣を振りかざしながら悪魔へ接近した。
「・・・・・」
それに気づいた悪魔は、近づくキールに気づくと、すぐに興味を無くし、つまらないものを見るように、その太い尻尾をキールにぶつけた。
それだけで、凄まじい風が吹き荒れ、とてつもない衝撃がキールに直撃した。
「がぁッ!!」
キールは勢いよく吹き飛ばされ、叩きつけられた身体はベチャっという音と共に四散した。
しかし、スライムの特性をもつキールは、すぐに四肢が集まり、再生した。
「俺は死なないぞ・・地獄の果てまで追いかけてやる」
キールはすぐに立ち上がり、またも悪魔へ走って行った。
しかし、またも悪魔がただ尻尾を振るうだけで、キールは吹き飛ばされる。
それを何度も、何度も繰り返していた。いくらキールが死なないとしても、状況は変わらなかった。
「・・・やめろよ。やめろよ!」
キールは自分が再生する度に、焦りを感じていた。
自分だけが残り、他は一切なにも無くなってしまうのではないか。この世界に自分だけ、独りになってしまうのではないか。そんな悲壮感から、キールの目から涙が止まらなくなっていた。
その様子をリディアと宗方が少し遠くから見ていた。
「社長・・・」
「本当に作戦は・・ないんだな」
2人はその姿にどこか哀しさを覚えていた。
自分たちが今出て行ったとしても、キールと違いすぐにやられてしまうだろう。しかし、キールのあんな姿に、2人もまたじっとしていることが出来なかった。
「はぁはぁ・・・・」
キールの体力も限界に近くなり、動きが緩慢になっていた。
「『闇の捕食者』」
「『海の浸食』
黒い弾幕と、青い斬撃が左右から飛んできて、悪魔に直撃した。
「・・・・・・・・!!!」
悪魔に直撃したその攻撃は、悪魔を驚かせるだけの威力を確かに持っていた。
「ま、くたばらんわな」
「希望は薄いですね・・」
リディアと宗方がキールの前に飛び出した。
「宗方!リディア!・・・どうして出てきたんだ!」
キールは腕で涙を拭いながら、2人に怒鳴った。その思い描いてしまった未来が本当にやってくるのではないかと想像してしまった。
「それでも、じっとしていられなかったんですよ」
「そーゆーことだ」
2人は、悪魔から目を離さずに笑った。
「・・・・・・・・」
悪魔はその2人を見つけるとニヤリと笑った。少し前に食べた、味は良くないが、凄まじい進化の糧となった人間と同じ雰囲気を持つその2人に。
「気持ち悪い笑顔だな・・」
「餌としか見られてませんね・・」
すると悪魔は、先ほどまでより、素早い動きでこちらに向き直り、足で踏み潰そうとした。
「おわっ」
「おっと」
流石の2人は、その攻撃に驚きはしたものの余裕を持って回避した。
悪魔は、それに驚きもせず次々と攻撃を繰り出した。
最初は余裕をもって躱していた2人だったが、次第に早くなるその連撃に、その顔には汗がしたたっていた。
「『闇の捕食者!』」
「『海の浸食!』」
2人は隙を見つつ、悪魔へ攻撃を仕掛けていたが、悪魔を倒しきるには、攻撃力が圧倒的に足りなかった。
突如、均衡していた戦線は悪魔の方へ傾いた。
「かハッ」
悪魔の尻尾が宗方に触れてしまった。
「大丈夫kっ」
つい、宗方へ注意を向けた瞬間にリディアが蹴飛ばされた。
「ああっ・・・・・・!」
キールはまるで存在しないかの如く無視され、ただただ仲間がやられていく様を見ている子としか出来なかった。
「・・・・・・・・・」
悪魔はより一層口角を上げると、倒れている宗方とリディアを摘まみあげ、自らの口へ運んでいった。
「やめろおおおおおおおお!」
ゴクリ
キールの叫びも虚しく、2人は悪魔の身体に取り込まれていった。
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