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君は無敵の姫君  作者: violet
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婚約発表

マーガレットはレイクリフに手を取られて王宮の舞踏会場に入って来た。

レイクリフから贈られたタフタのドレスは、背中も胸も開口部分が狭く清楚な雰囲気である。

白いオーガンジーの小花が散らばり、腰の大きなリボンが大きな膨らみを持たせて後ろに流れている。

同じくレイクリフから贈られたイヤリングとネックレスが豪華さを出して、今夜のヒロインであることを主張している。

レイクリフの瞳と同じ色の大きなサファイアの周りをダイヤで飾られたそれらは、公爵令嬢として育てられたマーガレットでさえ、扱いを戸惑う程の高価な物である。

マーガレットもドレスが気に入ったので15点プラス。


「とても、綺麗だ。」

レイクリフは公爵家に迎えに来て、マーガレットを見た時から、同じ言葉を繰り返している。

マーガレットは、このボキャブラリーでよくも数多くの女性を口説いたなと(あき)れている。

しかも、マーガレットの瞳と同じ緑色のエメラルドをカフスにして目立つ。二人で色を合わせましたと言わんばかりだ。

レイクリフのにやけ顔に5点マイナス、レイクリフの評価はマイナス135点になった。



王が舞踏会の開催と二人の婚約を発表すると、会場は歓声に包まれた。

マーガレットとレイクリフがファーストダンスを始めると、様々な視線が投げつけられた。


ホールの周りはすごい人だかりである。噂の公爵令嬢を見ようと若い男達が集まっている。

王太后の元に来るマーガレットを見染めた男達も少なくない、噂と相まって強い視線がうまれていた。


レイクリフはあれから女達と会っていない。すべて終わったと思っているが、納得している女性ばかりではない。

政略結婚で、すぐに自分のところに戻ってくると思っている女性もいる。それでもレイクリフの婚約者として、公式の場に現れたマーガレットに深い嫉妬を持たずにはいられない。

何より、ワーグナー公爵夫人の座を狙っていた女性が多いのだ、グラント公爵令嬢は許せる存在ではない。


「ああ、気持ちがいいな。マギーに見とれる男達に見せつけてやる。美しいマギーは俺のものだと。」

上機嫌のレイクリフに比べて、投げ掛けられる嫉妬の視線も相手にしてられない程、ダンスに集中しているのはマーガレットだ。

「うるさい、黙って。」

「もしかして、ダンスは不得意か?」

「舞踏会なんて初めてなだけ。」

「なんてことだ!

俺がマギーの初めてのダンスの相手か!

これから全てが俺のものだ!」

「・・・・」

返事をしないマーガレットは、微笑みを絶やさないが、全く余裕はない。

いつもなら、バカか、お兄様が練習相手だから初めてのダンスの相手だ、と罵声(ばせい)をあびせていたかもしれない。

グイと抱き寄せられ、身体が引っ付きそうになる。

「何するの、この」

女たらし放しなさいよ、と言おうとしたマーガレットの耳元にレイクリフが(ささや)く。

「近い方が踊りやすいだろう、俺のリードに身体を預けるだけでいい。」

なるほど、たしかに。自然にレイクリフのリードのままに身体が流れるように動く。


2曲を踊り、仕事は終わったとばかりに離れようとするマーガレットの手をレイクリフが握りしめる。

人目がありすぎて、本性を出せないマーガレットがどうしようか対策を頭で練る間に、レイクリフが片膝ついてマーガレットの手にキスをする。

「私、レイクリフ・ワーグナーの生涯の愛をマーガレット・グラント公爵令嬢に誓う。」

周りからは悲鳴に近い声が上がる。レイクリフの元恋人達だ。

本人達は、まだ恋人のつもりでいるのだろう。

マーガレットは頭を左右に振って、嫌がっているようにしか見えない。

実際にそうなのだが、いかにも庇護欲を(あお)る仕草なのだ。

どこから見ても可哀想な公爵令嬢だ。

お前の愛はいっぱいあるんだろう、バカにするな、と言いたいのを我慢しているマーガレットはプルプル震えている。

王の御前、王の御前、と念仏を頭の中で唱えて殴りにいく手、蹴りにいく足を押さえている。


衆人環視の中で、レイクリフはマーガレットの肩を引き寄せてベランダに向かった。

「人目が無くなったら、殴ってやる。」

マーガレットが(つぶや)くのをレイクリフはクスリと笑って答える。

「じゃ、人目のないところに行こう。」

思わず殴りそうになって、マーガレットは動きをなんとか止める。ここは皆に見られている。

たとえベランダに出ても、マーガレットが一人にならないかと、男達が目で追っているからだ。

それを見てレイクリフが笑うのが、更に憎たらしい。

「それは、どこ?」

周りの視線も鬱陶(うっとう)しいが、レイクリフはもっと鬱陶しい。ベタベタ触ってくるし、マーガレットの沸点はとうに超している。

あんな恥ずかしい事を衆人の中でするコイツは羞恥心がないのだ。

早くレイクリフを殴って、鬱憤(うっぷん)を晴らしたくて仕方ない。


レイクリフがマーガレットを連れて大広間を出て行こうとするのを、ギリアンが止めに来た。

「ワーグナー公爵、いくら婚約したと言ってもこれは困るな。」

「お兄様。」

レイクリフの過去の女癖の悪さから、誰もがレイクリフを信じていない。


レイクリフが開けたドアの隙間(すきま)から、煙の匂いをマーガレットが感じ取った。

飛び出したマーガレットを追いかけたレイクリフも匂いを感じて叫ぶ。

「警備何してる!煙だ!!」

マーガレット、レイクリフ、ギリアンと飛び出した大広間は一瞬でパニックになってしまった。

イースをはじめ、参加している軍関係者、警備兵が収拾にあたり、王、王妃、王弟と安全なところに誘導する。



「こっちだ!

事件なら犯人は正門でなく、裏門に向かうはずだ!」

レイクリフが庭に飛び出した。

もっともだ、今日の警備は客を迎える為に正門に集中している。

マーガレットも無言でレイクリフの後を追うが、ギリアンは煙を感じる方へ向かう。

「僕は煙の正体を確認してくる。火事ならば消火しなければ!」


途中すれ違う警備兵達に、レイクリフは消火に向かうよう指示する、庭に出ると一際(ひときわ)明るい部屋が見えるからだ。中で火事になっているようだが、今なら消せるだろう。大広間に近い部屋なので、ギリアンがすでに消火をしているかもしれない。

レイクリフとマーガレットは暗い庭を裏門目指して走る。


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