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君は無敵の姫君  作者: violet
20/31

帰還

出陣から1ヶ月近くたって、軍は帰って来た。

国境戦で勝利した後、ウォール王国に攻め要り、王都陥落、王宮制圧と完全勝利であった。


事務官であるギリアンも、軍からの報告が届く毎に書類作成や、今後の統括等、仕事に追われている。

既にウォール王国に派遣された事務官も多くいる、ギリアンもレイクリフ達と入れ替わりに向かう予定である。

ウォール王国はなくなり、アルビリア王国に吸収される。





勝利して戻ってきた軍を人目見ようと王宮への道の両側は人々で埋めつくされていた。

怒涛のような歓声で包まれている。

「南方部隊将軍がウォール王国軍司令官を打ち落としたそうだ。」

「おお、聞いたよ。何でも敵陣営に突入する危険な任務だったと。」

人々が、様々な話を口にする。

「いやいや、北方部隊将軍が鬼神がごとくの活躍だったらしい、ウォール王宮制圧の話を聞いたか?王弟殿下だろ。」

「聞いた、聞いた。」


街の人々の話を聞きながら、マーガレットも帰還を見に来た、町娘の格好である。パレードではないが、凱旋である。少なくない死傷者をだしたが、ウォール王国制圧という大きな勝利であった。


軍の先頭を行くのは馬上の二人の将軍、軍服姿が威厳を表しているようだ。町娘達の歓声があがる、ジルベールもレイクリフも顔がいいのだ。

ジルベールが繊細で綺麗な顔立ちで体格も細身であるのに対し、レイクリフは男性的だが整った顔立ちで筋肉質の統制された体格である。

マーガレットも、ジルベールを綺麗だなと見ていたが、レイクリフに目がいくと、格好いい、と思ってしまった。

ドキン。

ドキン、ドキン。

いや、いや、アレは女にだらしなく、女に不誠実な男だ、と自分にいいきかす。

行進で過ぎて行く後ろ姿を見つめながら、アイツも殿下も雰囲気が違うと感じる。

戦争は人を変えるのだろう。





軍は王宮前広間で整列し、王の拝謁になった。

「北方部隊、ただ今帰還いたしました。」

「南方部隊、同じく帰還いたしました。」

ジルベール、レイクリフ両名の報告に、王も頷き、(ねぎらい)いの言葉を返す。

「ご苦労であった。」

将軍を始め、上層部はすぐに戦後処理に入る為に、一旦解散の後に、再集合を確認して解散となり、各自執務室に戻った。


「殿下、こちらでお休みください。傷の包帯を替えます。」

イースが薬を持って、ソファーで待機している。

「はは、イースの方が必要だろう。私に傷を見せてくれ。」

無理やりイースを押さえつけ、ジルベールはイースの上着をひろげた。

「胸の傷は血が滲んでるな、よくも無茶を続けたものだ。私を庇った時のものだろう。」

ジルベールがイースの包帯を取り、傷の手当てをする。

「イースがいてくれたから生きて帰れる、第3部隊全員が逆心とは予想していなかった。」

ジルベールも武術に優れていようが、騎士のイースには(かな)わないことをわかっている。

「麻薬に溺れたというのがありますが、元々不満があったのでしょう。

戦争がない期間が長く、貴族の次男以下には、手柄をたてて褒賞を貰う道がないに等しい。

それだけではありませんが、子爵以下の嫡男以外は爵位のある貴族として生きる道は少ない。」

そう言うイースはブリューゲル伯爵家の嫡男だ。


そうか、領地を約束したウォール王国に組み伏したか、ジルベールはイースの話を聞いている。

山賊討伐や海賊討伐はあったが、戦争のない時代は領地分配がないに等しい。

それどころか、シュテファン伯爵のように娘の不始末で領地を王家没収となることもある。

戦争の危険がなく、穏やかに暮らせるのは最優先だが、それだけではダメなのだな。


「殿下、全ての人を満足させることは不可能なのです。」

手当てが終わったイースが服を着ながら言う。

「人の幸せとは何だろうな。

私は、我慢を強いられてきた。王弟でなければ、と何度も思った。だが、それが私なのだ。」

「そんな殿下だから、ついていこうと決めました。」

ハハハ、とイースが笑う。

「早く治せよ、まだまだやる事があるからな。」

私は、姫を妻にしたかったが、心のどこかで、王になる話を捨てられなかったのだろう。兄はそれが分かっていたから、私に姫を諦めさせようとした。


「我々が生き延びたのは、ウォール王国の兵士を殺したからだ。戦争とは人の命の奪い合いだ、力も策も秀でた者が勝つ。

だが、我々の犠牲も大きかった。

ウォール王国にしても、兵士の家族を殺された恨みを持つ者も多いだろう、力で()じ伏せたくはない。」

「そうですね、だが難しい。

戦場では、隣で仲間が倒れていく。もどかしさと辛さと悲しみでいっぱいでした。」

「そうだな。」

今度はジルベールがイースに、傷の手当てを受けながら答える。


その全ての責務を負うのが、王なのだ、ジルベールは深く心にとめた。


そっと胸に手を当てる、内側のポケットにはハンカチが入っている。

自分が生きてここにいるのは、自分の力だけではない、イースや周りの者が守ったからだ。そして、これが心強くさせてくれた。



お読みいただき、ありがとうございます。


ごめん、殿下、そのハンカチ、皆とお揃いなんです。(>_<)

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