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君は無敵の姫君  作者: violet
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マーガレットの父であり宰相であるグラント公爵の目線での話になります。

人払いをされた王の執務室にいるのは、王、宰相、王弟の3人だけだ。

「なんということだ、我が国の国費で買った武器、弾薬が。」

王の両手の拳は強く握りしめられている。


「北方第3部隊の部隊長は誰だ?」

確認してきたのは王弟ジルベール。

「オルグ・ヤーツェフ、ヤーツェフ伯爵の次男です。」

宰相の言葉に、そうか、とジルベールはため息をついて宰相を見る。


「宰相は、既に知っているのだろう?」

少し照れたようにジルベールは言う。

マーガレットに付けている護衛より、マーガレットが教会や孤児院に奉仕に行くと、密かに見ている者がいるとリストがあがっている。

ジルベール殿下の名もたまにある、最近はレイクリフ・ワーグナーの名もある。

リストの中にオルグ・ヤーツェフの名もあるのだ。


(ちまた)では、聖女マーガレット、という間違った通り名があるのも知っている。

清く美しい公爵令嬢、恐ろしくてとても嫁に出せなかったことで、さらに美化された噂が独り歩きしている。


「北方部隊将軍も総司令官もご高齢だ、そろそろ代替わりしていい時期ではありませんか?」

ジルベールが兄である王を返り見る。

「軍が気づくべきであるはずです。ところが、数年も続いているとなると、北方部隊将軍や総司令官は素通りであると言わざるを得ないでしょう。」

王も、そうだな、と答えている。

宰相は、二人の会話を聞いている。王弟ジルベールは才気に(あふ)れているとつくづく思わざるを得ない。王のこの信頼、これで裏切っているというのか。


「私が北方部隊将軍になりましょう。」

ジルベールが、自分が北方部隊将軍の任を負うと言う。

「殿下、今の時期は戦争になる可能性があるのですぞ。

現にウォール王国が進軍してきている情報が入っています。」

宰相が止めにはいるが、ジルベールは首を横に振る。

「宰相、事は急を要する、正式な指揮者が着任するまでの間だ。一時的だとしても、我ら王族でないと、軍内で容認が取れないだろう。」

「尤もなご意見ですが、戦争になれば戦地に赴く事になります。」

「わかっている、宰相。だからこそだ。

宰相もこの時期に、北方部隊将軍を空白にする事が出来ないのはわかっているだろう?」


宰相は、ジルベールを言葉なく見つめた。

王太后譲りの優しげな美幌。才知(あふ)れ、周りを判断する能力も秀逸である。細い身体は鍛え上げ、武術にも()けているときいている。


「宰相、私は疑われる理由があるのはわかっている。誰かを私に張り付けたらいい。」

この人が裏切り者だったら、我が国は既に危機に陥っているだろう。

「宰相、私は姫が笑って暮らせるように、この国を守りたい。」

それほどに、マーガレットを想ってくれるのに嫁がせる事はできない。


宰相は王の気持ちが分かってしまった。王がマーガレットの結婚を決めたのは、ジルベールに諦めさせる為でもあろう。

マーガレットと結婚して、王の補佐で終わらせるには不憫すぎる。

我が国の王は間違いなく王の器であった。

たとえ、弟の方が才知溢れようと、王は人の才を見て、使う能力に長けている。

その王が、弟は王の器だと判断したのだ。

ランドベルメ王国の王として立位する人間としたのだろう。

そして、王はレイクリフの才も認めたから、マーガレットの結婚相手としたのだろう。


「殿下、ありがたいお言葉です。

すでに、殿下に猜疑(さいぎ)はありません。」

宰相は、王と王弟にゆっくりと答えた。


どんなに想っても、マーガレットとジルベールが結ばれる事がないのは、王も宰相もジルベールもわかっていた。

だからと言って、諦められる想いではないのだろう。


きっと、殿下は王になる道を捨てても娘と結婚する事を考えたのだろう。だが、国内情勢がそれも許さない、

貴族の娘は家の為に嫁ぐと育てられた。王家は尚更だ、結婚という人質として嫁ぐ王女もいる。

殿下の容姿は女性に好まれる、きっとランドベルメの従妹姫にも好かれるに違いない。



「総司令官は、近いうちにワーグナー将軍が着任する事になるだろうが、次期南方部隊将軍が決まってからだ。

今回、戦争になったら間に合わないだろう。

陛下に名目上の総司令官に着任していただき、私とワーグナー将軍で、実際には兼任していこう。

彼の能力が優れているのは、わかっている。」

きっとマーガレットの事で、思うところがあるのだろうが、優先するべき事をわかっている。

優れた王子というのも辛いものだな、とグラント公爵は宰相としても、マーガレットの父としても思うのであった。




総司令官と北方部隊将軍の交代は早急に行われ、それに伴う人員異動が発表された。この交代の詳細な理由は公表されず、総司令官、北方部隊将軍が高齢による辞任によるもの、とだけ開示された。

軍に内通者がいると分かった以上、情報の管理は更に注意が要されるからだ。

ウォール王国が国境に到達する前に、軍の建て直しを推し進めなければならない。ジルベールとレイクリフの唯一で最大の共通意識である。


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