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君は無敵の姫君  作者: violet
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スケープゴート

グラント公爵の書斎には、グラント公爵、ギリアン、マーガレットがレイクリフの説明を聞いている。


「女は、すぐに口を割り、そこから街の西はずれの酒場ルアンで舞踏会の実行犯達と会ったことがわかった。すぐに兵士を向かわせたが、店は誰も居ず、すでに逃げた後だった。

夜会で会った貴族男性は情報が少なく、何も確認できない。」

そう、指の爪1枚ですぐにはいた。実行犯達が命をかけて守ったのとずいぶん違う。

それほどの実行犯達が、あんな女から金を貰ったからと犯行を(おか)すはずがない。


「計画的ですね。」

ギリアンが口を開いた。

公爵もレイクリフも同じ意見だ。

「全ての罪をかぶせる為に、女が実行犯達に依頼に行くように動かした。」

え、他にもいるの?マーガレットはレイクリフを見る。

「マギーには黙っていたが、最初から女以外にも協力者がいると考えていた。

だから、女が捕まっても油断しないで欲しい。」

「どういうこと?」

レイクリフの代わりに答えたのはギリアンだ。

「舞踏会の日、最初から殿下を誘拐することが目的だったんだ。

協力者は自分に捜査がこないように、スケープゴートを用意した。実行犯達に接触したのが簡単にわかる人物が必要だった。

そうして、ワーグナー将軍と関係があり、マーガレットを恨んでいる伯爵令嬢がターゲットになったんだよ。伯爵令嬢は協力者の狙い通りの行動をした。」

「つまり、上手くいってもいかなくっても、シュテファン伯爵令嬢が捕まるようになっていたってこと?」

「そう、伯爵令嬢が捕まって協力者として処刑されて終わる。」

ギリアンもレイクリフも、協力者はあの伯爵令嬢がマーガレットを殺しに行ったのも失敗するのも計算通りだろう、と思っている。

「他にもいる、というのは可能性に過ぎない。実行犯に依頼した人間が捕まった、周りはこれで終わりと思うってことだ。」


「だからと言って、あの女の罪が無くなることはない。シュテファン伯爵家はなくなる、一族全てが責務を取らされる。」

ギリアンは伯爵令嬢と呼んでいるが、レイクリフはあの女だ。

自分のせいで運命の狂った女性に対して、何とも思わないのか、マーガレットでさえ感じるものがある。


「マギー、我々は貴族だ。王家に仕える者だ。

マギーだけなら、令嬢一人の事だったかも知れない。だが、王太后も危険にさらされた、一族全てが処分対象となる。」

「お兄様、それをわかっていて私に囮をさせたのですか?」

「マギー、お前は狙われているとわかっていて、王太后と行動を共にした。

シュテファン伯爵の一族には子供もいるだろう、全てが処分対象となる、そういう事だ。」


ああああああああああああ!!

マーガレットが唸り声と共に、両手をクロスして両腕を掴み身体を折り曲げた。


「ギリアン、マギーはいつもの行動をしただけだ。」

レイクリフがマーガレットを庇うが、その手はマーガレットに振り払われる。

「レイクリフ、庇わないで!

考え足らずだった私に原因があるのよ。」

「違う、悪いのは、マギーを殺そうとした女だ!」

「そうよ、それを止められなかった家族も責任がある。そして事を大きくした私も。」

そういうマーガレットの瞳はギラギラしている。

「自分の責任は自分で負うわ。」

マーガレットには()かった。

兄もレイクリフもこうなる事が分かっていて、マーガレットを使った。元より覚悟をしているのだろう。


「動揺して悪かったわ。」

マーガレットが息を吐きながら、体勢を立て直し、ソファーに沈むように座る。

「マギー、どうか俺に貴女を守らせてくれ。」

レイクリフを少し見上げて、マーガレットが微笑む。

「私はマーガレット・グラント公爵令嬢。

恥ずべき事のないよう、育てられたわ。私はちゃんと一人で立てます。」

「眩しいな、貴女は。」

レイクリフがマーガレットを見つめて呟く。


それを見ていたグラント公爵はため息をついている。

「お父様、怖いと言って震える娘、というのは夢なんどろうな。

この娘のままでいい、と言う男が現れただけでも良かったと言うべきか。

我が家の娘は、レースとリボンで飾られた外身だが、中身は鋼だ。」





それから、数日のうちにミッシェルは処刑された。謀反を企てた(とが)で父、母、弟もだ。

シュテファン伯爵家はとりつぶし、連なる一族は爵位を落とされ、貴族でなくなる家もあった。


処刑に立ち会うレイクリフを見たミッシェルは嬉々とした表情を浮かべるが、ミッシェルを見るレイクリフは罪人を見る目でしかない。

「いやー!

レイクリフ様助けて!」

ミッシェルの叫びに、レイクリフは応える事もなく処刑が行われるのを見ていた。



その夜、レイクリフは王宮からの帰りに、マーガレットを訪ねてグラント公爵邸に寄った。

「お父様から、聞いてます。今日、処刑があったと。」

「そうか、知っていたか。」

レイクリフの様子は普段と変わるものではない。

パン!!

レイクリフの頬が叩かれた。

「貴方の心を慰める為なんかじゃないわ、私が腹立つからよ!」

パン、パン、レイクリフはマーガレットに殴られるままになっている。

「痛いって、泣きなさいよ!!」

「泣いてるのは、マギーじゃないか。」

「何で殴っている私の方が痛いのよ!

レイクリフのバカ!」

止めどなく涙を流すマーガレットを抱き締めてレイクリフが呟く。

「マギーは温かいな。」

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