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君は無敵の姫君  作者: violet
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暗躍する思い

「ミッシェル様、こちらにどうぞ。」

久しぶりに出かけたお茶会での話題は、やはりレイクリフ様のことだった。

みんなが私の顔を見て、口を閉ざした。


「お気になさらずに、もう終わったことですから。」

「まぁ、ミッシェル様、お可哀そうに。陛下のご意志ですもの仕方ありませんわ。」

ふふふ、と笑って答えておく。

「距離をおきましたら、どうでもよくって。

それで、何があったのですか?気になります。」

お茶会には7人の女性が来ていたが、好奇心に負けたのだろう、話し始めた。


「街のカフェでお二人を見かけられた方からお聞きしましたの!」

「まぁ、あの人気のお店ですか。」

「公爵様がお出かけになられたなんて。」

あちらこちらから感嘆の声があがるのを、心がギリギリ音を立てながら聞いている。

昼に会った事も出かけた事もなかった、連絡さえさせてくれなかった。

手紙に返事がきたことなんてない。


「お二人の指にはお互いの瞳の色の石の指輪があったそうなの。」

「指輪は聞いたわ。職務中も公爵がずっとされていたのは、お揃いだったからなのね。」

胸が痛い、あの女と私と何が違うの。あちらが公爵令嬢だから?

諦めようという思いと、苦しめたいという思いが私の中にある。


「舞踏会で初めてお見かけしたけど、綺麗だったわ。」

「他国の王家からの縁談もあった方なんでしょ。グラント公爵が断っていたそうよ。

公爵もお兄様のギリアン様もことの他可愛がっていらっしゃって、嫁がせたくなかったみたい。」

「ギリアン様ステキよね!」

「ええ、未来の公爵様でお優しいの。」

「未来の宰相閣下でもあるわよ。しかも婚約者がいない。

ライバルが多すぎですわ。」

もうレイクリフの話から変わってしまった後は、誰も関心を示さない。


ギリギリ、身体中がきしむ音がする。

何もかも恵まれた公爵令嬢、何もかも持っているくせに私からレイクリフ様まで盗っていった。

ミッシェルの中で一つの決心がうまれていく。




その日、マーガレットは王太后と一緒に孤児院を慰問していた。

子供達が練習した観劇を見たり、一緒に歌を歌って楽しい午後を過ごしていた。

デート以来、犯人の襲撃に備えて王太后だけでなく、マーガレットにも護衛が増やされている。

それは、内密に配置されている為に、気が付く者は少ない。

伯爵令嬢のミッシェルが気付くはずもなかった。

先ほどから、孤児院の周りを何周もしていることで、護衛兵に不審人物と注視されているとわかるはずもない。


マーガレットは不穏な空気に気が付いた。

護衛兵達が動いている、領地でも同じことがあった。盗賊が侵入してきた時だ。相手に気付かれないように包囲網を作ったのだ。


「王太后様、こちらに。」

マーガレットは王太后を安全と思われる場所に隠すのが最優先と考えた。

「護衛の者達が動いてます。気にしすぎだったらいいのですが。

念のため、安全な所に参りましょう。

子供達やシスターも一緒に隠れましょう。」

「マーガレット、わかりました。」

王太后の返事を待って、マーガレットも動き出した。

側にいる兵士に安全な場所を確認させる間に、子供達を集めた。

「シスター、どうか子供達の手を放さないで。」

何が起こったかわからず恐がる子供達をシスターと共に抱きしめていく。

護衛兵に守られて、王太后、マーガレット、子供達、シスター達、と安全な場所に移動する。


孤児院の門の外では、兵達に見張られているとわからないミッシェルが、扉を叩いていた。

扉を開けた兵を見たミッシェルは驚いたが、兵士がいることでマーガレットが来ていると確信した。

「シスターにご相談があってきました。

ミッシェル・シュテファンといいます。」

そう言われると、女一人で来ている姿に警戒も薄れる。


孤児院の中に通されると、兵はシスターを呼びにミッシェルを部屋において出て行った。

ミッシェルはバッグに手を当てると、その存在に安心する。それは3週間前、町外れの酒場で男達から渡された物だった。

さほど時間がかかることなくシスターが兵の案内でやって来たが、ミッシェルの姿はなかった。


ミッシェルはマーガレットの姿をさがして、孤児院の中を歩いていた。

「ご令嬢、この先は行けません。」

正面から来た兵に声をかけられたミッシェルは、手にした物が見えるように前に出した。

松明(たいまつ)と爆弾だ。

「どきなさい。」

ミッシェルは、いまにも爆発させるかごとく火を近づける。

どれ程の威力があるかはわからないが、小さな孤児院など吹き飛んでしまうだろう。

兵士が一歩下がって叫ぶ。

「こっちだ!」


その声は孤児院中に響いた。反応したのは護衛兵だけではない、マーガレットもだ。

マーガレット達の隠れている石造りの食料庫の前を、兵達の足音がする。

「グラント公爵令嬢を出しなさい!」

聞こえてくる言葉に、マーガレットは犯人が釣れたと知るが、王太后達にはわからない。

食料庫の扉が開いて、兵が現れた。

「女が一人、爆弾を持って公爵令嬢を呼んでますが、絶対に出ないでください。」

「貴方達、マーガレットを守るのよ。」

強い口調で言うのは王太后だ。

「はっ、必ず。」

兵は答えると扉を閉めた。


震えるマーガレットを王太后が手をとる。

「大丈夫よ、護衛を信じましょう。」

はい、と頷くマーガレットが震えているのは怖いからではない。

怒りに震えているのだ。

自分が出て行けば、護衛達の邪魔になるのはわかっている。

犯人の要求に答える必要もない、だが、王太后や子供達を巻き込んだ事が腹立たしい。


守られる立場の自分が出て行けば、護衛の犠牲が増える。遠い昔を思いだしながら、マーガレットは拳を握りしめた。




「王太后とグラント公爵令嬢が、爆弾を持った女に襲われた!

護衛が犯人を捕獲、犯人は負傷!!」

急報が王宮に伝えられたのは、すぐのことだった。



お読みくださり、ありがとうございます。


マーガレット耐えてます、怒りでプルプルなりながら。この怒りはどこかで晴らさないと気が静まりませんwww

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