第百七十六話『達人的回避』
「『立ち回り』とかもかなり重要な技術になってくるしね」
「『立ち回り』??」
僕の説明に、サラが君たちの言うことは難しすぎますな。と笑った。
ここで一気に立ち回りの説明をするのは、急すぎるな、と僕も思った。じっくり試しながら少しずつだ!
「ちょっと急ぎ足でやり過ぎたね!さて、ここまでのおさらいをしつつ、倒しちゃおう!」
と僕は、砦のボス、トロールをしっかり見てそう言った。
「よし、倒そう!妖精さんを襲うなんてゆるせない!!」
と美少女格闘家のサラが言う。
「じゃぁ、今回はサラがタンクやってみて!」
と僕が言う。
「タンクってなんだっけ?」
「相手の意識を惹きつける役!僕がさっきやったみたいな」
とサラの質問に、僕がざっくりとおさらいする。
「ああ、さっきの子どもの喧嘩みたいなのね?」
とサラは僕が、敵に対しお前のカーチャンでべそと言っていたのを思い出しながら聞いた。
「奈緒子もよろしく!」
と、言いながら、僕は目で合図を送った。
奈緒子はそれでわかったようでにっこり微笑んだ。
「へい、カモン!トロールちゃん!!」
とサラは言った。
「ピッチャービビってる!!へいへいへい!」
と更に加えてサラは言った。
「ピッチャーだったのか!」
と僕が笑う。
なんとなく出てきた、煽る言葉がそれだったんだうな、と僕は笑った。『お前のカーチャンでべそ』よりは上品かな?と思った。
「こっそり、移動しよう・・・」
とサラがトロールの敵視を集めているのをしっかり確認して、狙いの位置にこっそり移動した。
「サラ、しっかりみて、ギリギリで避けてみて!」
と僕がさっき言ったことをサラも試してみるように提案した。
「オッケー!それはおもしろそう!」
と、サラはこたえて、しっかりとトロールを見る。
ビビっているピッチャーことトロールがサラの近くまでやってきた。
そして、攻撃モーションが発動した。
「よし、きたよ!」
と僕がサラに言う。うん、と言いながら、トロールのハンマー振り下ろし攻撃をしっかりと、目で追う。
「え?まだ避けないの?」
と僕が驚く。
僕の運動神経では、この時には避けていないと、とてもじゃないと、避けきれない。
だが、サラはまだ・・・避けない。
「サラ・・・」
と僕は心配になって口にした。
初期のモンスターなのでモーションがゆっくりだ。
そして、振り落ろされるトロールのハンマー。
「よっ!!」
と、言いながらサラが後ろに下がる。
いつものようにジャンプするのではなく、静かに『下がった』!
「え?すごい?無傷??」
と僕が驚く。
サラはギリギリのタイミング、ギリギリの距離だけ避けたのだった。
そんなことできるんだ・・・。
ほんとに無駄のない動きが出来るということだった。
「なるほどー!これがギリギリ当たらない範囲なのかな?」
と達人のような回避技を見せたサラが、大したことないことの用に言ってにこっと笑った。





