第百六話『鐙 あぶみ』
「はい、はい!ブリアンナちゃん、まっすぐ!まっすぐ!よし!よし!」
とテンポよく優しく、馬のブリアンナに語りかけながらトントンと進んでいく魔法使いの少女奈緒子。
やはり、彼女は乗馬の経験があるっぽいな、と思っていた。聞いても上品な笑顔でごまかされてしまったが。乗馬の経験があるなんて、高貴な人間なのだろうか・・・。富豪?地主?石油王?と金持ちに対しての知識がないので適当な想像をする。
そんなことを思っていると、たんたんと、歩を進めていく奈緒子と馬のブリアンナ。
「奈緒子がどんどん進んでいく・・・」
奈緒子を横目に、まだ馬に跨ることが出来てない僕であった。みんな簡単にのるけど、実際乗るの大変なんだけど、自分の頭より高いか、同じくらいのところに、乗れるスペースがある、そこにどうやってたどり着けばいいというのか・・・。
僕が悩んでいると
「はい、そこに足をかけてください」
と少年が言う。ぱぱっと指差す。
「ここですか?」と、僕も指を差す。
「そうです!ですが反対を向いてください」
という少年。
「反対??」と僕は戸惑う。
さっきまで、僕は馬とおなじ方向を向いていた。
左側の足をかける所。これは鐙というらしい、専門用語を言えるとなんか賢い感じがするのでさっき覚えた。その左の鐙に自分の左足を、かけようとした。
つまり自転車とかとおなじ。でもそうすると、引っかかって、自転車のサドルをまたいで乗るみたいには行かないな、と思っていた、高すぎて引っかかってしまう。
だけど、そうではなくおしりの方を向いて、左足でかけるらしい。
「あぁ、なるほど」
足をかけて登ろうとする、すると反力を感じる、『エスメラルダ』と呼ばれて馬が踏ん張ってくれてるようだ。
「ありがとう、エスメラルダ」
と言いながら更に力を入れて、エスメラルダに跨る。
馬のおしりを見ていた、体がくるっと回転して、前を向いて馬に跨る。
「凄い!!賢い!!簡単!!」
と教えてもらったことを試したら、あまりにうまく行ったので喜んだ。ああ、凄くいろんなところにノウハウがあるのだ。
「おお、乗れた乗れた!」と感動する僕。
「ふはは、乗れたよサラ!!すぐに追い抜くよ!」とテンションが上がって、サラに感動を伝える僕。
「失礼な!乗るのは私も出来たのよ!!」
とサラが言う。しかし彼女はシャルロッテを乱暴に扱って落とされていたのであった。
「ちょっとぉ~、ジュンに抜かれちゃう!!言うこと聞いてよシャルロッテ〜」とシャルロッテを説得するサラ。ヒヒーンという返事が返ってきていた。たぶん、『イヤです!!』って意味だろうな・・・あれは、と僕は思った。
そうこうしていると、奈緒子が一周回って戻ってきた。
「ふふふ、サラちゃん、ジュンさん、頑張らないと!私あと4周で終わっちゃいますよ!」と笑顔で手を振りながら「ごきげんよう皆さん」と通り過ぎていく奈緒子。
貴族のような振る舞いの奈緒子を気にしつつも
やっと乗れた僕は、エスメラルダの歩を進める。





