6/20
6.王都襲来
「あれはなんだ?!ひょっとして魔獣なのか?」
「え?!嘘だろ?町の中に魔獣なんて入ってくる訳ないだろ…っ!!!」
「うあああああああっ!!!たすけ…」
商人でもない限り、王国の民は、国外に出ることはない。
なぜなら、この国から一歩でも出ると、人を襲う魔獣がいるからだ。
食糧自給率100%。
麦も野菜も、国民が食べる分は国内で賄える。
牧畜もさかんで、三の門付近では牛や羊や豚が飼われている。
王国の東側は海に面しており、小規模ながらも漁業も行われ、様々な食材が揃う王都は、太古の昔から美食の文化の中心と言われていた。
ゆえに王国民は、滅多に国外、結界の外に出ることはなく、魔獣を見たことがない者も多く存在した。
魔獣は、弱い種族を襲い、糧とする。
分厚い皮膚や毛皮を纏うことなく、動きが緩慢で、力も弱く、素手ではこれといった攻撃力を持たない人間は、リスクの低い格好の食糧であった。
「え、ちょっとヤバいって!」
「早く助けを呼んでこい…っ!」
いつもは結界に阻まれている魔獣が、結界の消滅に気づき、門の中に入ってきて家畜や人間を襲い始めた。




