18.嬉々再会
誤字脱字の報告ありがとうございますm(_ _)m
「ポーション持ってきましたー!」
「お待ちしておりました」
おつかいとか、町のお掃除とか、ちょっとした魔獣の討伐とかやってみたけれど、なんかどれもコスパが悪いというか、労働時間と収入が割に合わなくて、結局、ポーション作って商業ギルドに卸すことにした。
門番の夫婦からいただいたお金も、宿に泊まってごはん食べたりしたらすぐになくなっちゃったし。
雑魚寝とかの宿は安いけどなんかイヤだから稼がないと。
宿の人たちはみんな親切にしてくれて、にわとりさんの産みたて卵とか、ヤギさんのミルクとか差し入れすると、凄く喜んでくれて、ごはん代をタダにしてくれたりしたけれど。
家畜は育てるのが難しくて、貴重だって言って世話もしてくれた。感謝しかない。
でもそんなに難しいかな?みんな勝手に草とか虫とか食べてて、そんなに大変でもない気がするけども。
王国では普通に食べていたものは、この国では高級品で、こっちでは魔獣のお肉を食べるのが普通らしい。
どちらかというと魔獣のお肉の方が旨味を感じるけど、何が違うんだろ。
お腹いっぱい食べれるならどっちでもいいよね。
ポーションを納品するととても喜んでくれる。
何でも、私の作るポーションは上質らしくて、まず色が違うんだそうだ。
この辺りで出回っているのはどんよりとした緑色。効果はどんよりしてる程良いらしい。
ちなみに私のは透明な薄緑色です。
なので最初はポーションだって信じて貰えなかったんだけど、お試しで怪我してる人に飲んでもらったりしてやっと認めて貰ったの。
実際、使用感も別物らしく、この国のポーションは凄く苦いんだけど、私の作るポーションは、果物のような爽やかな味がして好評なんだそうだ。
美味しくないポーションなんて飲めないよね。
ただでさえ、怪我したら痛いのに、ポーションも苦かったりしたら可哀想過ぎる。
王国の聖女だった時は、使うこともないし、ポーションを売る機会なんてなかったらよくわからないけれど、ちょっと作るだけで、宿代くらいはひょいひょい稼げるし、これで食べていけそう。
この国は結界がないから、常に魔獣討伐しなくちゃいけないらしい。大変だね。
でもおかげさまでポーションが売れる。ウヒヒ。
「お待たせいたしました。ポーション10本買取りですので、こちら代金でございます。お確かめください」
商業ギルドのカウンターの人は、冒険者ギルドの人より丁寧なのが良い。
冒険者ギルドの人たちも、いい人たちだし元気なのは良いことなのかもしれないけれど、身振り手振りが大げさで、大声とか怖い。大声嫌い。
「はい、たしかに受け取りました」
うふふ、今日もたんまりいただきました。
王国の聖女時代は結局タダ働きだったけれど、タダ働きは良くない。困っている人に救いをって言うけど、ごはん満足に食べさせてもらえなくて困ってたのは私だ。
もう知らない誰かのために身を削って辛いことなんてしない。
まずは自分のいのちを大事にしたい。
周りは悪い大人ばかりで、友だちなんて出来たこともない。
良い思い出も全然ない。
「ニャー」
あ、プラタがいたね。ありがと。
でも出来れば人間の友達も欲しいな。
王国を出て自由になったら、欲が出てきちゃったよ。
「ここに受領のサインをお願いします」
「あ、はーい」
「ありがとうございます。それでジルヴァラ様、お願いになるのですが、出来ればポーションの納品数を増やしては貰えませんでしょうか」
「え、どうして?」
頼まれごととかやだな。
教会にいる時もそうやってどんどん作る量が増えていった。
「ジルヴァラ様のお造りになるポーションは、大変上質なので評判が良く、現在予約が殺到しておりまして、なかなか手に入らないという状況なのです」
「えー」
びっくりです。ごく普通の雑に作ったポーションなのに。これで聖女のポーションなんて納品してたら大変なことになってたよ。
「ご無理は承知の上で、検討してみてはいただけないでしょうか」
「うーん」
たくさん稼いで目立つのも嫌だし、材料集めも面倒だし、大金とか持って歩きたくないし、うーん。
「ジルヴァラ様のご負担にならない程度で良いのですが」
こういう風に言われるのが負担なんだけどな。
でも無碍に断って、関係が悪くなるのも嫌だしどうしよう。やっぱり面倒くさい。
「少し増やしていただけるだけでもありがたいのです」
ううう。退路がなくなっていく。
本当は断りたいんだけど、お返事をしないことによって、どんどん断り辛くなってる。
えっと、何て言って断ろう。
お金には不自由してませんので…これ生意気っぽいよね。
これが精一杯なんです、とか。
いや、余裕でフラフラしてるの見られてる。うーん。
「ニャ!」
プラタが何かを教えてくれようとしている。
「プラタなに?」
「ニャ!」
プラタが商業ギルドの入り口を見る。
つられて私も振り返る。
そこにはキラキラしたイケメンさんがいた。
商業ギルドの少しギシギシいう扉を開けて、軽やかな足取りで、こっちに歩いて来る。
そして、一週間ほど前に出会った親切なイケメンさんは、にっこりと笑ってポーション増産のお願いをしてきた受付の人に言ってくれた。
「女の子に無理強いは良くないですよ?」
救世主か!
「え?そんなつもりは…当然対価もご用意しておりますし」
「ちょっと今は無理です!ごめんなさい!」
この勢いで断ってしまおう。
たくさん稼いでも、お金持って歩くの怖いし重いから、使う分だけ稼ぎたいの。
「承知しました。ですが、いつでもお待ちしておりますよ」
受付の人は特に怒ったりしなかった。
この国の人は、断っても怒らないんだ。うわぁ。優しい。
ホッとする。
目の前には救世主なイケメン。
「ジルヴァラ、やっと見つけた」
私を見下ろしてにっこり笑っている。
探してくれたのかー。うわぁ。なんか嬉しい。
「見つかっちゃった」
心がポカポカになって、自然に笑っちゃう。
えへへ。




