ご令嬢はお目覚めです
目が覚めると見知らぬ天井があった。
私は温かいベッドのなか。
「目が覚めましたか、ティア様」
ん、ティア?、私の名前はティアラ・デ・ウィンクルムよ。いえ私がティアと名乗ったのね。
そう、彼女は確か私のお世話をしてくれたメアリー。
「よかった。とても苦しそうにうなされていたので、心配したんですよ」
ほっとしたような温かい笑顔。このような無邪気な笑顔を向けられたのは何年ぶりだろう。
余りの尊さに涙がこぼれそうになった。
そこでふと我に返る。
あら、いま私がうなされていたって言っていたわね。
たしか夢を見た・・・とてもリアルな悪夢。
「いやーーーーー!」
思い出した瞬間私は叫んだ。だってあの夢、私の前世だわ。
メアリーのもってきてくれた温かいスープと黒パンをかじりながらもわたしはベッドの上で前世の悪夢に恐怖していた。
そこでは私はいつも侯爵令嬢。そして第二王子のカーライル殿下に恋をする。
晴れて婚約者になる。順調なように見えるけれどここまで愛を成就させるためどれほど努力したことか。
殿下は第二王子ではあるが、いわば兄である第一王子のスペア。つまり私も王妃のスペア。
ということで密かに王宮で王妃教育を受けていた。それは大変でつらいものだったけれど殿下の為なら耐えられた。
が、毎回、殿下は伯爵令嬢アナベル様に奪われる。
嫉妬に狂った私。毎回彼女にやる嫌がらせの内容は違う、けれど今回はアナベル様の非常識な態度を非難しただけなのに
なぜかその後王族の側近たちにやってもいない罪を擦り付けられる。そう、やってもいない罪のテンコ盛りは毎回同じ。
ここまではだいたい一緒なの。だけれどその後の展開が問題なの。
一番古い記憶では長い期間拷問にかけられ投獄され尊厳を奪われ、市中引き回しのうえギロチン。
二回目はならず者の牢屋に放り込まれ、尊厳を奪われ、ギロチン、庶民の投げる石礫が痛かったわ。
三回目は国外追放のうえならず者に襲われ尊厳を奪われ、長い監禁生活ののちゴミのように衰弱死、おなかがとても空いたわ。
四回目は国外追放でそっこーで娼館に売り飛ばされ、昼なお暗い異臭を放つ路地裏でゴミのように死亡、もうちょっときれいな場所がよかったわ。
ちょっとまってよ。これひど過ぎない。私が何をしたっていうの。殿下を愛しただけじゃない。いくら何でもあんまりだわ。
それに・・・思い出すの遅すぎよ。この状況、もう詰んでいてよ。
でもちょっとまって、この前世、少しずつマシになってきているのではなくて?
そうよ。いえ、到底そうは思えないけれど、きっとマシになっているのよ。
だって私は今、温かいベッドにいるのですもの。
本来ならば私は・・・いえ。これ以上は考えるのやめましょう。
さあ、少しでも栄養をとって明日に備えなければ。
これからは少し頭を使いましょう。
そういえば私、前世を思い出すのは必ず毎回死ぬ前でしたわね。




