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41 解決

 レオの言葉に、その場の一同が目を合わせ神妙な顔つきになる。


(レオの言う通りだわ。トリスタン様がこのまま帰ったとしても、きっとお義父様がお怒りになるだけよね)


 キャロラインが困ったようにクロークを見ると、クロークは眉を顰めてトリスタンを見た。


「そうだね。このまま帰ったところで父上は納得しないだろう。適当に誤魔化すことなら容易いけれど、それも長くは持たないだろうし……」


 トリスタンは顎に手を当てて真剣に考えている。しばらくすると目を閉じて眉間に皺を寄せ、フーッと大きく息を吐いて目を開いた。


「トリスタン様?」


 マリアが心配そうに声をかけると、トリスタンはマリアを見て優しく微笑んだ。その優しい瞳の奥に、何かとてつもなく強い炎のような熱い意思を感じてマリアは目を見張る。


「大丈夫だよ。心配いらない。……レオ」

「はい」


 トリスタンがレオを見ると、レオはすぐに胸元に手を当てて小さく頭を下げる。


「俺に考えがある。うまくいけば父上を失脚させることができるけど、確実にするためには少し時間がかかるんだ。準備が整ったら連絡をするから、君に手伝ってほしい。その時はレオの頭脳を借りても良いかな、クローク?」

「……一時的に貸すだけです、あげませんよ」

「はは、もちろんだよ。クロークにもいずれきちんと説明する。レギウス家の命運を分けることだからね」


 父親を失脚させる、そしてレギウス家の命運を分ける、その言葉を聞いてクロークとレオは真剣な顔で目を合わせた。


「マリア、全て終わったら必ず迎えにいくよ。それまで、どうか待っていてほしい。都合の良いことを言っていることは自覚してる。それでも、俺は君のことを愛している。君じゃなきゃだめなんだ」

「……ずっと、お待ちしています。私では何のお役にも立たないかもしれませんが、もし力になれるようなことがあれば、いつでも言ってくださいね」

「そう言ってくれるだけで、俺にとっては最高の力になるよ」


 マリアの言葉に、トリスタンは嬉しそうに微笑む。マリアの手をとって甲に小さくキスをすると、キャロラインへ視線を向けた。


「キャロライン、色々とすまなかった。そして、ありがとう。君のご両親には俺からうまいこと言っておくよ。これからもどうかクロークのことをよろしく頼む。クロークには、君が必要だ」

「はい、もちろんです!」


 キャロラインが笑顔でしっかり返事をすると、トリスタンは満足そうに頷いた。キャロラインの返事を聞いたクロークは、うっとりとした顔でキャロラインを見つめている。そんなキャロラインとクロークの様子をレオは嬉しそうに眺めていた。


「それじゃ、また追って連絡する。マリア、君の屋敷まで送るよ。できるだけ君と長く一緒にいたいんだ」


 そう言って、トリスタンはマリアの手を取り、クロークたちに別れを告げ応接室を出ていった。


「行ってしまいましたね」

「……ああ」


 トリスタンとマリアがいなくなり、部屋にはクロークとキャロライン、レオの三人だけになった。先ほどまでの出来事がまるで嘘のように静かだ。 


「レオ、兄上が言っていたことについて何か心当たりは?」

「……全くないわけではありませんが、本家とは距離を置いていましたので確かなことは言えません。念のため思い当たることを調べては見ますが、とにかくトリスタン様の連絡を待つことにします」

「そうか、わかった」


 クロークは神妙な顔で頷くと、キャロラインの手を取って立ち上がった。


「クローク様?」

「キャロラインの部屋へ行こう。二人きりで話がしたい」




 *



 

 キャロラインの部屋に来ると、クロークはベッドサイドに座り、自分の膝の間にキャロラインを座らせた。


(な、なんでこんな体制に!?)


 後ろからキャロラインを抱きしめるような形で、クロークはキャロラインの肩に顎を乗せている。あまりの密着具合にキャロラインはどうして良いかわからず、すっかり固まっていた。


「あ、の、どうしてこんな座り方を……?」

「良いだろう。こうしたいんだ。キャロラインは嫌なのか?」


 そう言って、後ろからキャロラインの顔を覗き込む。クロークのオッドアイの瞳の奥には何か燃えたぎるような熱いものを感じてキャロラインの体は思わず疼いてしまう。


(そんな目で見ないでほしい)


 恥ずかしくなって思わず目を逸らすが、クロークはそれを不満に思ったのか、ぎゅっとキャロラインの体を抱きしめた。そして、小さくため息をつく。


「……まさか兄上とあんなことになるなんて思いもしなかった。ただ君を奪われないようにと思っていただけだったのに」


 唸るような声で小さくそういうクロークの様子に、思わずキャロラインはふふっと笑った。


「トリスタン様はただクローク様と仲直りしたかっただけだったんですものね。トリスタン様の目的は、私ではなくてクローク様でした」


 キャロラインがそう言うと、クロークはキャロラインの肩へ頭をぐりぐりと押しつける。


「君はどうしてそう……次から次へと、俺をありもしなかった道へと導いていくんだ。兄上とまたあんな風に話をするなんて、絶対に有り得なかったはずなのに」


 そう言って、キャロラインを抱きしめる力が強くなる。キャロラインはそっとクロークの腕に手を乗せて優しく撫でる。


「私は、お二人の誤解が解けてよかったと思っています。余計なお世話でしたか?」

「……いや。そんなことはない」

「それならよかった」


 キャロラインは嬉しそうに顔を綻ばせる。顔を少しあげてその表情を見たクロークはあまりの愛おしさに胸が苦しくなり、またキャロラインの肩へ顔を埋めた。


「俺は、兄上に愛されていたんだな……」


 クロークの呟きにキャロラインは嬉しそうに微笑んで頷く。


 生まれてからずっと誰からも愛されていないと思っていたのに、レオからもトリスタンからも愛されていたのだという事実を、キャロラインからこれでもかと見せられ続けている。

 胸の中に湧き上がるこそばゆいような、なんとも言えない不思議な気持ちに、クロークはどうしていいかわからず顔を肩に埋めたまま強くキャロラインを抱きしめるしかなかった。


 しばらくそうしていると、クロークは顔をあげて静かに口を開いた。


「兄上が父上と君の両親への対応をしてくれるそうだから、当分はもう大丈夫だろう。あとは兄上がしようとしていることが何なのか分かれば良いんだが……」

 

 うまくいけば父親を失脚させることができると言っていた。そんなこと、本当にできるのだろうか。レオの力を借りたいと言っていたほどだ、何かしら大掛かりなことなのかもしれない。キャロラインもクロークも、トリスタンの言葉を思い出して神妙な顔つきになる。

 だが、すぐにクロークは視線をキャロラインの首元へ向けると、髪の毛を触り首元から避けた。


「とにかく、現時点では一応騒ぎはおさまった。あとは兄上からの連絡を待つだけだ。それまではあれこれ考えていても無駄だな」


 そう言うと、クロークは露わになったキャロラインの首元へかぶっと噛み付いた。


「きゃっ!」


 突然首に噛みつかれてキャロラインは驚く。だが、クロークはそのまま首や頬、耳をあむあむと甘噛みし、言いようのない刺激がキャロラインを襲った。


「あっ、ク、クローク様!?」


 キャロラインは懸命に身をよじるが、クロークの腕がしっかりとキャロラインの体を固定して離さない。クロークがそのまま甘噛みしたり舐めたりを繰り返すと、キャロラインはすっかりキャパオーバーになり、火照ったように顔をあからめるとクッタリとしてクロークに寄りかかった。


(突然どうして……?)


 意味がわからずキャロラインがぼうっとした頭のままクロークを見ると、熱のこもったオッドアイとかち合う。その瞳はあまりの熱さにチリチリと焼けこげてしまいそうなほどだ。


 クロークが体を離してキャロラインの前に来ると、とんっとキャロラインの肩を優しく押す。すると、キャロラインはいとも簡単に背中からベッドへ倒れ込んだ。


(あ、れ?)


「もうキャロラインを狙う奴はいなくなった。明日から俺は仕事に戻ることになるだろう。そうなったら、当分は忙しくなってこうして触れ合うこともできない。だから、思う存分キャロラインと愛し合いたい。俺のこの抑えきれない愛を君へ伝えたいんだ」


 キャロラインの体に跨ると、切羽詰まった余裕のない表情で、クロークが訴えかけるように言う。その表情を見て、キャロラインのぼんやりとしていたはずの頭は冴え、体の奥が一気に熱くなった。


 そのまま、クロークの顔がキャロラインへ近づいてくる。キャロラインは思いを受け入れるように瞳を閉じると、クロークの唇がキャロラインの唇に重なった。



 

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