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【書籍化・コミカライズ】断罪される公爵令嬢、生まれ変わってラスボスの王妃様の子どもになります  作者: りょうと かえ
お披露目パーティーで頑張ります

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21.課題と本音

 その後も魔道具の発動を続ける。

 歩いたり、座ったり……とにかく身体を動かしながら、続ける。


『ぴーぴー』


 この魔道具を作られたのは王妃様ということだけど、相性がいいみたい。

 赤い小鳥が腕輪の上にいると心が安らぐ。


 ぷにっとしたこの外見も……。

 撫でられないのが残念だ。


「ううーん……」

「どうかしましたか、ローラ先生?」

「本当に驚きました。どこかでこの魔道具を発動させたことがありましたか?」

「いいえ? 初めてですけれど」

「だとすれば驚異的です。動物系の魔道具は難しいはずですが」


 そうなんでしょうか?


 この小鳥の魔道具はやりやすいです。

 ゆったりとして、魔力は使う気がするのですけれど……。


 鳥が空をのんびり舞うようなリズムです。

 難易度としては、先日のカイロのようなブローチより簡単だと思います。


 と、フェルトを見ると椅子に座って少し疲れているようでした。


「……うん。鳥が気になっちゃう。リリアの集中力は凄いね」

「あ、なるほど……」


 わかりました。

 フェルトにとって魔道具から浮き出る鳥が邪魔になってしまうのですね。

 

 言われてみると、そうかも。

 赤い水晶のブローチは温かくなるだけでしたが……。


 八歳にとってみれば、こうした鳥は楽しくて――面白いはず。

 大人の精神を持っている私でもそうなのですから。

 こういう面で集中するのは難しいかもです。

 

「この課題をすぐクリアできるとは思っていませんでした。リリアちゃんにはどうやら、天性の才能があるようですね」

「そう言ってもらえると嬉しいです」

「お世辞ではありませんよ。リリアちゃんが望むのなら、魔道具作りの道に進むのもありかと思います」

「……魔道具作り!」


 やりたい!

 やってみたい!


 今のところ、将来を考えた時……魔道具作りは一番やりたいことです。


 いや、もちろん王族としての仕事はあるけれど。

 でも王位を継ぐのはフェルト。彼以外にいない。


 私は多分、彼の補佐止まりだと思う。

 有能な官僚がいたら、その出番もあんまりない。


 私は私で、エンバリー王家に貢献していけたらなぁ……ということで。

 この世界で重要視される付与魔法と魔道具作りは性に合ってそう。

 私の魔力は強いらしいし、それも無駄にならない。


「やってみたいです!」

「どうやら乗り気のようですね。他の教科の進捗も良いようですし、ふむ……調整をしてみましょう」

「はい!」


 やったぁ。

 魔道具作りができると聞いて、テンションが爆上がりしてきた。


 腕輪の上の赤い小鳥を見つめる。

 うーん。こういうのをたくさん作ってみたい。


 ただ――フェルトはちょっと悪戦苦闘しているようだった。

 座ったまま、立ったままでは発動できるけど、移動しながらは無理みたい。


「フェルトくん、今回の課題について焦る必要はありません。しかし、空き時間に取り組んでおくように」

「はい」

「では、今日の授業はここまでです。魔道具はそれぞれ持っていて構いません。また次回使いますので」

 

 ということで授業が終わった。


 ちょうど昼食の時間だ。

 離宮の講義室から離宮の広間に向かう。

 最近はそこで食事を食べることが多い。


 歩きながらでも魔道具を着けっぱなしにして、発動させてみる。

 うん。慣れると意識せずにできるようになる。


 その様子をフェルトがじっと見つめてきていた。


 ……。


 さっきは底無しに喜んでしまったけれど、フェルトはどうなんだろう。

 もしかしてショックを受けたりするのだろうか。


 同じ年齢の子が隣で成果を出している、とか……。

 考えてみると酷な状況かもしれない。


「あ、あのー……」

「リリアって本当に集中できてるんだね!」


 おっと?

 フェルトは目をきらきらとさせていた。


「凄いや、僕はまだまだだなぁ」

「う、うん……フェルトもすぐできるようになると思うよ?」

「そうだね。頑張らないと!」


 フェルトがにこっと微笑む。


 ま、まぶしい……!

 どうやらコンプレックスみたいのはないようだった。


 はぁ、私のほうがねじ曲がっていたかも。

 うーん、とっても良い子だなぁ。



 僕の名前はフェルト・イニエスタ・エンバリー。

 ある日、突然知らない子が王宮にやってきました。


「フェルト、リリアちゃんと仲良くしてあげてね」

「はい、母上」


 第一印象は 本当に元気のない子……でした。

 細すぎて折れちゃうんじゃないかなと。

 心配でした。


 それから半月ほどが経って。

 リリアを見ていると、いつも楽しいです。


 今日も僕はリリアの世話を焼きます。

 宮廷のコックが作ってくれた、ベリーましましのタルト。

 綺麗に切って、リリアの口へ運びます。


「リリア、このフルーツのタルトは美味しい?」

「はい! とっても美味しいです!」


 もっぐもぐ。

 リリアは本当に幸せそうに食べます。


 僕もそれを見ると嬉しくて、リリアをもっとお世話したくなります。

 中庭に来る小鳥へクッキーの欠片をあげるのですが……。

 リリアはそんな感じです。


 最初に比べるとリリアはとても元気です。


 ……正直に言うと。

 リリアが来るまでは王宮があまり楽しくありませんでした。


 父上と母上は優しいけれど、やっぱり王族です。

 厳しくないといけません。


 本当はもっと同い年の子と一緒にいたいけれど……。

 それはとても難しいみたいなのです。


 だからリリアのお世話はとても新鮮で、やり甲斐があります。

 他の人にこんなお世話をしたらきっと叱られるでしょう。


「あなたは王族ですよ」


 絶対に言われます。

 でもリリアは王族ですからセーフです。


 頬張ってタルトを飲みこんだリリアが僕を見上げます。


「もっと食べたいです……」

「はい、リリア」

「ありがとう! うーん、美味しい!」


 誰かのお世話をするのがこんなに楽しいなんて。

 思ってもみませんでした。


 でも僕が驚いたのは、これだけじゃありませんでした。


 僕にはちょっとした秘密があります。

 母上と父上、それにローラ先生。限られた人しか知りません。


 どうも僕の瞳は特別らしいのです。

 

 人の内なる魔力……?

 燃えるようなナニカがわかります。

 ぼんやりと見えるのです。


 母上は水のように澄み切った青色で。

 父上はどっしりとした砂色のような炎で。


 ローラ先生が教えてくれました。これは魔眼というのだそうです。


『あなたの瞳は数百年にひとりの逸材です。色々と見えてしまうと思いますが、気を取られないように。あと、他の人に言ってはいけませんよ』


 どうしてこの瞳のことを秘密にするのか。

 よくわかりません。


 とりあえず秘密みたいです。


 歴史の授業ではたまに魔眼の凄い人の話がありますけれど、関係があるんでしょうか。

 五百年前に大陸中で暴れた、死の瞳のマリューシュカ。

 二百年前にエンバリー王国を攻めた、魔眼王ゲールニッツ。


 まぁ、いいです。

 大人になればきっと教えてくれますから。


 で、この魔眼なんですけれど。

 不思議なことがあります。


 ――時折、リリアの魂が二重に燃えているように見えるんです。

 こんな人は他に見たことがありません。


 僕のお世話を受けている時は、きらめくような鮮やかな白色で。

 授業に集中している時は動かない黒色の炎です。


 何かリリアには秘密があるのかも……と思いますけれど。

 でも、どちらの色のリリアも好きです。


「タルトはもうないのですか」

「うん、タルトは終わり」

「残念です……」


 しょんぼリリア。

 授業で見る時のリリアとは違いすぎて、笑い出しそうになります。


「でもキウイ入りのヨーグルトはあるよ」

「本当ですか! 私、ヨーグルト大好きです!」


 こういう妹が欲しかったんですよね。

 でも貴族はあんまり兄弟姉妹がいないみたいで。


 今度、手作りのお菓子も食べてもらいます。

 リリアならきっと正直な感想を言ってくれるでしょうし。

出来過ぎる子だと……うーん。


【お願い】

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