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本の誘惑2

「アーノルド様、お久しぶりです。どうぞお掛けください」


マリーは眼鏡の最終チェックを中断して、カウンターに移動した。


「今日は髪を束ねているのだな」


アーノルドが優しく微笑む。


「仕事の時は邪魔ですからね。眼鏡の調子はいかがですか?」


「問題ない。よく見えるしズレることもないな」


「それはよかったです。でもレンズが汚れていますので洗浄しましょうか?」


「お願いするよ」


アーノルドは眼鏡を外してマリーに渡した。


「奥の洗浄器で洗ってきますのでお待ちください」


マリーはアーノルドから離れると店の奥にある洗浄器の場所に移動した。


これも祖父の発明品だそうだ。


眼鏡が入るくらいの大きさの容器に水を張り水の渦を作って細かい泡を作り汚れを除去する。


前世では超音波を使っていたが、祖父は水魔法だけで汚れがとれる仕組みを独自に開発したようだ。


眼鏡が傷つかないようにかなり細かい泡が出るようになっている。


アーノルドの眼鏡を洗浄しているとユーリが横にやって来た。


「おい、あの人ってベデル様だよな」


「そうよ」


「姉貴が再作ばかりさせられて半狂乱になっていたあのベデル様だろう?」


「半狂乱って………そこまでじゃなかったわよ」


マリーは反論したがユーリはその答えをスルーした。


「なんで仲良くなってんだよ」


「なんでって、誤解がとけたから?」


「まぁそれはいいとして、仲良くなるのはおかしくないか?」


「友人になりたいって言われたのよ。断るのも変だし、この間の花見の時に正式に友人になったのよ」


マリーが答えるとユーリは信じられないという表情になった。


「姉貴……まさかベデル様までたらしこんだのか?」


「たらしこむって何よ。よくわかんないけど私の魔力に興味を持ったみたいよ」


「魔力なわけないだろ?ベデル様が姉貴を見る目をみたらわかるじゃないか。あんなに優しく微笑んでるのに」


「花見の時もあんな感じだったわよ」


「氷の騎士様だぞ?」


「そりゃ氷魔法の使い手だもの」


マリーは洗浄が終わった眼鏡を取り出してメガネ拭きで水分を拭っていく。


「氷魔法の使い手だからついたあだ名じゃないって。笑わないからついたんだよ」


「そんなこと言ったって現に笑ってるじゃない」


マリーはアーノルドに視線を合わした。


目があったアーノルドが口角をあげる。


「ほら、笑うじゃない」


「それが異常なんだよ!どんだけ鈍いんだよ」


「さっきからうるさいわね。私はアーノルド様を接客するから、ほら、今入ってきたお客様を接客して」


「………まぁいいや」


ユーリは呆れたように言うと


「いらっしゃいませ!」


と明るい声を出して入ってきた客の方へと向かった。


「お待たせしました」


マリーはピカピカになった眼鏡をアーノルドに差し出す。


アーノルドは静かにそれを受け取って装着した。


「おお!明るくなったな」


「結構レンズが汚れていましたからね。汚れてきたらまたいつでも洗浄しますよ」


「マリーの顔もよく見えるよ」


アーノルドはまた優しく微笑んだ。


マリーも笑顔をつくる。


「ところで、今日はどう言ったご用事で?」


眼鏡に不調がないのであれば何か他の用事があるのだろう。


「ああ。先日の花見を中退したことへの詫びと誘いだ」


「花見の件は仕方ありませんよ。他のメンバーもアーノルド様に同情はしていましたが、責める人はいませんでしたよ」


「そうか。それならいいのだが」


「誘いというのは?」


マリーに言われてアーノルドは少し言いにくそうに咳払いをした。


「この間はあまり話が出来なかったから、改めて友人として誘いに来た」


「それは前の花見のメンバーもですか?」


「いや、マリーと会いたい。どうだろうか?」


友人なら2人きりで会っても問題ないのかもしれないが、相手がアーノルドとなると話が変わってくる。


「お誘いは嬉しいのですが、アーノルド様と平民の私が会うとなると世間の目が厳しいのではないでしょうか」


先日の花見はメイがあの場所を貸し切り状態にしていたので、誰かに見られる心配はなかった。


後で聞いたが、丘を囲むように護衛騎士がいたらしい。


カイサスはメイの護衛が止めることができなったのだろう。


「私は気にしないが、マリーは目立つのが好きではなさそうだな。ならば我が邸で会うのはどうだろう」


「ベデル侯爵邸ですか?さすがにハードルが高いのですが」


侯爵家に行くとなると最低限、ドレスは着用しないといけないだろうし折菓子の準備も必要だ。


「かたく考えなくてもいい。格好もいつも通りで構わない」


「そう言うわけにはいきません!」


マリーは大きく首を振った。




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